2008年11月25日
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今日のまとめ


2. マネーの健全性が損なわれたとき、ゴールドの人気が出る
3. 貿易摩擦、国際緊張の高まりはゴールドの強気要因
4. デフレ圧力よりマネーの健全性に対する不安の方が勝てば金は上昇する


■中国の景気刺激策

 今回は金鉱株に投資するにあたって知っておかねばならない点をまとめたいと思います。先ずなぜ今金鉱株に注目するのか?という点を簡単に説明します。


■超低金利時代が来る

 いま世界的に政策金利は物凄い勢いで低下しつつあります。それは世界の景気がとても悪いからです。下のグラフのように米国のトレジャリー・ビルの利回りは僅か2bp(ベーシス・ポイント)しかありません。つまり金利はゼロに限りなく近いわけです。


トレジャリービルの利回り

(出典:CFRブログ、ブラッド・セッサー)

低金利はゴールドの持つこの不利な面を補う効果があります


■若し恐慌が来たら

 次に、これは誰にとっても喜べないシナリオですが、ひょっとすると今回の不景気は相当ひどくなるかもしれません。その場合、最初はデフレになって世界的に物価が下がります。(この場合、当然、ゴールドの価格も下がりますから気をつけてください!)

デフレはある意味、インフレと同等か、それ以上に怖いです。とりわけ農業従事人口の巨大な中国、インド、ブラジルなどの新興国では農産物の価格下落は即時に政権の不安定を意味します。このためこれらの国はデフレが来ると何とか価格下落を食い止めようとします。その場合、手っ取り早い方法は政府がお金をどんどん印刷するというやり方です。それはその国の マネーの健全性 を損ないかねない危険な選択です。下のチャートは1930年代の大恐慌のとき、米国のダウ工業株価平均指数(赤)がどう動いたかを示すものです。

ダウ工業株価平均指数とホームステイク・マイニングの株価


(出典:シルバー・ゴールド・チャーツ・ブログスポット・ドットコム)

 緑のホームステイク・マイニング(当時の代表的な金鉱株です)の急騰ぶりが嫌でも目に入りますね。実はホームステイク・マイニングの大相場の基点となった1931年にはイギリスをはじめ世界12カ国が相次いで金本位制度を離脱しているのです。(大暴落の1929年からゴールドが動き出す1931年までタイムラグがあることをお忘れなく!)

 金本位制度というのは政府がお金を刷る場合、その紙幣の価値の裏づけとなるゴールドを政府がちゃんと保有していなければいけないというルールです。これだと政府は無闇やたらに輪転機を回すことはできません。そこで大恐慌時代の容赦ないデフレを阻止せんがために各国は次々に金本位制度を捨て、インフレ政策に走ったのです。


■今後我々が気をつけるべきニュース

 今は世界の政府は自由貿易を擁護したいという考えで足並みが揃っています。しかし不況が長引き、失業者が溢れると政府は次第に保護主義に走ったり輸出ダンピングに走ったり自国通貨を弱く誘導したりしはじめます。すると国家間の緊張が高まる危険性もあります。事実、WTOの農業ラウンドにおける世界の対話は既に暗礁に乗り上げており、暗雲がたちこめつつあります。従って 今後、「何処かの国が輸入品に関税をかけるようになった」とか「ダンピングで提訴した」とかのニュースを頻繁に聞くようになったら、ゴールドに注目しはじめて良いという事です


■実物市場と金融市場におけるゴールドへの需要の落差

 さて、このところ奇妙な現象がゴールドの投資家の間で話題になっています。それはゴールド・コインや延べ棒のような「実物」に関しては極めて旺盛な需要があることが世界的に報告されているということです。 サウジアラビアのゴールド・スーク(市場)では金製品が飛ぶように売れているし、米国でもゴールド・コインの人気は高く、造幣局では鋳造が間に合わず「割り当て制」になっている そうです。

 その反面、ゴールドの価格自体は他のコモディティーや株式市場の下げと歩調を合わせて軟調な展開でした。どうしてこのような事が起こるのでしょうか?

ひとつには今は最初に説明したデフレ圧力がのしかかっているので:

デフレ圧力 > マネーの健全性

という力関係になっているのだと考えられます。また コモディティー・ファンドの解約

 なおゴールドの「実物」を巡る需給関係は下のグラフのようになっています。赤の部分が実際の需要と供給の「不足分」になります。つまり需給関係はタイトであると言えるでしょう。また産金会社の総生産高はマイナス6%となっており、今後も供給は余り増えそうにはありません。

金の需給バランス


■様々な投資機会

 ゴールドに投資するには様々な方法があります。先ず一番簡単な方法はゴールドのETF(イー・ティー・エフ=エクスチェンジ・トレーデッド・ファンズ:上場型投資信託)に投資するというやり方です。 SPDRゴールド・シェアーズ(ティッカー:GLD) がそれです。

 次に金鉱株に投資するというやり方もあります。一般的にETFよりも金鉱株は値動きが激しいことに注意してください。代表的な金鉱株を挙げると:

バリック・ゴールド(ティッカー:ABX)
 本社はカナダですがニューヨーク証券取引所にも上場されています。同社は金の埋蔵量(1.25億オンス)ならびに生産量(806万オンス)で世界最大の産金会社です。同社の金山は北米、南米、オーストラリアならびに南太平洋という3つの地域にきれいに分散しています。また新しい金山のポートフォリオも充実しています。採掘コストは$350/オンスです。また、同社は産金会社では唯一の「A」格の債券格付けを受けた企業です。バランスシート上のキャッシュは17億ドル、負債は25億ドル、年間の営業キャッシュフローは約20億ドルです。

ニューモント・マイニング(ティッカー:NEM)
 1925年にニューヨーク証券取引所に上場された老舗の産金会社です。同社の金の埋蔵量は9390万オンスです。生産量は530万オンスでした。同社の特徴は金価格のヘッジを全然用いていないという点です。従って金価格が上昇する局面では一番収益が伸びやすいです。逆に金価格の下落局面では一番業績が悪化しやすい体質となっています。また金山の操業面ではコスト管理が行き届いています。同社の採掘コストは金だけですと417ドル、同時に採取される銅を売ることでネット・ベースでの採掘コストは301ドルに下がります。バランスシートは強固で同社の金山は比較的事故の少ないことでも有名です。

アングロゴールド・アシャンティ(ティッカー:AU)
 同社はもともと1944年にヴァール・リーフという名前で創業された南アの有力産金会社です。その後コングロマリット、アングロ・アメリカン・コーポレーションの産金事業部門となったため、社名が変わりました。同社は7310万オンスの埋蔵量を誇っています。去年、同社は550万オンスの金を生産しました。同社の金山のうちの4割は南アフリカに所在しており、その大部分は地中深い縦坑から生産されます。このためコスト構造としては露天掘り主体の会社よりも高くならざるを得ません。同社の採掘コストは357ドルです。同社はヘッジを用いていますが最近はだんだんヘッジ比率を引き下げつつあります。

ゴールド・フィールズ(GFI)
 同社はドリファウンテン、クルーフなどの南アを代表する金山を所有している老舗のひとつです。同社の金山の57%は南アに所在しています。確認埋蔵量は8300万オンス、生産量は364万オンスでした。上に掲げた他社の株価に比べてゴールド・フィールズの値動きはとりわけ荒っぽく、注意を払う必要があります。





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最終更新日  2008年11月25日 19時29分17秒


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