inti-solのブログ

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2012.11.27
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カテゴリ: 戦争と平和
「国防軍」 平和と安全守るに必要だ 民主党は見解を明確にせよ
安倍氏は国防軍とする理由について、「日本の中では自衛隊は軍隊ではないと答弁している。憲法9条の1項、2項を読めば軍を持てない印象を持つ」と述べた。

「もし捕虜になったときに、ジュネーブ条約上、軍であればちゃんと待遇される。そうでなければただの殺人者だ」と説明し、「こんな詭弁を弄するのはやめるべきだ」と強調した。

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例によって産経新聞の、しょうもない社説ですが、社説そのものの内容もさることながら、そこで引用されている安倍の発言は仰天モノです。
「もし捕虜になったときに、ジュネーブ条約上、軍であればちゃんと待遇される。そうでなければただの殺人者だ」
なんですか、この解釈は。安倍は肝心のジュネーブ条約を読みもせず、でたらめなことを書いているようです。もしジュネーブ条約を読んでいれば、こんな滅茶苦茶な解釈は出てきません。

問題の、 ジュネーブ条約第4条 (捕虜)の条文は、このようになっています。

第四条〔捕虜〕

A この条約において捕虜とは、次の部類の一に属する者で敵の権力内に陥ったものをいう。
(1) 紛争当事国の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員
(2) 紛争当事国に属するその他の民兵隊及び義勇隊の構成員(組織的抵抗運動団体の構成員を含む。)で、その領域が占領されているかどうかを問わず、その領域の内外で行動するもの。但し、それらの民兵隊又は義勇隊(組織的抵抗運動団体を含む。)は、次の条件を満たすものでなければならない。
 (a)部下について責任を負う一人の者が指揮していること。
 (b)遠方から認識することができる固着の特殊標章を有すること。
 (c)公然と武器を携行していること。
 (d)戦争の法規及び慣例に従って行動していること。
(3) 正規の軍隊の構成員で、抑留国が承認していない政府又は当局に忠誠を誓ったもの
(4) 実際には軍隊の構成員でないが軍隊に随伴する者、たとえば、文民たる軍用航空機の乗組員従軍記者、需品供給者、労務隊員又は軍隊の福利機関の構成員等。但し、それらの者がその随伴する軍隊の認可を受けている場合に限る。このため、当該軍隊は、それらの者に附属書のひな型と同様の身分証明書を発給しなければならない。
(5) 紛争当事国の商船の乗組員(船長、水先人及び見習員を含む。)及び民間航空機の乗組員で、国際法の他のいかなる規定によっても一層有利な待遇の利益を享有することがないもの
(6) 占領されていない領域の住民で、敵の接近に当り、正規の軍隊を編成する時日がなく、侵入する軍隊に抵抗するために自発的に武器を執るもの。但し、それらの者が公然と武器を携行し、且つ、戦争の法規及び慣例を尊重する場合に限る。

B 次の者も、また、この条約に基いて捕虜として待遇しなければならない。
(1) 被占領国の軍隊に所属する者又は当該軍隊に所属していた者で、特に戦闘に従事している所属軍隊に復帰しようとして失敗した場合又は抑留の目的でされる召喚に応じなかった場合に当該軍隊への所属を理由として占領国が抑留することを必要と認めるもの。その占領国が、その者を捕虜とした後、その占領する領域外で敵対行為が行われていた間にその者を解放したかどうかを問わない。
(2) 本条に掲げる部類の一に属する者で、中立国又は非交戦国が自国の領域内に収容しており、且つ、その国が国際法に基いて抑留することを要求されるもの。但し、それらの者に対しては、その国がそれらの者に与えることを適当と認める一層有利な待遇を与えることを妨げるものではなく、また、第八条、第十条、第十五条、第三十条第五項、第五十八条から第六十七条まで、第九十二条及び第百二十六条の規定並びに、紛争当事国と前記の中立国又は非交戦国との間に外交関係があるときは、この条約の利益保護国に関する規定を適用しないものとする。前記の外交関係がある場合には、それらの者が属する紛争当事国は、それらの者に対し、この条約で規定する利益保護国の任務を行うことを認められる。但し、当該紛争当事国が外交上及び領事業務上の慣習及び条約に従って通常行う任務を行うことを妨げない。

C 本条は、この条約の第三十三条に規定する衛生要員及び宗教要員の地位に何らの影響を及ぼすものではない。

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捕虜として保護の対象となるのは、軍と軍人にかぎっさてはいないのです。民兵隊、義勇隊、組織的抵抗運動団体、軍に随行する軍属、民間商船・飛行機の乗組員、さらに、敵の接近に当り、正規の軍隊を編成する時日がなく、侵入する軍隊に抵抗するために自発的に武器を執るものまでが、この条約において捕虜として保護の対象となることが明記されています。したがって、自衛隊が、「軍隊」を名乗っていようがいまいが、ジュネーブ条約の対象となることはまったく明白で、疑いの余地がありません。

もちろん、過去の戦争においてジュネーブ条約(あるいは、その前身であるハーグ条約)が常に守られてきたかといえば、必ずしもそうではない現実はあります。たとえば、南京事件がそうです。現在でも、世界各国の紛争のたびに、ジュネーブ条約に反する捕虜の虐殺や虐待が報じられていることは事実です。


ジュネーブ条約を読みさえすれば、安倍のような仰天解釈が出てくるはずがないので、従って安倍は条約を読んだこともないのでしょう。ジュネーブ条約という名前を出すなら、せめてその条文くらいは読んでおくべきと思うのですが、安倍にそういう考えはないのでしょうか。あまりにバカすぎると思わざるを得ません。
もっとも、読んで内容を知っているのに、こんなことを言い出しているとしたら、これはまたとんでもなく悪質なデマゴギーということになりますが。





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最終更新日  2012.11.28 00:56:09
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