2006年12月13日
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今日のまとめ

1.タムは大胆な経営改革で競争力を取り戻した
2.ブラジルの航空業界は再び過大投資のリスクが高まりつつある
3.ブラジル以外のラテン・アメリカの航空市場も好景気である
4.ランはチリの会社と言う意識を捨て南米全域で競争している
5.コパは新しいタイプの企業である

旧勢力の反撃

ブラジルにおけるディスカウント航空会社からの攻勢に対して旧勢力はどう対応したのでしょうか?。前回見たように経営改善が遅れたヴァリグはアッと言う間にリーダーの地位から引き摺り下ろされたのみならず、存亡の危機に瀕しています。一方、タム(ティッカー:TAM)ですが同社は創業から29年が経っていますので、一般には古いタイプの航空会社と理解されています。

しかし同社は断固とした経営改革を進めており、ディスカウント航空会社と比べても遜色ない競争力をつけました。実際、タムの場合、所謂、「ハブ・アンド・スポーク」と呼ばれる一点集中型のルート構築は採っていません。また、費用構造の面から見てもゴールのそれに近いと言えます。タムの株式はブラジルのボルサ(取引所)でずっと取引されてきたのですが、今年の春にNY市場にもデビューし、活発に売り買いされています。使用機材はエアバスA320を中心に絞り込んでいます。同社は2000年頃まで大規模な先行投資計画を進めていて航空機を大量に購入しました。しかし、その後、9・11テロ事件や世界的な景気後退に見舞われ、経営が苦しくなりました。その際、フォッカー社との間で結んだリース契約を反故にしたり法人税減免措置の交渉をするなど、なりふり構わぬサバイバル戦略でなんとかしのぎました。

今は逆に好況で旅客需要も増えているので、また攻めの経営に転じています。前回示したブラジル国内線におけるマーケット・シェアのグラフからもわかる通り、2003年には下降気味だったタムのマーケット・シェアはその後回復に転じ、ゴールに対しても一定のリードを保っています。今、ゴールとタムのコスト・ストラクチャー(費用面での経営体質)を比較してみると下のグラフのようになります。RASKとはRevenue per Available Seat Kiloの略で(売り上げ高)÷(座席キャパシティー×運行キロ数)という計算になります。別の言い方をすれば「単位売り上げ」と言えるでしょう。CASKとはCost per Available Seat Kiloの略で「単位コスト」の指標です。この単位売り上げと単位コストの差額をスプレッドとして示しておきました。これらのグラフから言えることは:


(2)タムは最初利幅(スプレッド)が薄かったが、経営努力でかなり改善してきている。
ということでは無いでしょうか?

ゴールの単位売り上げ(RASK)、単位コスト(CASK)、スプレッドの推移(センタボス、コンテクチュアル・インベストメンツ)

タムの売り上げ(RASK)、単位コスト(CASK)、スプレッドの推移(センタボス、コンテクスチュアル・インベストメンツ)

ブラジルの国際線市場

これまではブラジルの国内線で起こっていることについて見ました。次に国際線市場を見てみましょう。ブラジルの航空会社の国際線のマーケット・シェアですがフラッグ・キャリアとして君臨したヴァリグはここでも劇的にシェアを落とし、タムに王座を明け渡しています。

ブラジルの航空会社の国際線市場におけるマーケット・シェア(%、DAC)

ヴァリグの失速で出来た空白を埋めるべく、タムもゴールも積極的な拡張計画を進めています。しかし、その性急な姿勢が再び過大投資を招きやすくなっていると考えられます。

ブラジル以外の南米の市場

ブラジルの旅客需要が急成長していることは既に見ましたが、実は旺盛な需要を享受しているのはブラジルだけではありません。ブラジル以外の南米、そして中米の航空市場も好調です。例えばチリ、アルゼンチン、ペルーなどを中心に展開する航空会社にラン(ティッカー:LAN)という企業がありますが、同社の売り上げ成長率はここ数年平均23%程度で伸びています。ランの特徴は旅客だけでなくカーゴ(貨物)を重視している点だと思います。下のグラフは世界の主要航空会社の旅客と貨物の比率を示していますがランの貨物比率がとりわけ高いことがお分かり頂けると思います。

売り上げに占める旅客・貨物比率(%、ラン、05年末)

南米の場合、北米市場のような貨物専門の航空会社が比較的発達していませんから、ランのような戦略が意味を持つと思います。旅客を運ぶと同時に貨物も運べば旅客のロード・ファクターが少々低くても利益が出ます。ランはもともとチリのフラッグ・キャリアであり、ラン・チリという名称でした。しかし同国は国内航空市場が小さいため、下のパイ・チャートに見られるように国際線のビジネスに積極的に進出しています。その過程で自社名からチリを取り除き、ラテン・アメリカ全域で生きてゆく会社として企業戦略を改めています。とりわけ貨物の分野での国際線比率が高い点に注目してください。なお、ランは通常の旅客路線で貨物を運ぶほか貨物専用の路線も展開しています。貨物専用路線の基地はブラジル、メキシコ、マイアミなどに置かれ、旅客路線を補完しています。

ランのルート別旅客売り上げ高比率(%、会社資料)

ランのルート別貨物売り上げ比率(%、会社資料)

中米での新しい動き

さて、南米はこれまで紹介してきたように航空事業のルネッサンスとも言える新しいトレンドが起こっているのですが、中米でもエアラインのビジネスは今大きな変化を見ています。その中心となっているのがパナマを本拠地にしたコパ(ティッカー:CPA)です。同社は1998年に米国のコンチネンタル航空が同社株の49%を取得し経営に参画してから見違えるような進歩を遂げました。コパの株式はほぼ1年ほど前にNY市場に上場されました。

パナマは北米と南米のちょうど中間点にあり、ここにハブを設置するのは路線構築の上でとても理に叶っています。パナマはマイアミのほぼ真南に位置し、カリブ海諸国へのアクセスが良いうえ、ペルー、エクアドル、コロンビアなどのアンデアン地域の各国へのアクセスも良いです。さらにベネズエラなども近いです。コパは90年代に大々的なリストラクチャリングで見事に蘇生したコンチネンタル航空のコスト管理ノウハウを受け継いでいます。同社はこれまでのラテン・アメリカの航空会社には見られなかった新鮮なアプローチを持っているといえます。同社の使用機材はこれまでボーイング737が主流でした。しかし中小都市への便を効率よく増やすべく、リージョナル・ジェットのエンブラエルERJ190を漸次導入してゆくと発表しています。なお、同社は最近、コロンビア第2位の航空会社、アエロ・リパブリカを買収しています。





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最終更新日  2006年12月13日 17時21分44秒


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