2026.03.14
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昨日の夜、隣のおじさんの息子さんがあいさつに来た。
隣の家を解体からうるさくなります。とのことだった。
やっぱり解体するんだね。

今日は寝坊して昼前に起きた。
今日も天気はいいけど風が強いね。

今日は何の日

ホワイトデー
円周率の日
数学の日

国民融和日
美白デー
国際結婚の日
さーたーあんだぎーの日
切腹最中の日
ホームインスペクションの日
花贈り男子の日
ピカジョの日
不二家パイの日
オキシクリーンの日・オキシ漬けの日
採用担当者へありがとうを伝える日

蚕糸の日
VSOP運動の日
丸大燻製屋・ジューシーの日
クラシコ・医師の日
元麿忌

タイトル:「採用担当者へありがとう」


美咲は机に向かって座り、胸の前に一冊のノートを抱えていた。表紙には几帳面な字で「Pai / Mathematics」と書いてある。そのノートは、大学時代からの戦友だった。徹夜で解いた数式、何度も書き直した証明、就職試験のために覚えた公式。全部がそこに詰まっていた。
机の上には、採用通知をもらった会社の資料と、小さなメッセージカードが置かれている。
「採用担当者へ ありがとう」
昨日の夜、自分で書いたものだ。
ちゃんとお礼を伝えようと思って。
だが、その下には妙なものも散らばっていた。
白粉の缶。
オロナインのような常備薬。
指輪。
花びら。
家のパンフレット。
そして、なぜか握りしめている、少しつぶれた唐揚げ。
どれも就職祝いらしく見えなくもない。
見えなくもないのだが、どうにも統一感がない。
「……これで本当に社会人になれるのかな」
美咲は窓の外を見ながらつぶやいた。
そのとき、台所から母の声が飛んできた。
「美咲ー! 写真撮るなら今のうちよー! 唐揚げしんなりするからー!」
「祝いの記念写真に、なんで唐揚げ必要なの……」
「昨日あんたが“内定もらったら一番に食べたいのは唐揚げ”って言ったからでしょ!」
たしかに言った。言ったけれども。
記念写真に抱いて写るほどではない。
さらに母は続ける。
「白粉はおばあちゃんが“社会人は顔色が大事”って持ってきたの。オロナインはお父さんが“会社で靴ずれする”って。指輪はお姉ちゃんが“なんかエモいから”って。花はお隣さん。家のパンフレットは不動産屋さんが間違えて入れてったやつ」
「情報量が多いよ!」
美咲は思わず叫んだ。
だが、机の上の混沌を見ているうちに、少しだけおかしくなってきた。
自分の人生もたぶん、こういうものなのだ。
数学みたいにきれいに整理された直線ではなく、机の上みたいに脈絡のない物たちが、なんとなく同じ日付に集まっている。
採用通知を見たときは、もっとこう、ドラマみたいになると思っていた。
泣くとか、叫ぶとか、空を見上げるとか。
でも実際は、母が唐揚げを山ほど揚げ、父が常備薬を差し出し、姉がよくわからない演出を始め、おばあちゃんが「就職は顔色」と言い切った。
人生の節目とは、案外そういうものかもしれない。
美咲はノートをぎゅっと抱きしめた。
少し油のついた唐揚げが表紙につきそうになって、慌てて持ち直す。
「よし」
彼女は立ち上がり、カードを手に取った。
せめて今日のうちに、お礼のメールだけは送ろう。
写真はそのあとでいい。
パソコンを開き、姿勢を正し、件名を打つ。
「採用のお礼」
本文を考え始めたところで、母がまた入ってきた。
「ねえ、そのカードも一緒に写したほうが気持ち伝わるんじゃない?」
「カードは採用担当の人に送るんじゃなくて、写真用なの?」
「え?」
「え?」
部屋が静まり返った。
美咲はカードを裏返した。
すると裏に、母の字で小さくこう書いてあった。
“花屋の閉店セールで買ったやつ。用途自由”
「……これ、もともとそういう既製品なの?」
母は少し気まずそうに笑った。
「安かったのよ。『ありがとう』って書いてあれば何にでも使えるかと思って」
美咲はしばらく無言だったが、やがて肩を震わせて笑い出した。
就職祝いの朝。
夢見た感動のワンシーンは訪れなかった。
その代わり、用途自由のカードと唐揚げと常備薬に囲まれて、自分はちゃんと笑っていた。
そして彼女は採用担当へ送る本当のメールを打ち始めた。
丁寧に。
誠実に。
唐揚げの油がつかないように気をつけながら。
その日の午後、返信が届いた。
「ご連絡ありがとうございます。ちなみに、入社書類に添付されていた“採用担当者へありがとう”の記念写真、部署内で大変好評でした」
美咲は固まった。
添付ファイル欄を見た。
送信済みメールには、たしかに一枚の画像がついていた。
ノートを抱え、唐揚げを握り、妙に真顔で未来を見つめる自分。
件名はちゃんと「採用のお礼」。
でも添付は、母がさっき撮った“用途自由”な記念写真だった。
しかも本文の最後には、変換ミスでこう結ばれていた。
「末筆ながら、御社のますますのご健闘と、唐揚げの発展をお祈り申し上げます。」
その三日後、美咲は会社から追加の連絡を受けた。
「あなたのユニークさを評価し、広報部への配属も検討しています」
どうやら彼女は、数学ではなく、唐揚げで就職を決めたらしかった。

おわり

ホワイトデーか。
特に何にもないけど。
何にも貰ってないし。

あ、でも貰ったなあ。
何か返さないといけないなぁ。







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最終更新日  2026.03.14 17:47:04
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