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姉と妹 @ Re:ともたさんへ こんばんは。コメントいただきありがとう…
2025.08.12
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カテゴリ: 日記
劇団四季のオリジナルミュージカル を鑑賞してきました。
​劇団四季『ゴースト&レディ』感想​



通称『ゴスレ』『ゴーストアンドレディ』

・​ 名古屋公演プロモーションVTR
・​ ゴースト&レディ:ナンバー集



​■前段・原作漫画について。 ​​
こちらのミュージカルですが、原作は漫画作品です。
週刊少年サンデーや青年誌で活躍され、「うしおととら」「からくりサーカス」等の大長編ヒット作を数多く生み出され、
エネルギッシュな画面や壮大な物語で漫画ファンたちの心を掴み続ける 藤田和日郎先生が、
2014~2015年に週刊モーニング誌上で連載された
『黒博物館 ゴーストアンドレディ』(上・下巻) です。



私はもともと藤田先生のファンで、本作も単行本発売から間もないタイミングで手を出しました。
当時に感動して書いた感想→​ こちら

「銃弾のかち合い弾」という誰もが興味を惹かれるアイテムから、あれよあれよという間にイギリスの古い劇場に連れていかれ、そこからナイチンゲールに導かれて、「淑女病院」や「クリミア戦地」へ…。

ナイチンゲールという…名前はもちろん知っていますが、具体的に何を行ったのかまで詳しく知らなかった偉人の、あまりにアグレッシブな仕事ぶりに初めて触れ、それだけで非常に刺激的なものでした。

そこに、彼女を守る幽霊ナイトの目線が投入され、
偉人の大河物語における「精神の戦い」を、 思いっきり少年漫画画面で魅せる…
漫画作品としてなんて美味しい!
​​

そのうえで、まさかの
​​ 「クリミアの天使」と「幽霊ナイト」のラブストーリー だったんです。​

あまりに漫画的・エンタメ的美味しさの欲張りサラダボール過ぎて、
時代の激動とキャラクターたちの激情が激流みたいに襲ってくるこの作品を、流されるがままに突き抜けちゃいまして、 読み終わった直後は放心状態…「度肝を抜かれた」状態でした。


藤田先生のインタビュー等では、本作のとっかかりは元々クリミア戦争時の、銃弾と銃弾が真正面からぶつかった「かち合い弾」で、そこから膨らませた物語であるとのお話があります。

原作は、タイトル冒頭に「黒博物館(ブラック・ミュージアム)」と記されている通り、
ロンドン警視庁の中にある秘密の博物館…大英帝国で捜査された証拠品が展示されている博物館、そこの展示物をめぐる物語を紹介するシリーズの第2弾として執筆されています。

全部想像なのですが、 当初はそれほどラブストーリー軸を印象的に描くという想定は、 藤田先生の中になかったのではないかな、 と感じています。

藤田先生の他の作品を読んでいて、もちろんラブ要素は多々出てきますし、
特にからくりサーカスでは情熱的な恋愛感情が大きな要素として描かれていると思っています。

ただ、藤田先生のどの作品も基本的に
「ラブストーリーを描く」ことが目的で作り始めた話だとは感じません。

どちらかと言うと、少年漫画的なアクションシーンの絵面の面白さ…
大きな獣の妖怪と少年ですとか、大きなからくりを動かす少女ですとか、そういった方向性のとっかかりから作り始める作家様という印象を持っています。

「ゴーストアンドレディ」も、基本的には 偉人の大河における「精神の闘い」を、 妖怪じみた化け物として描くこと、それをやっつける「幽霊ナイト」の着想 から出来ている作品と感じています。


もう1点、
藤田先生が「ゴーストアンドレディ」を執筆される直前(2008~2014年)まで、週刊少年サンデーにて 『月光条例』 という作品を連載されていました。
こちらは、藤田先生が既存の「おとぎ話」の筋道に対し、特にその中に見受けられる「理不尽な点」に本気で喧嘩を挑みに行くような内容の作品でした。

私自身、着想が面白い作品だな…と思っていましたが、爽快感を感じるような作りでもなく、
正直なところこの作品は「うしおととら」や「からくりサーカス」に比べると、特段メディア化もされず、藤田先生の作品の中では人気がない地味な作品なんだろうな…
という印象を持って受け取っています。

ただ、「月光条例」執筆直後にこの「ゴーストアンドレディ」が出てきたので、
藤田先生が「ナイチンゲールという偉人の物語」を これほどエンタメ的に曲解して描けたのは、
「月光条例」でおとぎ話という既存の筋道と本気で格闘してきたからこそできた、
自分の世界に取り込んでの再構築…というか、料理の仕方なんだろうな、 と感じています。


