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学校の帰りに、いつものように近所の割と大きめな公園を通ると、反対方向へ向かう自転車に乗る母とすれ違う。私に気づいた母が「えりちゃん、最近、お風呂に粘土状の変なゴミが浮いているの知ってる?」ときつい声で振り向いた。 簡単に答えられず、私は自分でも分かるくらい顔がこわばり、何とか必死に落ち着いた声で「知らない」と発声し、変に必死な思いで「粘土状?」と、何のことか分からない風に答えた。「えりちゃん、お風呂に浸かる前にちゃんと体洗ってる?」「あれは垢よ」「お湯の中で少し経つと固まって浮いてくるの」続けざまに言った。 それを聞いて、ほっとした私は傷ついた風に「ちゃんと洗ってる…お兄ちゃんじゃないの?」と情感たっぷりに演技でき、益々、余裕を持つ。 母は「お兄ちゃん、昨日お風呂入ってないもの」と言い、少し間が空き「パパは帰ってないし…」と徐々に小声になり、その後も私が黙っていると、まあいいやって「じゃあ、ちょっと買い物してくる」と、駅のほうへ向かって、真っ直ぐ自転車を漕いだ。 父と母には、私が、兄の作ったドロ人形だとは、まだばれていない…。あらためて、そうほっとする。 お風呂に浸かると、どうしても少しドロが流れ出すが、お風呂に浸かって水分を充分に含まないと、今度は乾き、剥がれ落ちていく。 母の言う、洗ってから浸かるなんて以ての外だ。数日のうちにやせ細り、原型はなくなり、それはもう、私が私でなくなる。 兄にとっての妹で、母にとって娘である私が、終に消えてしまい、元に戻ることはなく、家族が崩壊するということだ。
2010.08.26
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羽が生えているみたいだと言われて、「もちろんよ」と答えた。 相手は黙り、ますますの期待感に高揚した表情で、翌日も、そのまた次の日も話しかけてきて、意地悪してみたり、馬鹿にしてみたり。 徐々に距離が近くなるから、「もう少し離れて」と言うと、「じゃあ君は、どうしてそんなに小さな声で話すの?」と聞いて返され、「そんなつもりはないわ」と精一杯に言うと、うっとりして目の前で立ち尽くした。 大人の女が、蛇の言葉を投げかけてきたけど、なんとか話してるうちに、随分と違う態度になり、結局ぼんやりと帰っていった。 わたしの名前はララ・ミィ。大凡の皆が素敵な名だと言ってくれる。
2010.08.24
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突然呟く癖があり、それは蛇の寝言よと、いつも言われた。 頭の中に蛇が眠っていて、それはもしかしたら何匹もいて、別の解釈では、多頭の一匹と聞かされた。 それでどうなるの?と聞くと、「もし蛇が起きてしまったら、頭を割って蛇が出て来るんだよ」と言われ、 頭の卵から、いつか蛇が生まれ、頭の割れた母親は蛇の子を上手に受け止めて、育てなきゃいけないのだと決心をする。
2010.08.23
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呪われたカエルが蛇を食べた。蛇は餌と思い近づいて、逆に食べられたのに納得出来ず、いつまでもいつまでもそこで考え続けた。 長い歳月の中だと、そういった呪いのもたらす偶然の相乗効果は稀と言えず、今でもカエルやナメクジと同じく、蛇や牛の呪いもごくありきたりに、それなりの頻度で行われ、そうなると牛の子やら蛇の子やら鳥の子が生まれる理由は皆目、見当がつかなくなる。 呪いはいつか醒めたが、呪われた血筋に間違いが起こり、更に呪われ、強まり、呪いの欠片は引き継がれ、遺伝子は書き換えられ、ウイルスや原始生命と共棲し、時々だが暴れだした。 蛇の子がうるさがられた理由は、目の前のことを、ありとあらゆる方向にお喋りして、大体は意味などないのに、そこに何か呪うような悪意が雑じると皆感じたからだ。 鳥の子は舌足らずで、それでいて、時々人を惑わすようなことを綺麗に発音し、皆それを悪く捉えずに惹きつけられ、鳥の子には気をつけなければ、と思っても結局、彼女らに振り回され、それでも一部を除いて、それを悪くは思わなかった。 蛇の子はいつも呪う相手を捜している様で、すぐに鳥の子を選んだ。鳥の子が嫌いなわけでないが、呪うような口ぶりで話すから、鳥の子は蛇の子を心から嫌った。 牛の子はいつまでも自分しか持たず、自分のことしか出来なかったし、そもそも、なにか思い行うことが出来るかさえ怪しかった。でも、自分に与えられた中で目一杯やり遂げることは出来、それは一番幸せなのではないかと思えた。 カエルやらナメクジの子は存在せず、それは人の世が彼らの様なものを求めなかったからで、どこか未開の地の、人でないものが作り出した社会には活き活きと暮らしているかもしれない。
2010.08.10
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