inatoraの投資日記

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2005年07月24日
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今回は、VaR[バリュー・アット・リスク]の話についてです。

VaRとは、個々の証券リターンの分布が所与であると仮定したときの、ポートフォリオ全体が被る損失額とその確率を把握するための金融工学的手法であり、ポートフォリオ全体のリスクを計量化するという試みの一種です。

VaRで想定する個々の証券リターンの分布は、理論上はどんな分布でも対応可能ですが、リスク量の算出が容易であるという理由からいわゆる「正規分布」を使うことが多いです。(複数の証券リターンなので、厳密には「多次元正規分布」です。)

すなわち、左右対称の釣鐘状分布です。個々の証券について、平均(期待リターン)と分散(ボラティリティ)と相関関係(連動性)が所与であれば、ポートフォリオ全体のリターンの分布は正規分布に従うという論理です。

正規分布は以下のHPなどを参考にしてください。(また、YAHOOの検索なども利用してください。)

*ウィキペディア(Wikipedia):正規分布

*立教大学社会学部産業関係学科山口和範研究室

*************************

<数値例>
例えば、個々の証券について期待リターンとボラティリティと連動性を計算できたと仮定して、そこからポートフォリオ全体に関するリターン分布のパラメータが以下のようになると計算できたと仮定します。

平均:7%、標準偏差:20%(いずれも、年率とします。)



もし投資金額が1億円であるならば、「1年後にポートフォリオ全体の損失が3300万円以内におさまる確率は99.7%である」と言うことができます。

*************************

こうした統計的手法で実際にポートフォリオのリスク管理を試みた際に何が問題になるのでしょうか?詰まるところ、以下の3点に集約されるではないかと思います。


(1)リターン分布に関する問題

まず、証券のリターン分布が正規分布であるかどうかという問題があります。正規分布によると、2σを超えて損失が発生する確率は2.3%、3σを超えて損失が発生する確率は0.15%となっています。

しかし、実際に証券のリターン分布が平均回りにおいて厳密に左右対称ということはありません。仮に、過去のリターン統計から正規分布であると概ね認められるとしても、問題はそれが各種イベント(テロ・ブラックマンデーなど)によって、正規分布のパラメータから推測される期待損失をあっさりと突き破ってしまうことです。

それは、「ファットテール(太い尾)」という問題として有名で、緊急時には過去想定されていた連動性とは比べ物にならないくらいにそれが高まり、分散投資の理論を覆すほどに株価は下落するのです。

9・11のテロでは、いくつかの保険会社が保険金の支払い不能で破産したという話がありました。それはまさに、「VaRのリターン分布に関する前提条件が破られた瞬間」だとも言えます。


(2)予測可能性と事後処理に関する問題

仮にリターン分布に関する問題を解決したとしても、VaRで分かることと言えば、「確率1%で大きな損失をするかもしれない」という類の話だけで、リスク管理として本来重要な「それがいつ起こるのか?」「実際に起こったときにどう対処するのか?」という問いに対しては全くの無力です。

これは、「テロが確率1%で起こって、その結果、ポートフォリオが大損を被るかもしれない」と言っているようなもので、「テロはいつどこで起こるのか?」「実際にポートフォリオが大損を被ったときどう対処すればよいのか?」ということを何も考えていないのと同じです。




そもそも、統計的頻度というのは理論上、「無限回の試行を行った際の極限値」です。現実の世界でこうした無限回の試行を行うことが出来ることは有り得ないにしても、少なくとも十分な回数の試行が出来る状態のときに限り有効です。

分かりやすい例では、秀逸なトレーダーは1回に賭けるリスク量を制限しているという点です。トレーダーが破滅しないためには1回のトレードで賭けるリスクを制限することで、自ら検証済みのシステムの統計的頻度(リスク/リワード比率)に賭けることが出来るようする必要があります。

VaRとは、1億円を持っている人が「確率1%で全財産を失う」ということが分かっていたとして、「確率1%だから期待損失は100万円だな」という感覚でリスク管理をするようなもので、これは明らかにずれた感覚です。

その確率1%の事象(すなわち、全財産を失う)が起これば全ては終わりです。統計的頻度ではリスク管理が出来ないのです。VaRによるリスク管理はこのあたりを根本的に勘違いしています。


今日の言葉:



P.S.
VaRは、銀行勘定のポートフォリオのリスク管理にVaRを導入すべきであるという国際決済銀行規制(BIS規制)から始まったものです。本来のリスク管理の意義を考えると、危なっかいことこの上ありません。





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最終更新日  2005年07月24日 08時42分16秒
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