ラブストーリー軸は、作品を構想していく中で 自然発生したものなのかな、
と想像しています。​

ナイチンゲールの偉業について具体的なエピソードを聞くと、
改めてその行動力と決断力の凄まじさ、絶対的な結果で体制から強烈に作り変えていくバイタリティに驚愕します。

藤田先生が感じた「ナイチンゲールのヒロインとしての魅力/偉業への尊敬」の思いが、
生のまま幽霊・グレイの感情に反映されたのだろうな、 と受け取っています。

そうした「フロレンス・ナイチンゲール」という女性を、藤田先生の中で再構築していくに際し、
極限の戦場病院で戦い続ける彼女が 自然と、傍に居てくれる幽霊を心の支えにし始めたのかな、
と思います。
自分のやっていることをずっと見守ってくれて、肯定してくれて、信じて応援してくれる存在を、彼女が欲して、大好きになった…というか。

この自然発生的な彼女の恋心が、この物語を読み進める読者が自然と抱く疑問
「なんでナイチンゲールはこんなに頑張れるんだろう?」に対する、
心情筋として非常に納得のいくアンサー なのだと思います。


上述の通り、本作におけるこの「ラブストーリー軸」は、
作品の構築の中では後発的なものだったんじゃないかな、と思っていますが
2人の感情が自然発生的なものであるからこそ、
自然且つ強力に読者を作品の渦に引きずり込む…
強力な吸引力・魔力になっているのだと思っています。



この濃厚な原作は、おそらく漫画作品としての評価は非常に高いものだったと思うのですが、
藤田先生の作風は、どちらかと言うとコアな男性漫画ファン層がメインという印象があります。

作品の位置づけとしては、「知る人ぞ知る、名作  中短編漫画作品」というか…
青年誌掲載だった点も影響し、 本作の持つブラックホール的なラブストーリー軸に 一番食いつくべき女性ファン層の多数に届いているとは言えない状況 だったと思います。
(メディア化も全くされていませんでした。)


今回、 ゴースト&レディ」を劇団四季が取り上げて、
力を入れてミュージカルにしてくださると聞いて、すごく嬉しかったんです。
そうだよね!この作品、凄い作品だよね! と思って。​​​​​​​​​​​


※妹談:今まで 『劇団四季=ディズニー&海外の名作ミュージカルを
日本に高品質で届けてくれる団体』 という認識で…
本作が発表された当初 (何故メディア化もしてない全2巻の漫画を?)と驚いたんですが、 近年「世界に通じるオリジナルミュージカルを!」と精力的に取り組まれてたんですね。

2024年の東京公演には行くことが出来ませんでしたが(チケットの取り方も分かってなかった)
​2025年に名古屋公演をやってくれるとの情報を聞き、2月の一般発売開始時にチケットを購入しました。

ミュージカル自体は全然嫌いな人間ではありませんが、
本格的に鑑賞する機会があったわけでも、積極的に見に行こうとするわけでもなく、
劇団四季は、小学生の頃に「美女と野獣」と市民会館に来た「冒険者たち(ガンバ)」に連れて行ってもらって以来… 20年以上ぶりの鑑賞でした。



■四季のミュージカルについて


​​​ まず、とにかく最高でした!素晴らしかったです!!
原作を読んで感じた感動がしっかりと、​​​​
ラブストーリー軸が引き立つようにスマートに再構成されており、
役者様の演技力/歌唱力や練りに練られた演出等、劇団四季でしかできない、エネルギッシュで超ハイクオリティな舞台作品でした。

普段ミュージカル慣れしていない私たちのような観客も、音楽と魔法で19世紀のイギリス/クリミア戦争の戦地へ引っ張りこんでくれました。


本作は、劇団四季が 「世界にも通用するオリジナルミュージカル演目を!」 と、
独自の人脈を用い、演出家のシュコット・シュワルツ氏をはじめ
振付・衣装・イリュージョン・照明分野で世界的に活躍する海外アーティストを起用し、全力で繰り出してきた、超渾身作のようです。

しかし、それでいて…
本作は、もともと企画の段階から、女性向けのラブストーリーとして 構築していく方向性が明確にあったのだろう と受け取っています。
上述の通り、演出家様は海外の男性ですが、脚本家(&作詞)様/音楽関係には日本人女性の方々が名を連ねています。

「ゴーストアンドレディ」というパッケージ自体、劇団四季の主要演目であろう「美女と野獣」を彷彿とさせるものですし、劇場モチーフも「オペラ座の怪人」に似たものを感じます。

