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2005.05.16
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 読み終わって顔をあげると、2時になっていた。わたしに音が戻ってくるけれど、注意を引くような強いものは聞こえてこない。静かな夜で、網戸の隙間から細かく吹き込む風がカーテンを小さく揺らしていた。わたしはノートを閉じると、ベランダに出た。わたしの家は高台に建っていて、昼には明るく、夜には暗く、街の全景が見渡すことができた。月は浮かんでいるけれど、透明な羽が大気を包んでいるかのように、地上の多くの部分が闇に沈んでいた。その中から、わたしは八重草の日記に出てきた場所を指差した。何度か繰り返すうちに、街の至るところが印付けられていた。いろいろな場所へ、八重草と島野は出かけていた。それは、島野が街のどこにいても、八重草を思い出す契機に包まれていることだ。
 島野が思い出す、と考えたことに気づいた。思い出されるものは、既に失われたもののはずだった。人は目の前にあるものを思い出すことはできない。わたしは八重草が失われたことを確信していた。八重草が書いているように、わたしと彼女は似ているのだろう。八重草が路端で踏み潰される若芽のような脆い理由で、彼女を必要とする人を手放すことがないということはわたしにはわかった。(八重草がわたしに似ていたように、わたしは八重草に似ていた。わたしは生き続け、つまらない男に何度も時間を取られた。彼らを切り落とす強固な理由を、わたしは持つことができなかった。愛されることではなく、必要とされることがわたしを海辺へ引いた。)
 わたしは暗い砂の向こうに沈んでいる街を見つめながら、なにかを小さく呟いた。「難しいな」や「どうする」と、はっきりとした目的を持たない、泡のような言葉だったと思う。とにかく、わたしがなにを呟いたにしろ、八重草には、人を見る目があったのだ。わたしはいつのまにか、八重草の頼みを聞き入れる気になっていたのだから。





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Last updated  2005.05.17 21:59:22 コメント(1) | コメントを書く


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ひみ@喉

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Comments

ゆう@ とうとう出ちゃったね うわさは本当だったよ。 <small> <a hre…
ミーシャ3216 @ ひみとさんへ 最後まで、楽しく読ませていただきました…
ミーシャ3216 @ ひみとさんへ 抱かれちゃうんだ・・。
ミーシャ3216 @ Re:『かなりあ』(11)(06/07) う。。どうなるのでしょうか・・(//・_・/…
ミーシャ3216 @ うん・・。 >とりあえず、わたしはでたらめだった。…

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