『とんとこひ・セクスアリテ』

April 24, 2006
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  松尾芭蕉 
  一六四四(寛永二一)~一六九四(元禄七)








  食時やかならず下手の鉢扣      路草

  鉢たゝき干鮭賣をすゝめけり     馬見

  娵入の門も過けり鉢たゝき      許六

  狼を送りかへすか鉢たゝき      沾圃






  から鮭も空也の痩も寒の内      芭蕉

  鉢たゝき憐は顔に似ぬものか     乙刀

  一月は我に米かせはちたゝき     丈艸









続猿蓑 巻之下

 いまごろは毎日、食事の時分になるときまって鉢叩が通る。
お世辞にも上手とはいえぬ念仏を唱えながら。

 鉢叩の一行が路上に行き違った干鮭売りをつかまえて、殺生の罪なることを語り、
仏道に帰依すべきと説く(実は喜捨を求めている)。

 鉢叩がさすがに婚礼の家の前は、そそくさと通り過ぎた
(祝言は夜行われるので、その家は門前にあかあかと篝火をたく)。

 一心に念仏を唱えて巡行する鉢叩には、
送り狼(夜間に行く人があれば、その頭上を数回跳び越え、
人がもし恐怖に転倒すると食らいつくという)もつけ入る隙もなかろう
(むしろ洛外の諸方の墓所まで引き廻されたあげく、
最後には追い払われるのがおちであろうか)。



『芭蕉七部集』
猿蓑 巻之一

[書名]「猿-」は斬新でユーモラス。「蓑」は時雨にはおる具で、旅人の象徴。
    <さび>色の書名である。
[編者]去来・凡兆 
[成立]元禄三年(一六九〇)、芭蕉が幻住庵(近江)に入庵していた頃。


 ミイラのように干からびた乾鮭の姿も、寒行に痩せ干からびた空也
(鉢叩。京の空也堂の有髪妻帯の僧。十一月十三日の空也忌から四十八夜、
鉦と瓢を叩き念仏唱歌しながら洛内外を巡る)僧の姿も、冷え冷えとした寒中
(小寒から大寒をへて節分までの約三十日間)にこそふさわしい。


 寒夜に聞く鉢叩はしみじみとあわれ深いが、
それが何とむくつけく卑しげな面つきで、およそ似つかわしくない。

 鉢叩よ、毎夜の勤行でお米のもらいももう大分たまっただろう。
どうだ、ひと月分ほど俺に貸さないか(貧交の句)。

 参考「新日本古典文学大系」(岩波書店)




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Last updated  September 19, 2006 03:18:22 PM
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