はにわきみこの「解毒生活」

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2005.01.25
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「お姉ちゃん、龍ちゃんのサイトを知ってるぐらいなら、いつでもメールでやりとりできるんでしょ? 今回だってメールで報告すればいいじゃない。ようやく赤ちゃんができましたって」

「それがね、今は完全オフなんだって。出したメールが帰ってくるのよ。帰国したら連絡するから、そのときに改めてメールしてくださいって。もし何かを伝えたかったら、彼のいる場所に訪ねていくしかないって感じ」

「サーフィンが目的なら、あっちが寒くなる頃には日本に帰ってくるでしょ。えーと、今が妊娠3ヶ月だとして、予定日には十分まにあうんじゃない?」

「そういう問題? 私は今の気持ちを伝えたいのよ。あんたにはそういうのわからないの?」
 東華の叱責にはうんざりする。しかし、連絡したいときにその方法がないのは確かにイラつくものだろう。ふと、祥二が電話に出ないときのことを思い出した。
「わかった、私が悪かった」
 おとなしく認める。東華はさらに言葉をついだ。

「龍ちゃんは私にとって数少ない男の友達なの。大切に思ってるのよ」

 かつては私だってそうだった。今でも友達だと言える姉が憎らしかった。しかし、私は私のプライドを守るために、彼らにこれ以上近づくわけにはいかないのだ。話題を変えよう。


た?」
「今は医学が進歩してるからね、別に不安はないわよ。だいたいが、真剣に子供を欲しいと思ったのがここ2年のことだし」
「そうだよね、結婚してからもずっと仕事続けてたし、休みともなれば、博さんと旅行ばっかしてたもん。ずっと子供はいらないのかと思ってたくらい」
「うちは博が旅行代理店に勤めてるでしょ。条件のいい海外旅行ができるのに、使わないとソンだし。でもまあ、年3回の旅行を何年もやれば、気が済んだというかなんというか」

 両親は、東華夫婦に子供が出来ないことをずっと心配していた。孫が欲しいと大騒ぎだったのだ。やいのやいの言われる中、自分のやり方を貫くその姿勢には、常々感心していたのである。

「でもさ、子供って欲しいと思ってすぐできるものでもないんでしょ。特に年齢が上がってからは? 私の会社の上司もさ、ずっと不妊治療してるんだよ。お姉ちゃんは病院に相談しなかったの?」
「うん、行かなかった。でも私、絶対に妊娠する自信があったから。もし出来ないんだったら、博の身体に問題があるって思ってたし」
「なんで?」

「決まってるわ。昔、妊娠したことがあったから。ほかの人の子」

 さらりと口にされた東華の秘密に、一瞬脈が止まった。自由にやっているようで、抑えるところは抑える、しっかり者の東華が。いったいいつそんな「失敗」をしたというのか。

「それってつまり、そのときは堕ろした、ってこと?」



「あきれた。ずいぶん身勝手だね。奈々の応援をするはずよ、お姉ちゃん自身が奈々の図太さを持ってるんだから」

「何とでも言って。あんたには軽蔑されるだろうと思ってたわよ。でも、産んでから愛せない方が問題だと私は思ったの。誰に責められようと、私は私の人生における決断を下しただけよ。あのときの子供には悪かったと思ってる。でも、子供を産んで育てる心の準備ができたから、今、あのときできなかったことをやり遂げることにしたの」

 浅くなっていた呼吸から肺を解放しようと、私は大きく息を吸った。
「今日は驚くことばっかり。なんか、どっと疲れたわ」
「お風呂に入って、すぐ寝たら? 私は少しあっちの輪の中に戻るから」


「博さんは知ってるわけ、お姉ちゃんの過去」
「なに? 密告しようってわけ? おあいにく。私は隠し事をしないタチなの。了承済みよ、初めからそんなこと」

 がつんとカウンターパンチを食らった思いだった。あけすけな東華。秘密のない東華。後ろ暗いところのない東華。どうやったらそんなにあっけらかんとしていられるのか。人に弱みを握られると考えたことはないのか。
 身内だといっても、理解できないことはあるのだ。私にとっては、東華も、奈々も、想像の範疇を超えた生き物だ。

 湯船に浸かって身体をあたためると、体中に浮かんだ水玉模様がよりいっそう赤くなった。今回は一体何日でこの発疹は引っ込むだろうか。過去の例で言えば、早いときで3日かかった。今回はショックなことが重なりすぎた。私の身体はどれほどの違和感を訴えているのだろうか。

 もう大人になったんだから、そんなに驚くことはないのよ。人にはいろんなことが起きるもの。びびらずに、事実として受け入れてこそ、対処できるのよ。そんなに拒否反応をしないで。

 自分の身体に、語りかけたい思いだった。気に入らないことがあるからと、ストライキを起こしているかのような自分の身体がもどかしい。
 いつまでも子供のままじゃいられない、物のわかった大人になるべき頃合いなのに。





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最終更新日  2005.01.25 08:55:12


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