inti-solのブログ

inti-solのブログ

2018.02.26
XML
テーマ: ニュース(100804)
カテゴリ: 外国人の権利
「外国籍取得したら日本国籍喪失」は違憲 8人提訴へ

弁護団によると、原告はスイスやフランスなどに住む8人。すでに外国籍を得た6人は日本国籍を失っていないことの確認などを、残り2人は将来の外国籍取得後の国籍維持の確認を求めている。
原告側が争点とするのは「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」とした国籍法11条1項の有効性だ。
原告側は、この条項が、「兵役義務」の観点などから重国籍を認めなかった旧憲法下の国籍法から、そのまま今の国籍法に受け継がれていると主張。年月とともに明治以来の「国籍単一」の理想と、グローバル化の現実の隔たりが進んだ、としている。(以下略)

---

二重国籍をめぐる問題は、蓮舫の二重国籍「問題」の際に記事を書いたことがあります。
基本的には、わたしは二重国籍は容認されるべきであると考えています。それが「憲法違反」とまで言えるかどうかは、正直に言ってやや疑念を感じますが、日本の国籍法の「二重国籍を認めない」というタテマエは、実質的には意味がないのが実態です。

日本の国籍法は、日本国籍と外国籍の二重国籍について、以下のように規定しています。


2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。
第14条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。


元々日本国籍しか持っていなかった人が、自己の意思で外国籍を取得すると、日本国籍を失います。(第11条第1項)おそらく、引用記事で提訴するという方は、大半がこのパターンなのだろうと思います。
しかし、自己の意思によらず外国籍を付与された人は、一定年限までに日本国籍を選択する宣言を行えば、日本国籍を失うことはありません。(第14条第1項)ひょっとすると、提訴された方の中には、この国籍選択手続きの際、外国籍を選択して日本国籍を失った方(第11条第2項)もいるかもしれません。
「日本国籍を選択して外国籍を放棄する」という宣言はあくまでも日本の国内法に基づく手続きであり、そこで日本国籍を選択しても、本当に外国籍を失うわけではありません。国籍に関する権限はその国の政府にしかないのであって、日本政府に、日本以外の国の国籍を与えたり奪ったりする権限はないからです。一応は、日本国籍を選択した場合は、「外国籍の離脱に努めなければならない」という努力義務はあるものの、努力義務でしかなく、実際に外国籍離脱を求められることはありません。更に、国籍選択には経過措置があって、1985年(国籍法が改正された年)以前から二重国籍だったものは、国籍選択手続きを行わなくても、自動的に日本国籍を選択したものとみなされます。
また、外国人が日本に帰化した場合も、元の国籍からの離脱は、日本国籍取得後の努力義務に過ぎません。
もちろん、自己の意思で外国籍を取得した場合でも、その事実を日本の行政機関に届け出なければそれまでです。そうやって、外国籍を取得しながら日本国籍も維持している人は、おそらく海外在住者などに相当数いるのでしょう。


だったら、外国籍を取得しても黙っている、国籍選択の際には「日本国籍を選択します」と宣言だけしておくか、そもそも選択手続きを行わなければよい(運用の実態としては、期限までに国籍選択の宣言をしない二重国籍者に対して督促することもありません)ということになります。
簡単に言えば、バカ正直なごく一部の人だけが日本国籍を失い、大半の人は二重国籍になっている、ということです。

国籍法国粋主義者の中には、行政がきちんと調査しないのがけしからん、などと空理空論を述べるものがいますが、。そんなことは明らかに実行不可能なのです。外国籍の有無を調べる権限も能力も、日本政府にはありません。日本政府が外国の政府に対して「うちの国民の××さんがおたくの国の国籍を持っているかどうか」なんて照会したところで、絶対に回答はもらえません。主権と個人情報の問題です。逆に外国の政府が日本に対してそんな照会をしたところで、やはり絶対に回答しないでしょう。

