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近藤が上屋敷を監視している龍一郎達の元に現れた。
「龍一郎様、忝う御座いました。我が藩の粛清が成りまして御座います」
「近藤殿、安心するのはもう少し後に成され、賊臣どもが処罰されるまで今暫くの辛抱じゃ」
「ははぁ~、成れど一番の山は過ぎたやに存じまする。
何よりも殿が此れまでに見られぬ程に怒りによる物か力強く事に当たって御座いまする」
「何よりの事、其方が側にて補佐に当たり、殿の苦労、疲労を軽くして上げる事じゃ」
「心致しまする」
「賊臣一派にはまだまだ影の味方もおろう故に油断するで無い。
下屋敷からも賊臣が連れて来られるであろう。油断は禁物ぞ」
「ははぁ~」
「其方は知恵者故、余計な言葉で有ったやも知れぬな、許せ」
「いいえ、とんでも御座りませぬ、叱咤頂き有りがたき幸せに存じまする」
「我らは道場に戻る・・・但し、今暫くは監視に二人残す、助成が欲しければ繋ぐ事じゃ」
「何から何まで忝のう御座います。それでは戻ります。失礼致します」
「良かろう」
龍一郎の許しの言葉を聞き近藤がその場から消えた。
「では、道場へ戻りますか」
慈恩が龍一郎に尋ねた。
「慈恩、今暫し待て、下屋敷より荷車が来る、警護に我らの仲間も一緒のはずじゃ」
「おぉ~、忘れて居りました。ご容赦下され」
暫くすると遠くに前に数人の武士が先導し二台の菰を被せた荷車が続き、その後を少女、少年を乗せた荷車が続き、その後を後を守る数人の武士の一団がやって来た。
先導の一人が裏門を開けさせ一団が中に入ると門が閉じられた。
「龍一郎様、何事も無く到着して御座います」
下屋敷の監視に残っていた三郎太が報を告げた。
「ご苦労でした。さて、誰がここに残り繋ぎの役を続けてくれるかのぉ~」
龍一郎が廻りにいる者達を見渡すと皆の眼が我への指名を望んでいた。
「正平、双角、店を留守にして良いのか」
「腹心を育てて御座います」
「良かろう。佐助、八重、正平、双角、其方らは江戸の道が頭に入っておろうな」
「はい、勿論で御座います。お任せ下さい」
四名が力強く頷いた。
「良かろう、其方らに任せる。頭は若年であるが佐助じゃ、命に従え、出来るか正平、双角、八重」
三人が頷いた。
「初陣の働きを期待しておる」
そう言うと龍一郎が消え、佐紀が続き、皆が消えた。
「師匠は何故に儂を頭に選んだのかなぁ~」
佐助が独り言の様に漏らした。
「お前さんは若いが故に伸びしろが多い、これから技前、知、体力が伸びる・・・其方の先を見ておるのであろう」
双角が年上の見方を披露した。
「もう一つは何事にも佐助に反発しておる八重が佐助に従うかも見たいのではないかな」
又も双角が年上としての見識を述べた。
聞いている八重の顔が少し強張りをみせた・・・が、何も言わなかった。
四人は上屋敷に視線を合わせたままに話していたが、それ以降は沈黙が続いた。
消えた龍一郎は道場へ向かわずに大屋根の隅に隠れていた。
佐紀を先頭に皆は道場へ向かい、先にいるはずの龍一郎に追い付こうとしていた。
龍一郎は皆の後を追い掛け道場が見えた処で先回りし道場に入り皆を待った。
実は龍一郎が皆の後を追い始める時に佐紀だけが感じるであろう極極小さな気配を発していた。
為に逆に道場に先にいる龍一郎を見て表情には出さなかったが驚いたのは佐紀だけだった。
皆が囲炉裏の廻りの定位置に座ると佐紀が龍一郎に苦情を言った。
「旦那様、私をからかいましたね」
皆が何の事だと佐紀と龍一郎を見つめた。
「龍一郎様は上屋敷から消えた時に道場に向かったのでは無いのです。
大屋根に潜んで居られました。皆様は気付きませんでしたか・・・やはり私だけが解る程度の気を発っしたのですね・・・其れなのに先にここに居られました」
「その様な事が有りましたか、師匠は感じましたか」
平太が三郎太に尋ねた。
「いや、感じられなんだ、まだまだ未熟者じゃ」
皆が畏敬の眼で龍一郎と佐紀を見つめていた。
<つづく>
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