藤田和日郎先生の漫画作品の独特のテンポ・描き出す壮大なスケール感を 舞台作品に落とし込むことが、劇団四季なら出来る!
そして、 この重厚なラブストーリーのパッケージは、劇団四季ファンの志向性に合致する!
という制作意図だったのではないかな、と受け取っています。



■素晴らしかった点、原作との違い等について
​​
(概要)
途中休憩を挟み、2時間50分くらいのプログラムとの事前情報でしたが、休憩時間が若干延長したこともあり、実際にはまるまる3時間近くでした。
私たちは1階のかなり後方、中央から全体を俯瞰するような座席からの鑑賞でした。


​(役者様)​
劇団四季は専用劇場をいくつも持ち、年間何千という舞台作品を提供しています。
1演目につき、キャスト様は複数人充てられており、定期的/安定した公演を提供されています。

今回チケットを購入してから知ったのですが、各公演日の出演者はおおよそ週単位で変更され、その週の始まる直前にHPに公開されるとのこと。
※もちろん、諸事情により週の途中や公演日当日のキャスト変更もありうる
チケットを購入する時点ではどの公演にどの役者様が出演予定か分かりません。

四季は、基本的にあまり役者性を対外的に推していない…
1人のアイドル的な役者様に依拠することなく、同様のクオリティで定期的/安定した公演を提供できる点を圧倒的な強みとされているのだろうと感じます。

ただ、もちろんスター役者様は誕生しますし、
特にゴースト&レディのような心情に重きを置く、キャラクター性が際立った作品は
役者さん毎に見比べると同じパッケージで全く異なる印象になるため、
見比べを楽しみたい方、特定の役者様のファンの方は、ローテーションを予測してチケット確保を行う(最終的には読み切れない)という…なかなか大変な世界なのだな、と知りました。

私は、今回1回の観劇予定ですし、役者様の違いを見比べる気もないので特段気にしていなかったのですが…結構その点を妹は気にしていたようです。
先行イメージが付かないように、鑑賞するまではあまりPV動画を見ないようにしていたとのこと。
(劇場で鑑賞しながら「なんか違うな」と思いたくなかったそうです)
​​​​
今回、私たちが鑑賞した際のキャスト様一覧です。↓


​・フロー(フローレンス・ナイチンゲール):町島 智子さん​
名古屋公演からの新キャスト様のようです。
高らかに天に響かせるような美しい歌声が圧巻でした!
上に向かう歌声は讃美歌のようで、「クリミアの天使」というキャラクターにもすごくマッチしていました。

非常に可憐で守ってあげたくなる雰囲気もありながら、ラストに向けどんどん力強くなり、
最後敵キャラと対峙する ​ ♪偽善者と呼ばれても ​ のシーンには圧倒されました!
原作を読んでイメージしていたフロー像そのままの姿でびっくりしました。

​・グレイ:萩原 隆匡さん​
メインビジュアルや公開されているPV映像等は必ずこの方のグレイです。
幽霊という異形の存在であるため、立っているだけで圧倒的な華やかさ&ずっと周囲を観ている達観した存在感が必要で、しゃべり出したら必ず空気感を全部持ってく役どころであり、
なかなか誰でも出来るような役ではない…
萩原さんの演じるグレイは「超はまり役」なのだと感じました。

ディズニーのミュージカル化であれば、観客は皆当然アニメを先に観ていますので、話筋も歌も知ってるし「オリジナル(アニメ)と比べてどうか」という感じ方になりますが…
そもそも、本作はメディア化していない作品です。
ミュージカル作品としての「グレイというキャラクターのオリジナル」は、
この「荻原さんの演じるグレイ」になるんじゃないかな
、と感じました。

茶化しながらのやり取りの中に、フローを信じたい、彼女の進む道を守ってあげたいという感情が芽生えていく過程も丁寧に感じられて、キュンキュンしながら鑑賞しました。

​・デオン・ド・ボーモン:岡村 美南さん​
中世的なキャラクターですが、太く響き渡る声や舞台上での存在感が圧巻でした。
非常に有名で固定ファンの方が大勢ついている役者様なのかな?
観客の拍手も一際大きかったような気がします…。

そのほかのキャスト様も、本当に隅々の方まで歌が非常にお上手で…‼
(劇団四季だから当たり前?)
いやでも本当に、舞台上に居るすべてのキャラクターたちの動きが端々まで洗練されていて、説明調の台詞もすべて必要なバランスでスッと入ってきて…圧巻でした‼