このように、国籍法の二重国籍を排除しようという規定は、まったく意味を失っているのが現実なのです。また、それによって二重国籍者が多数存在することで、何か不都合なことがあるかというと、何もないのが現実です。
だったら、このような実効性のない無意味な規定は撤廃して、二重国籍を公式に容認すべきであるとわたしは思います。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018.02.26 22:28:09
コメント(6) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:憲法違反かどうかはともかく、二重国籍は容認すべき(02/26)  
Bill McCreary さん
inti-solさんもこの件に注目されましたか。私もです。

まあでもほんと、海外在住の人で、2つ(以上)のパスポートを持っている人なんていくらでもいますしねえ。何回もコメントしていますが、私が仕事で面談した日本人女性は、ルーマニア人男性と結婚して米国で子どもを産んだので、子どもは生まれながらにしてルーマニア国籍、日本国籍、米国籍だそうで、、おまけに「EUシチズン」です。子どもたちが最終的にどこでくらしの拠点を築くか、あるいは海外を飛び回るかはわかりませんが、たぶん積極的に日本国籍を放棄することはしないでしょうから、少なくとも3国籍は保持するでしょうし、またこれからの人生で次なる国籍も受ける可能性も高いわけです。

>だったら、外国籍を取得しても黙っている、国籍選択の際には「日本国籍を選択します」と宣言だけしておくか、そもそも選択手続きを行わなければよい(運用の実態としては、期限までに国籍選択の宣言をしない二重国籍者に対して督促することもありません)ということになります。
簡単に言えば、バカ正直なごく一部の人だけが日本国籍を失い、大半の人は二重国籍になっている、ということです。

私もそう思います。現実問題として、日本国籍というのは持っていてかなり有利な国籍ですから、はく奪されると損です。同じことを書きますと、国籍法自体かなりあいまいな部分が大きいし、また運用の幅を大きくしている。二重国籍まであともう一歩なんですけどね。 (2018.02.27 08:04:20)

Re[1]:憲法違反かどうかはともかく、二重国籍は容認すべき(02/26)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

>子どもは生まれながらにしてルーマニア国籍、日本国籍、米国籍だそうで

そういう例はたくさんありますね。以前にも指摘したことがありますが、1985年以前から二重国籍だったものは、国籍選択手続きを行わなくても、自動的に日本国籍を選択したものとみなされる、というのは、実質的に海外在住の日本人(南北アメリカ大陸の日系人が多い)の日本国籍を保護する規定、という意味合いが強いと思います。当然、それは二重国籍が前提です。
二度と再び日本に帰ってることは絶対ない、という人は別にして、海外在住の日本人(日系人)にとって、在住国と母国である日本の国籍の両方を持つことはメリットが大きいし、彼らから日本国籍を剥奪することが、日本に利益をもたらすことはないように思います。 (2018.02.27 20:21:56)

Re:憲法違反かどうかはともかく、二重国籍は容認すべき(02/26)  
サミュエル さん
私は多重国籍 反対です グローバル化とは いえ 国が存在する限り 最低限の文化や思想を、共有できない人を その国の国民であるとは 到底認められません。EU市民なら 潔くよく 日本国籍から 離脱してください。日本人ではないです。また正直者が馬鹿をみる法改正は早急に必要であると思います。 (2018.12.26 13:10:09)

Re[1]:憲法違反かどうかはともかく、二重国籍は容認すべき(02/26)  
inti-sol  さん
サミュエルさん

>最低限の文化や思想を、共有できない人を その国の国民であるとは 到底認められません。

多重国籍だと、「最低限の文化や思想」を共有できない、とか、逆に単一国籍だと当然に共有できる、とか、そういうものではないと思います。
引用記事の例は、外国籍を自らの意思で取得した結果日本国籍を喪失した、というものですが、自らの意思と無関係に外国籍が付与される場合は、当然日本国籍は剥奪されません。そのような、「正当な」多重国籍者は、日本人に何十万人もいると思いますが、そのような多重国籍にも反対、ということでしょうか?

