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一夏5413

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2026.09.03
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カテゴリ: その他ノベルス



2025年4月刊
ガガガブックスf
著者:マチバリ(敬称略)
​
巫女のレティーシャが嫁ぐことになったのは『狂犬』と名高い公爵様。その正体は、レティーシャが貴族だった子供の頃、わがままの限りに虐げてきた元使用人のヴィンセントだった!…きっとひどい復讐をされるんだわ!そんなレティーシャの思いとは裏腹に、毎夜、彼から注がれる甘美な熱情に、レティーシャは抗うこともできず溺れていく。「俺から逃げられると?あなたは俺の妻だ!」これは復讐、それとも愛?ヴィンセントの真の目的とはーあぶない公爵様の重たい愛に悶える、偏愛ラブファンタジー!



登場人物
 レティーシャ=没落貴族の娘。両親の死後、巫女として神殿に居た。
 ヴィンセント=レティーシャの元使用人。
    パウロ=司祭。仮面で顔の大半を隠している。

    ノエル=神殿の先輩巫女。
​
巫女として神殿で働くレティーシャは、「外れ巫女」と呼ばれ、巫女仲間から虐げられていた。「外れ巫女」とは、産まれてすぐ神殿に預けられた者たちとは違い、ある程度の年齢まで外界で暮らしていた者を指す別称だ。要はただの僻みのようなものだが、レティーシャ自身はこの扱いも甘んじて受け入れている。彼女は元々貴族の生まれだった。そこそこ裕福な子爵家の一人娘で、今思えばかなりの我儘娘だったと思う。しかし、十二の年、父が事業に失敗。多額の借金を抱える中、母が流行病で亡くなり、後に父も家令と共に馬車の事故であっけなくこの世を去った。残されたのは返済し切れていない借金とレティーシャただ一人。屋敷と家財を売ってもまだ足りず、レティーシャは娼館に売られることが決まった。使用人たちからも見限られ誰も助けてはくれない。だが、たった一人ヴィンセントだけはどこにでも着いて行くと言って聞かなかった。これまで散々バカにして犬扱いまでしていた私に尽くそうなんて本当にバカな子。彼女は隠し持っていた母のネックレスを退職金代わりにヴィンセントに握らせると引き留める彼を振り切り、取立人の馬車に乗り込んだ。

その後、彼女は娼館に連れて行かれはしたのだが、用心深い支配人は念のためとレティーシャの魔力属性を鑑定。結果は聖属性。この子は娼婦にはなれないよ、支配人は取立人に彼女を神殿に連れて行くよう指示した。巫女なら支度金を出してくれるはず、それで手を打ちな。
支配人の言葉に取立人は舌打ちしたが、法律では聖属性持ちの女児は巫女になる決まりだ。それを無視して娼婦にしては厳しい罰を受ける。従うしかない。
こうして、レティーシャは神殿に預けられたのだった。


特に貴族の生まれだと言うノエルから当たりは日に日に強くなり、何かと難癖を付けては嫌味を言われている。ホント、もういい加減にして欲しいわね。まぁ、口が裂けても文句は言えないのだが。
そんなある日ののこと、大司祭に呼び出されたレティーシャは、自分がガーデン公爵のつがいに選ばれたと聞いて唖然としていた。
私が公爵様の!?
この国では皆多かれ少なかれ魔力を持っている。
高位貴族になるほどその魔力量は膨大で、強すぎるが故に自らの身体にも影響を及ぼしていた。放っておけばそのうち死に至る。そんな彼らを唯一救えるのが聖神力を持つ巫女たち。彼女たちは夫婦の営みによって相手の魔力を受け止め体内で中和することが出来る得難い存在だ。つがいと言いつつ要は結婚相手なので、貴族は髪や瞳の色など好みのタイプを選んで指名してくる。で、今回選ばれたのがレティーシャと言うわけだ。

なんて物好きな。
ため息交じりの大司祭の呟きに今回ばかりは同意する。
まぁ、あの狂犬公爵だからな。
狂犬?エライ言われように困惑していると件の公爵が現れた。
背の高い黒髪の青年の顔を見てレティーシャは愕然。
ヴィンセント・・・

ヴィンセントは遅くなってすまないと詫び、私たちの屋敷に帰ろうと彼女の手を取った。

連れて行かれたのはガーデン公爵邸。
馬車の中で聞いた話によれば、ヴィンセントはれっきとした公爵家の嫡男だそう。じゃあ、なんでうちで使用人をしてたのだろう。疑問を口にすると、まぁ色々ありまして・・・。
どこにでもあるお家騒動です。前公爵夫人は後妻なので、自分が産んだ子を後継にしたかった。命の危険を感じた彼は公爵邸から出奔。街を彷徨っていた所をレティーシャの家の庭師に拾われたのだそう。そこから先は彼女も知っている話だ。
あなたは私の犬よ、一生私だけのために生きるの。

恨みがましい彼の表情に何とも言えない気持ちになる。
レティーシャに置いて行かれた彼は絶対に助けると心に誓い、そのためには金と力がいるとガーデン公爵家に戻った。ヴィンセントは巫女の子だ。権力が集中しないよう、大抵の貴族は迎え入れたつがいと子を成し、後に後妻を迎えてもつがいと子に家督を継がせている。ガーデン公爵家も例に漏れずで、いくら後妻と異母弟が主張しようとヴィンセントが後継者だ。前公爵も肯定し、数年後、ヴィンセントが公爵となり、無駄な足搔きをしていた継母は前公爵に連れられ領地に引っ込み、異母弟のパーヴェルは遠縁の貴族の養子になった。

これで漸くお嬢様を助けに行ける。
しかし、国中の娼館をしらみつぶしにしてもレティーシャは見つからなかった。まさか外国に売られた!?焦り始めていた彼は王太子の命で出かけた神殿で奇跡的に探し続けていた人を見つけたのだ。丁度、自らの魔力に苦しめられていた彼がつがいにレティーシャを指名したのはそれから数日後のことだった。彼は彼で苦労していたのね。
ヴィンセントは事情は語ったが、本心は言わなかった。おかげで、レティーシャがとんでもない誤解をし続けることになることも知らずにいた。

これは仕返しに違いないわ。
ヴィンセントは私を恨んでいて当然だもの。
こんないい暮らしをさせながら、あとでどん底に叩き落とすつもりに違いない。子どもが生まれたらすぐ引き離されて追い出すとか?
一番有り得そうな復讐方法を考えて背筋が凍る。
もしそうなったら謝り倒して、せめて年に何回かは会わせてもらえるよう頼まないと。と、考え込んでいけないいけないと首を振る。暇だからつい余計なことを考えてしまう。
ヴィンセントがくれた資産は使い切れないくらいあるし、商売でも始めようかな。売り物は巫女時代で培った護符。ちょっとした災難なら跳ね返せる護符や、保温機能を付与したもの。
製作は作り方をレクチャーした養護院に委託し、材料費を除いた額が養護院の運営費に充てられる。慈善事業にもなって一石二鳥。別に護符の販売は神殿の専売特許ではないし、あちらとは効果が被らない者をを売っている。まぁ、予想以上に当たったから後で抗議が来るかもだけど。

それから数か月経った頃、屋敷に一人の女性が訪れた。
ボルティア伯爵令嬢・ミーガンは、ヴィンセントの婚約者なのだと言う。彼女はつがいの役割を知らないのか早く出て行けと捲し立てた。が、多分、私が役目を終えるとすれば子供を産んでからかと。そう言うとミーガンはポカン。少しして気を取り直すと、とにかく私と彼は結婚するからっ、そう言って出て行った。メイドからミーガンの訪問を聞き、ヴィンセントは歯噛みした。
ガーデン公爵家の財産目当ての意地汚い女。レティーシャの天然な返しに毒気を抜かれてすごすご帰ったようだが、流石に見過ごせないとボルティア家に厳重抗議した。潰されたくなければ娘が馬鹿なことをしないよう見張っておけ。ヴィンセントの忠告にボルティア家の者たちはすくみ上り、ミーガンにも約束させたからもう凸って来ることは無いだろう。
が、数日後、今度は神殿からパウロ司祭とノエルが来訪。
ヴィンセントの使命は何かの間違いだととんでもないことを言い出したパウロは、ノエルこそが彼のつがいだとゴリ押し。勝ち誇ったようなノエルに困惑していると丁度ヴィンセントが帰宅し、俺が指名したのはレティーシャで間違いないと宣言し、擦り寄るノエルを追い出した。
そのやりとりを見ていた執事は、二人が帰った後、あの司祭に見覚えがあると言う。火傷を隠すため目元を覆う仮面をしているが、顔立ちも声もどこかで。近年会ったことがある者ではないはずだが、何か引っかかる。思い出したら教えて欲しいと執事に頼み、今回の件でいよいよ神殿の闇を暴く時とヴィンセントが力を入れ始めた矢先のこと、レティーシャが行方不明になり・・・。


復讐ものと思いきや?なお話です。
高位貴族の魔力暴走を鎮めるために考え出された「つがい」というシステム。魔力が強い貴族にしてみればありがたい存在の巫女なのですが、神殿がぼろ儲けする仕組みにもなっていて、実はあちこちでトラブル続出。それを憂いた王太子の頼みでヴィンセントが動いていた時、彼は探し求めていたレティーシャを見つけたのです。あんなことを言っておきながら自分を捨てた彼女を憎みつつそれ以上に愛していたヴィンセントは神殿の件が片付くまでは、と本心を隠していました。
幸いにもレティーシャは神殿にはいたものの、闇の部分には関わっていなかったので問題なかったのですが、なぜかパウロが彼女を神殿に戻したがっているのを知って不審に思います。そんな最中、神殿に居た者しか知り得ない暗号で呼び出されたレティーシャは、パウロの正体を知って愕然。
執事が既視感を覚えたのもそのはず、パウロこそヴィンセントが戻ったことで追い出された彼の異母弟・パーヴェルと判明。同じ頃、執事の話で黒幕が異母弟と知ったヴィンセントは神殿に向かい、という展開です。
主役CPが最後の方まですれ違ってたのもあって結構じれじれしてます。
事件解決後、彼が本心を語ったことで誤解も解けお互い両想いでハッピーエンドで幕。この作家さんらしい内容で面白かったです。あと、初めて読んだレーベルですが、行間が広くて読み易いのが助かりました。


評価:★★★★☆





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最終更新日  2026.09.03 14:30:35 コメントを書く


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