ロシアの粗鋼生産は中国、日本、米国に次いで世界第4位(市場占有率は5.91%、2006年1月~5月の累計、IISIによる)です。また、輸出量だけを見るとロシアは日本に次いで世界第2位の粗鋼輸出国です。
IISI・・・国際鉄鋼協会
これらの事実からだけでもロシアの鉄鋼セクターは世界的に見ても重要な存在であることがわかりますが、ロシアの鉄鋼セクターの重要性はそういうデータからでは十分語り尽くせないと思います。その理由は:
(1)現在、世界の鉄鋼メーカーは劇的なM&Aの渦中にあり、
ロシアの鉄鋼メーカーがその中で重要な鍵を握りつつあること
(2)世界の自動車メーカーがロシアに工場進出中であり、
ロシアにおける鋼材の提供能力の有無が鉄鋼メーカーのグローバル戦略上、
重要な差別化のポイントになりつつあること
(3)シベリアなどにおけるパイプライン・プロジェクトの進行により
大口径鋼管の需要増が予想されること
(4)ロシアは石炭、鉄鉱石など製鉄にまつわる原料に恵まれており、
垂直統合の度合いが高いことから、これらの原料確保の点からも戦略的に重要であること
などによります。
◆復興途上にあるロシアの鉄鋼業界
ロシアの鉄鋼業界は1970年代には世界で第1位の時期もあったのですが、ソ連崩壊後、他の多くの産業セクター同様、経済混乱の中で大きく生産量を落としました。需要の消滅、設備稼働率の急落など、諸々の問題を抱え込んだわけです。この間、中国はどんどん粗鋼生産を伸ばし、大きく差をつけられてしまいました。
ロシアの鉄鋼業界が息を吹き返したのは2000年からで、これにはロシアの石油ならびに天然ガス業界が設備投資を再開した事が背景にあります。パイプライン、精製施設、その他建設セクターからの需要が増えたわけです。その後、国内鉄鋼需要は一旦横ばいになりますが、現在は原油価格の高騰などから再び設備投資ブームに入りつつあります。また、建設セクターの需要も増大が期待されます。
◆長期的需要見通し
ロシアの現在の一人当たり鉄鋼消費は約200ドル強であり、この数字は今後ロシアの一人当たりGDPが増えるとともに下の図のように暫くは増加し続けると考えられます。
工業化の過程では一人当たりGDPが増加するにつれて一人当たりの鉄鋼消費も増加します。しかし、工業化が完成すると一人当たりの鉄鋼消費量はピークを打ち(例:韓国)、その後は一人当たりGDPが増えるに従って逆に一人当たり鉄鋼消費量は減少に転じます(例:ドイツ、米国)。ロシアの場合は未だ上昇サイクルが始まったばかりですから、当分の間はGDP成長と鉄鋼消費の間には正の相関があると考えられます。
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