今の時代に二重国籍排除など、できるわけがないし、やってメリットはありません。海外に居住する日本人(または外国人と結婚した日本人)にただ不利益を与えるだけであり、それは、日本の海外における経済活動に不利益を与えるものでしかありません。

また、

>正直者が馬鹿をみる法改正は早急に必要

と言いますが、具体的にどのようにすれば二重国籍が排除できるのでしょうか。本文に書いたように、そんな手段はないのです。なんら実効性のない空論的な法改正など、しても意味がありません。 (2018.12.26 20:47:04)

Re:憲法違反かどうかはともかく、二重国籍は容認すべき(02/26)  
Bill McCreary さん
あ、すみません。たまたま面白い記事を読んだので、過去記事にコメントさせていただきます。

//www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/292852

> これからは海外の仕事もぜひ挑戦してみたいですね。私はニューヨークで生まれたので、アメリカ国籍を持っています。せっかくアメリカのパスポートがあるわけだから海外で仕事ができれば最高じゃないですか。

池上季実子がニューヨーク生まれであることは知っていましたが、国際女優というわけではないし、彼女の米国籍保有なんてことを考えたこともなかったのですが、彼女は日本国籍も持っているでしょうから、つまりは自然に二重国籍なわけですね。で、そういうことを自然に語る。吹き上がっている連中もいるようですが、事実上何の問題もないということですね。

だいたい国籍というのは、成人もしくはそれに準ずる年齢にならないと、自分の意志でどこそこ国籍を取得するというのはないわけで、多くは私も池上も、自分の意志とは無関係に取得するものであり、あんまり強権的にどうこうというのは、日本くらいの民主主義国家にはそぐいません。

ところでちょうどオリンピックがあり、パラリンピックもあるのかもですが、オリンピアン、パラリンピアンも、自国では代表になれないので他国籍を取得して代表になった人は多いわけで、国籍法次第とはいえ多国籍の人間も大勢いるはず。また日本出身者のノーベル賞受賞者なども、世間では南部陽一郎や中村修二は米国籍であってもバックグラウンドは日本人だが、カズオ・イシグロは日本生まれで1983年まで日本国籍ではあっても完全に英国のバックグラウンドの人物と見なしているのではないか。ケース・バイ・ケース、時と場合と状況によるといったところで、一筋縄ではなかなかいかないでしょう。ジョン・レノンは人生の残り10年は事実上米国人でしたが、といってやっぱり彼は、あくまで英国人であるとたぶんご当人も周囲も世間も考えていたのではないか。

あ、すみません。だいぶ話が飛びましたが、引用記事にある「兵役義務」うんぬんは、韓国などでもいろいろ問題になっていますね。それでベトナム戦争に、日本国籍の人が米軍に参戦した(そして戦死した)なんて話を石川文洋氏の本で読みました。もちろん軍歴で国籍取得をねらっていたわけで、このあたりもいろいろありますね。 (2021.08.11 00:49:12)

Re[1]:憲法違反かどうかはともかく、二重国籍は容認すべき(02/26)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさんへ

池上季実子の件は知りませんでしたが、米国の国籍制度は生地主義なので、米国で生まれたなら米国籍はありますね。
そして、本文で書いたように、既定の年限までに日本国籍選択の手続きを取ったとしても(選択の手続きをしなくても、日本国籍を剥奪するような運用は行われていないようですが)、それは日本の国内法上「日本の国籍しかない人」扱いになるだけで、米国籍が消えてなくなるわけではありませんし、現実に米国籍からの離脱はかなり面倒な手続きが必要で、やる人も少ないようですから、実際上は二重国籍になるでしょう。それで何の問題もないと思いますけどね。
世界の多くの国は二重国籍を容認していますしね。 (2021.08.11 07:00:37)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: