inti-solのブログ

inti-solのブログ

2012.01.19
XML
カテゴリ: 環境問題
愛知沖でメタンハイドレート試掘…2月中旬にも


今回掘削を行う周辺海域には、日本の天然ガス消費量の十数年分と見込まれる約1兆立方メートルのメタンハイドレートが埋蔵されているとみられる「東部南海トラフ海域」があり、掘削試験の対象地点として有望だと判断した。2011年度予算に関連経費として89億円を計上している。
液化天然ガス(LNG)は09年度の国内の発電電力量に占める割合が29・4%で、原子力(29・2%)や石炭(24・7%)、石油(7・6%)を上回っている。東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、政府は原子力発電への依存度を長期的に下げる方針で、メタンハイドレートの商業化が実現すれば、我が国の電力供給体制の安定化に大きく貢献することが予想される。
◆メタンハイドレート=メタンガスと水が結晶化した氷状の物質。深海底や永久凍土層のような低温高圧の地中に分布しており、1立方メートルあたり160~170立方メートルのメタンガスを含んでいる。普段は固体の状態となっているうえ、不安定で気化しやすいため、採掘が難しい。

-----

以前から何度か、天然ガス(主要成分はメタン)は二酸化酸素の放出量が少ない、ということを書いています。CO2の放出量は石炭>石油(重質油>軽質油)>メタンですし、加えてメタンガスは公害の発生源となる硫黄そのほかの混ざり物が少ないので、いわゆるクリーンなエネルギーでもあります。だから、化石燃料に中では天然ガスをもっとも重視すべきです。

が、ひとつだけ重大な注意点があります。それは、天然ガスが完全燃焼した場合はCO2の発生量が少ないけれど、完全燃焼しなかった場合は話がまったく変わってくる、という点です。メタンそのものには、CO2の20倍以上という猛烈な温室効果があります。つまり、メタンが燃焼しないで大気中に放出されると、CO2よりも激しい温室効果を招く危険がある、という点です。
記事にあるように、メタンハイドレートは「不安定で気化しやすい」ものです。これがいっせいに気化してしまうと、どういうことになるでしょうか。

地球45億年の歴史の中で、生物の大量絶滅が何度も起こっています。その中でも史上最大とされる大量絶滅は、今から2億5千万年前、ペルム紀(二畳紀)と三畳紀の境目で起こりました。この大量絶滅については 以前に記事を書いた ことがありますが、陸上生物の7割、海洋生物では、属のレベルで8割以上、種のレベルでは95%が絶滅したと推定されています。ほとんどの生物が根こそぎ絶滅したと言って良いでしょう。われわれ人類(哺乳類)の遠い遠い祖先に当たる、哺乳類型爬虫類も、ペルム紀には大繁栄していましたが、このときにごくわずかの種を残してほとんど死に絶えてしまいました。(生き残ったわずかな種から、現在の哺乳類が進化した)

この大量絶滅がなぜ起こったのか。
第一に、猛烈な火山活動です。この時期に噴出した溶岩が、現在のシベリアに残されています。シベリア洪水玄武岩と呼ばれる溶岩の面積は150万平方キロ、日本の5倍以上に達します。しかも、これは現在まで残っている部分で、当時溶岩に覆われた面積は、それよりはるかに広かったという推測もされています。
もうひとつ、おそらくは海底でも激しい噴火活動が起こった結果、溶岩がメタンタイドレート層に触れたことによって、メタンハイドレートが猛烈な勢いで気化して大気中に噴出したのではないかと推測されています。ひとたびメタンハイドレートが噴出すると、メタンの温室効果によって温暖化する、温暖化することでさらにメタンハイドレート噴出の連鎖反応が起こる、という悪循環に陥ったと思われます。


現在の地球大気の酸素濃度は約20%ですが、ペルム紀の地球の酸素濃度は30%にも達したと推定されています。それが、ペルム紀末期に急降下して、10%ほどになってしまいました。そこから徐々に増えていって、現在20%ですから、ある意味では、地球大気はペルム紀末期の大絶滅の影響から完全には脱していない、とも言えるのです。(ただし、われわれ人類は20%の酸素濃度の世界に生まれたので、酸素濃度が30%にもなったら健康に悪影響が及ぶ可能性がありますが)
同様に、海中からも酸素が急減、海中無酸素状態に陥ったと推定されています。

実は、メタンハイドレートの暴墳はこのときだけではなく、ずっと新しい時代、約5500万年前の新生代第三紀暁新世と始新世の間でも起こっています。このときも、やはり地球は急激な温暖化にさらされています。ただ、2億5000万年前ほどの規模ではなかったようですが。

さて、最初の話に戻ります。われわれ人類は、このメタンハイドレートについてどれだけのことを知っているでしょうか。そして深さ数百メートルの海底に眠るメタンハイドレートにもしものことがあった場合、それを抑えるすべを持っているでしょうか。
いずれも、答えはNoです。わかっていることは、メタンハイドレートは深海の冷温と高圧の下で固体になっているけれど、常温常圧では気化してしまうこと、いわゆるガス田のように地下に眠っているのではなく、海底に直接降り積もっている状態(その上に土砂が多少積もっている程度)であること、したがって、一歩間違えればメタンの噴出を招く恐れは多分にある、ということです。
そしてもうひとつ、天然ガスは石油と比べても埋蔵量が豊富で、あわててメタンハイドレートの開発をしなければ枯渇する恐れがあるわけではありません。
それらのことを考えると、メタンハイドレートに手を出すのは非常に危険としか思えません。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2012.01.19 21:29:09
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: