inti-solのブログ

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2012.09.04
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再生エネ普及に50兆円=原発ゼロで光熱費倍増―政府試算


古川担当相は会議終了後、中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「革新的エネルギー・環境戦略」を週明けまでに政府として策定する見通しを示した。
試算によると、30年の発電量に占める原発依存度をゼロにする場合、電気代を含む家庭の光熱費は、月額最大3万2243円となり、10年実績(1万6900円)比ほぼ倍増する。
原発の使用済み核燃料の扱いで青森県などの理解と協力が得られなければ「即時原発ゼロ」の恐れがあると指摘。電力供給量の約3割が失われるほか、火力発電による代替で燃料費が年間約3兆1000億円増加するとした。再生可能エネルギーの普及拡大に向けた課題として高い発電コストや送電線の整備を挙げた。
古川担当相は会議で、エネルギー政策に関する国民の意見について「過半の国民は原発に依存しない社会を望んでいる」とする検証結果を報告した。 

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試算の根拠が示されていないので、内訳も何も分からないのですが、どうも変な試算だなと思います。
そもそも、この「家庭の光熱費」の定義はどうなっているのかなと考えてみました。計算の根拠になるのは、おそらく 総務省の家計調査 だと思われますので、その統計数値をいろいろ調べた結果、2010年の2人以上世帯の光熱費から水道代を引いた金額を12で割ると、16903円になるので、おそらくこの数値が「10年実績(1万6900円)」の根拠ではないかと思われます。 統計資料のエクセルシートはこちら
もしそうだとすると、「光熱費」のうち、正味の電気代は月9850円になります。それ以外は、ガス代(都市ガスとプロパンの合計)約5500円、灯油代約1500円、上記の数字には(おそらく)含まれない水道代が5050円くらい、となります。

今問題になっているのは、あくまでも原子力発電をどうするか、なのですから、ガス代や灯油代、もちろん水道代は関係ないはずです。もちろん、原発の代替を火力発電で行えば、天然ガスや石油の消費が増えるので、価格が高騰し、つられてガス代と灯油代も値上げする、ということはあり得ます。でも、政府の言う「2030年に原発0%」は、原発の代替は再生可能エネルギーということになっており、火力発電は増やさない、ということになっています。

※2010年の発電割合は、原発26%で、再生可能エネルギー(水力)10%、火力発電64%です。原発ゼロの場合は、の発電割合の想定は。再生可能エネルギー35%、火力65%ですから、火力発電の割合は1%増えるだけです。ただし、電気使用量の絶対量は2010年より少ない(省エネをより進める)前提なので、火力発電の絶対量は2010年より少ない。

つまり、原発ゼロでもガスや灯油の消費量はほぼそのまま(あるいは微減)であるはずなのです。にもかかわらず光熱費の合計が3万2243円ということは、電気代だけが約25000円になる、ということです。現状の約2.5倍です。

発電コストのうち、65%の火力と10%の水力(再生可能エネルギーの一部)の部分は現状と変わりません。それなのに電気代が2.5倍に上がるというのが事実なら、残る25%部分のコストが7倍に跳ね上がる、という計算になります。

太陽光発電の買い取り価格が1KWあたり42円で高い、ということが騒がれていますが、いろいろな企業が太陽光発電に参入しているということは、この単価で利益が出るということです。家庭用電気の平均単価は1KWあたり24円といわれているので、42円は確かに高いのですが、それでも2倍にもなりません。もちろん、買取価格42円という数字は、未来永劫続くものではありません。太陽光発電の初期費用は最近急激に下がっており、おそらく今後も下がるので、それに伴ってコストも更に下がるはずです。風力発電は、太陽光より更に発電コストが低いとされます。地熱発電も、初期費用はかかりますが、発電コストはかなり安いようです。

それらのことを考え合わせると、原発ゼロで光熱費が月3万2千円というのは、とても信用に足る推計ではないように、私は思います。投資額50兆円というのも同様です。たとえば、太陽光発電については、造成されたまま使われずに不良債権化していた工業団地用地に、続々と設置されていると 報じられています 。土地はすでに造成されていて、送電線も整備されているのに使われていない工業団地用地が、1億5千万平方メートル(150平方キロ)もあるというのですから、それを使わない手はありません。

追記 
FNNニュースの報道 によると

原発をゼロにした場合、火力発電に切り替えることで、原油やLNG(液化天然ガス)の輸入が増え、2030年時点に、2人以上の家庭で、電気料金だけでも月額最大2万0,712円に、光熱費全体では最大3万2,243円となり、2010年のおよそ2倍になるとの試算が出された。

とのことです。
なるほどね。これは、ものすごく詭弁的な論法です。なぜなら、前述したとおり、原発ゼロのシナリオでは、原発の分は再生可能エネルギーに置き換えるから、火力発電のシェアは増えないという前提になっているからです。その前提の上で、再生可能エネルギーはコストがかかるから電気代が上がる、という話であったはずです。
それなのに、「火力発電に切り替えることで、原油やLNG(液化天然ガス)の輸入が増え」るから電気代が(ガス代や灯油代も)値上げする、というのです。
いつのまにか、原発の分は火力発電に置き換える話に摩り替わっている。それならば、石油とガスの価格上昇分だけを見込めばいいのであって、再生可能エネルギーのコストがどうとかは考える必要はないはずです。





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最終更新日  2012.09.05 20:36:54
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