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2020.10.08
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まばらに開き始めたベンケイソウの花の上に乗っかって、花蜜か花粉かはわからないが、とりあえず朝飯にありつこうとモゾモゾやっているこの虫は、おそらくコアオハナムグリではなかろうか。
この庭ではよく見かける虫である。
暇つぶしにちょっくら観察してみるかと思い、しゃがんでしばらくじっと見ていたが、そのうちモゾモゾやっているように見えたのはこちらの思い込みで、実際は全然動いていないことに気づいた。
念のため指で突っついてみたが、微動だにしない。
なるほど、お亡くなりになってるのか。
それにしても、花のベッドに寝そべって事切れるなんて、なんとも優雅な死に様ではないか。
ふふふ。
そんなふうに死を美化するのは人間の勝手だが、この虫はたまたま花の上で寿命が尽きただけにすぎないと言いたがる人もいるだろう。

まあ、そのまま放っておいても、バクテリアによって分解され、そのうち消えてなくなることだろう。
昼過ぎに確認した時には、花の上にも、あたりの地面にも虫の死骸らしきものは一切見当たらなかった。
あっ!
まさか、あの虫、ナイーブな人間をだまくらかして、死んだふりをしていただけじゃないだろうな。笑

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サザナミシンジュハナムグリ
『三人寄れば虫の知恵』(養老孟司・奥本大三郎・池田清彦 / 新潮文庫) より


ルリボシカミキリ Wikipedia より


ハンミョウ(ナミハンミョウ) Wikipedia より

サザナミシンジュハナムグリはマダガスカル島に生息しているマダガスカルハナムグリと模様がよく似ていて、おそらく同じ仲間だと思われます。
けど、色合いは断然、サザナミシンジュの方がいいなあ。


まあ、でも、私は別に昆虫マニアではないので、こうして色鮮やかな虫を写真で見るだけで満足です。

これでお終いにしてもいいのですが、それじゃあちょっと物足りないという人のために、ここで一つクイズをさしあげます。
さて、上に挙げた三つの虫に共通しているのは何でしょう。
何のひねりもひっかけもない、初級レベルの問いです。
さっぱり思いつかないという人は、次の文章を読んで下さい。


「以来、彼は、砂地に関心を示しはじめた。そして間もなく、その効果があらわれた。ある日、家の近くの河原で、鞘翅目ハンミョウ属の、ニワハンミョウ ( Cicindela Japana, Motschulsky. )に似た、小っぽけな薄桃色の虫を見つけたのだ。むろん、ニワハンミョウに、色や模様の変わりものが多いことは、周知の事実である。しかし、前足の形ということになれば、話はまた別だ。鞘翅目の前足は、類別のための大切な基準であり、前足の形がちがえば、それはもう種のちがいを意味している。その、彼の目にとまった虫の、前足の第二節目は、じつにきわだった特徴をもっていたのである。」

先に言っておくと、これは安部公房の『砂の女』の中の一節です。
変種の発見に情熱を傾ける昆虫採集マニアの男が主人公だけあって、虫屋の方にはたまらない文章ではないかと思われます。
え?早く答えを、ですか?
はいはい、丸見えの答えですが、先程の3種類の昆虫に共通しているのは、どれも鞘翅目だということです。
鞘翅目(しょうしもく)と言うと難しく聞こえますが、実はこれ、甲虫類(甲虫目)のことなんだそうです。
ハナムグリは甲虫目コガネムシ科、ルリボシカミキリは甲虫目カミキリムシ科、ハンミョウは甲虫目オサムシ科の昆虫というふうに分類されています。
その他、身近なやつをざっと挙げると、カブトムシ、クワガタムシ、ゲンゴロウ、ホタル、テントウムシ、ゾウムシなどがこのグループです。

生き物のグループの中で、昆虫がいちばん種類数が多いというのは皆さんご存知だと思いますが、その昆虫の中でいちばん種類が多いのが甲虫類だそうです。
知られているだけでも35万種以上といいますから、驚きです。
適応力が飛び抜けているなんていうレベルを通り越して、J•B•S•ホールデンが言ったように、「主は異常なまでに甲虫を好んでいたにちがいない」と考えたくなるような数です。

完全変態という生き残り戦術を使って、これほどこの惑星上にはびこっている甲虫類ですから、その食性もバラエティに富んでいます。
ハナムグリのように、花蜜や花粉を摂取するものもいれば、カブトムシのように樹液を吸うもの、あるいは、カミキリムシのように果樹の葉や茎、果物の皮などを食べるものもいます。
また、ハンミョウのような肉食系(他の昆虫を食う)もいれば、ホタルのように幼虫の時はカタツムリなどを食べるくせに、成虫になると、口が退化して何も食べないなんて極端なケースもあります。
さらには、スカラベ(フンコロガシ)のように哺乳類の糞を食べるコガネムシ類もいます。
うへっ、糞ですか?
まあ、食糞と聞いて我々が顔をしかめるのは、人間というアバター(化身、乗り物)に乗っているからで、仮にスカラベというアバターに乗っていれば、牛の糞だって、極上のハンバーグみたいなものだと思いますよ。笑
じゃあ、糞虫になったついでに、いっそのこと自分の糞でも食ったらどうだろう。
というわけで、最後にひとつ、とっておきの珍種を紹介させてもらいます。

「ユープケッチャは棲息地のエピチャム語で昆虫の名前であると同時に時計のことも意味しているのだそうだ。体長一センチ五ミリ、鞘翅目に属し、ずんぐりした黒い体に茶褐色の縦縞が走っている。ほかに特徴らしいものはと言えば、肢が一本もないことくらいだろうか。肢が退化してしまったのは、自分の糞を餌にしているので、移動の必要がないためらしい。消化吸収してしまった残りかすの排泄物が主食では、燃えかすの灰にもう一度火をつけるような心もとなさを感じるが、そこはうまくしたもので食べる速度がひどく遅い。その間に繁殖したバクテリアが養分の再生産をしてくれる。ユープケッチャは船底型にふくらんだ腹を支点に、長くて丈夫な触角を使って体を左に回転させながら食べ、食べながら脱糞しつづける。糞はつねにきれいな半円をえがいている。夜明けとともに食べはじめ、日没とともに食べおわり、睡りにつく。頭をつねに太陽の方角にむけているので、時計としても役に立つ。」

これは究極のオートマチック閉鎖系昆虫ですね。
こんなジョークみたいな話を大真面目に書ける作家なんて、日本にただ一人。
そう、またしても(今は亡き)安部公房ということになりますが、ニワハンミョウと違って、ユープケッチャの方は彼の発明(でっち上げ)なんですねえ。
興味がある方は、『方舟さくら丸』の第1章を読んでみて下さい。(あるいは「ユープケッチャ」という短編でも可)
10ページ目で早くもユープケッチャの記述が始まります。
でも、昆虫の話がずっと続くわけではないので、そのへんは悪しからず。





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Last updated  2025.11.27 07:48:54
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