​(演出/脚本/シーン)​

・開園時、ライト消灯までのタイミングを溜めて溜めて…大きな音とともに一気に消灯!
いきなりちょっとびっくり演出から始まりましたが、この「うわっ!驚いた!」という感覚自体が、藤田和日郎先生の漫画作品を読んでいる際の感動と近いもので、印象的でした。


・舞台装置、美術
イギリスの華やかな劇場、フローの実家(お金持ちの家)、クリミアの戦地病院…とコロコロと場面が変わっていきます。
基本は劇場の舞台の骨組みを活かし、マッピング/ライティングで色を変え様々な場所を表現する…
どの場面転換も非常にスムーズに、魔法のように転換して凄かったです。

妹は、劇場の客席の凹凸を利用し、墓石を表現していたところに感動していました。

光の演出や音の演出も、それぞれのシーンで魅せたい方向性がはっきり分かるものばかりでした。
専用劇場で、何百と続けて公演されるプログラムの洗練の格の違いを見ました。


・かちあい弾の設定は省略。
その代わり、本舞台作品はグレイが仕立てて、
観客に提供しているものであるという筋道の提示。
舞台大好きのグレイが、舞台を書き上げるという感慨深さ、ナイチンゲールの功績とその内面を伝えたいという愛情と尊敬の念を感じる、素晴らしい脚色でした!


・グレイ、幽霊たちとダンス
フロー&グレイの出逢いの後、グレイがシェイクスピアをたくさん引用しながら幽霊の概念について説明するターンがあります。
このシーンはかなりの尺を取り、不気味な幽霊姿のダンサーさんたちが現れ一緒に踊るのですが、原作にはないシーンです。

原作では、精神世界の戦いは妖怪じみた気持ち悪い怪物が画面いっぱいに描かれ、少年漫画的なアクションシーンが展開しますが、本舞台ではライティング?を用い、影を蹴散らす演出で表現されています。

グレイが異形の存在であり、彼が闘うのは気味の悪い精神体である点を、このシーンを盛って強調し、観客に印象付けているのだと思います。
ミュージカルはこうやって理知的に考えて、観客に必要な情報を意識付けしているんだな、とよく分かるシーンでした。


・淑女病院のくだりを省略
原作では、フローは最初「淑女病院」の総婦長に任命され、運営の立て直しに従事します。
病院内の設備改善やナースコールシステムの導入等、劇的な変革と大きな成果をもたらす姿は非常にカッコよくて大好きなシーンなのですが、本作では口頭説明にとどめ、すぐにクリミアの戦地に向かっています。

原作は週刊モーニング掲載ということで、かなり具体的にナイチンゲールさんの実施した改革の数々を描写しています。
基本的に社会人の男性読者を念頭に置いているので、具体的に詳細を書けば書くほど彼女の凄さが伝わり易いのだと思います。

今回の舞台では、具体的な施作等はそれほど詳細に描写されてませんでした。
しかし感覚的に、どれほどフロー&看護婦団たちの功績が勇敢なものであるかは、セリフの端々や各所の反応によってきちんと観客が受け取れるようになっていたと思います。


・ウィリアム・ラッセル
戦場の様子をイギリス国内に知らせる「ザ・タイムス」の戦場特派員。
話を進める上での状況説明、場面転換に大きく貢献する役どころ。

劇の筋回しにうってつけの役ですが、このキャラクターは原作に既に登場しており、藤田先生のそもそもの原作の描き方が、脚本的に洗練されてるんだな~と感じました。


・アレックスとエイミー
本舞台における完全オリジナルキャラクターの2人。
アレックスはフローの婚約者であり、衛生委員会として戦地の病院にも赴く貴族の青年。
フローへの求婚シーンでサムシングフォーの概念を丁寧に提示し、またフローのいち女性としての結婚/幸せと言う道筋の可能性を完全に閉ざす役割も担います。

エイミーはハーバード戦時大臣の親戚の娘。
フローとともにクリミアの戦地へ向かう看護団に参加します。
どこまでもまっすぐ理想に突き進むフローの姿に憧れ/尊敬とともに恐れも抱き、その心情を高らかに歌い上げるシーンもあてがわれています。
またフローから見ても、エイミーは「一般的な女性の幸せの道」を生きていく、自分とは対照的な女性として描かれます。

エイミーの視点は、女性鑑賞者が自然と入っていける「フローを見つめる」視点であり、
原作ではこの視点は重点的に描かれていなかったので、
本ミュージカルが基本的には女性向けを意識して再構築していることがよく分かりました。

この2人のキャラクターは、特に「フローのいち女性としての意識筋」という面で、話回しへの貢献度が非常に大きく、スマートな脚色に感動しました。


・クリミアへ向かう女性看護婦団
勇敢に戦地に乗り込んでいく女性陣たちが​ ♪走る雲を追いかけて ​という楽曲を歌い上げるシーン。
どんどん力強くなる曲調や振付が素晴らしく、圧巻のお気に入りシーンです!


