『とんとこひ・セクスアリテ』

February 18, 2008
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カテゴリ: ヒジリ地名図鑑

『鏡花全集 別巻』
泉鏡花 著 鏑木清方(他)編
岩波書店 版 1976年03月 発行


 編 後 聞 紀 劍 妖




汚れた 女でございます。私たちが近よりますと、水も濁ります、燈の色も暗く成ると世間の人に言はれます。---其の汚れが洗ひたさ、 血筋の血 を浄めたさに。---



「あなたは、御経を覚えたさに、口の中へ剣を呑んで悪血をお吐き遊ばす。私は恋の叶へたさに、張切れそうな乳を裂いても、濁った血を洗はうと、御本堂へ忍びました。・・・早く此処が、あの、此処が、自分で切って、切りたくて切りたくて手でむしるほど心が忙きます。最う一度お目にかかりたさに、生命に未練がありますものを。まだ突きも出来ません。・・・すぐにも切って、切り裂いて、血の洗ひたさ、片時も我慢が出来ないのに、切れば生命がなくなります。・・・



「あれ、貴方。」
「確乎なさいよ。」
「お身体が 汚れ ますよ。」
「馬鹿な。」
 そ思切ったやうに、潔く言ひました。
「否、貴方はあの杜若を、すぐにお棄てなさいました。」
 と、凝視めた涙に、紫色はなけれど、瞳を紅い露が散る。
 少年は、思はず確乎と肩を抱いて、
「高松清三郎一生の過失---堪忍して下さい、姐さん。」
 と歯で刻んで言ひました。・・・



 がッくり膝に倒れた時、面の雪に照映ゆる、氷の如き剣の刃を、縦に含むで、切先から、血のかたまりを吸ひました。
 此の時、含んだ唇に、舌に、匂、・・・にえ、焼、金色、剣の鍛を神会しました。---
 即ち水底の巖は細工場、窟は吹鞴、椅子は鉄床、湧く紫の玉ちる湯加減、迸る血の火加減、色も心も恋人を、其のままに鍛へなす、神の教か、魔の手の名工、当代第一の 刀鍛冶
 清三の訓を其のまま名告に、みづから 非人 と銘打つた、巨匠、非人清光は、此の少年でありました。








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Last updated  February 18, 2008 05:37:35 PM
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