・グレイがフローにランプを手渡す
本公演のメインビジュアルにある、グレイがフローにランプを手渡す絵面が作中でもしっかり描写されました。
この絵面モチーフ自体、原作には登場しないミュージカルオリジナルです。

ラスト、サムシングフォーの中の「借りたもの」も、原作ではかちあい弾でしたが、ランプに変更されています。
「ランプの淑女・ナイチンゲール」…
孤高で清廉潔白な独りの女性という一般イメージ像に対し、
彼女の傍らに、姿は見えないけどランプを手渡す存在が居たこと、
彼女にとってそれは、心の拠り所であり、行く先を照らす明かりそのものであり…
という美しいほど見事な概念だな!と感動しました。


・ランプの淑女
本ミュージカルの楽曲は、メロディアス且つ方向性も明確で素晴らしいものばかりでした。
その中で個人的に一番好きかも…!と思ったのが、​ ♪ランプを持ったレディ ​という楽曲。
戦地の病院の夜、ランプを持って患者の様子を見て回るナイチンゲールの姿を病床の兵士たちが敬いながら歌う楽曲です。

非常に絵的というか、暗闇の中に灯りを持って歩く彼女の姿を丁寧に言い表していく楽曲で、絵面のイメージがガツンと頭に入って来て、その上で「レディ」という単語が余韻で残る、素晴らしい楽曲だと思います!


・デオンの過去
デオンが、女性でありながら男性として育てられた人物となっていました。
「女であることは呪いでしかない」といったセリフもありました。
これらは原作にはない筋立てです。

ナイチンゲールを殺そうとするも、彼女が女性の姿のまま社会へ大きく貢献する雄姿を見て、彼女を守ろうとするグレイに殺される自分自身の最期に満足して散っていく…
グッとくるキャラクター筋に脚色してあり、感動しました。


・グレイの過去
シルエットだけでアニメーション的に魅せていく手法がとても面白かったです。

本作は、クリミア戦争の最低限の説明や、ファンタジックな幽霊の要素、主要キャラクター各人のバックボーン等、説明しなければならない前提情報が非常に多い作品です。
どのように情報を観客に擦り込んでいくのか、その中でも強調どころはどこか、よくよく練られていることがよく分かりました。


・グレイの過去・酒場のシーン
グレイが劇場の看板女優と恋に落ちるシーン。
酒場の楽しい宴会シーンに、楽曲とともにかなり長い尺を取っていました。

話筋的には、それほど強調が必要なシーンではないと思うのですが、後半パートに楽しい派手目のシーンが少ないことを考慮して入れられているのかな、ミュージカル作品はこういう部分に気を使うのか、と思いました。


・ラストシーン
90歳になったナイチンゲールの死の間際、彼女の傍らに現れたグレイ。
フロー1人で天に逝くラストは原作と変わらないものの、その後100年以上かけて、グレイは「(今観ている)このミュージカル」を完成させ、本日公開しているという体裁で幕引き。

原作ではグレイが「自分は(天国には)行けない」とはっきり明言していましたが、
明言は避けているものの、おそらくそうなのだろうな、というニュアンスで描かれていました。

その後のアンコールで、フローとグレイの2人が仲良く祝福されて登場しますし、
劇中の楽曲​ ♪あなたの物語 ​で、「ハッピーエンディングストーリー」の単語を繰り返し焼き付けた上で迎えるラストですので、鑑賞者としてはなんとなく「ハッピーエンディングを迎えた!」ようないい気分で会場を後に出来ます。





劇場公演パンフレット&藤田先生描きおろしイラストグッズをいくつか購入しました。



書きたかったことは一通り書けたかな?
とにかく、 ​​ 本当に誠意と熱量の籠った素晴らしい舞台作品でした! ​​

​藤田和日郎先生の漫画作品が、これほどミュージカルと親和性があるとは…!​
企画の発表段階で謎の納得感があり、実際に鑑賞してみて
その出来栄えにスタンディングオベーション!でした。


ミュージカル化、本当にありがとうございました!
ずっと魔法の中に居るみたいで、本当に面白かったです!!

by姉 ​​





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最終更新日  2025.08.24 18:55:09
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