2007年02月08日
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カテゴリ: 投資信託
 団塊マネーの取り込みを狙って、銀行では投資信託と預金のセット販売に力を入れている。しかし、その中身をよくよくチェックしてみると、果たして個人にどれだけのメリットがあるのか、疑わしい面があるのも事実だ。

 セット商品の一番の特徴は、投資信託と預金を組み合わせることによって、預金の利率が飛躍的にアップするということだ。少なくとも表面的には、かなり大幅アップしたかのように映るだろう。

 たとえば、みずほ銀行が扱っている「第二のスタート応援プラン」では、投資信託や外貨定期預金などのリスク資産を500万円以上購入した場合、それと組み合わされる定期預金の利率が年6.0%、リスク資産の購入金額が500万円未満の場合は、年利率が5.0%になる。定期預金の利率は、1年物でも0.25%程度だから、仮に6%が適用されたとしたら、実に24倍にもなる。

 こうした高金利には、必ず何かウラがあると考えるのが、資産運用で失敗しないための基本だ。

 具体的に、このセット販売の中身を検証してみよう。

 まず、上記の利率は3ヶ月物定期預金に適用されるものだ。3ヶ月物定期預金の利率は、通常だと年0.15%なので、年利率で6%というのは非常に有利であるように思える。

 ただ、この年6.0%という利率は、あくまでも3ヶ月間で得られる利子を年換算したものだ。そのうえ、当初3ヶ月が経過すると、その後は通常利率に低下してしまう。つまり、年6.0%といっても、単純計算で考えれば、その4分の1のリターンにしかならないのだ。

 6.0%の4分の1というと、利率で見ると1.5%程度。これを高いと考えるか、それとも低いと考えるか。これは多分に個人の価値観によって異なると思われるが、少なくとも投資信託を販売したい銀行にとっては、非常に有利な仕組みといえるだろう。

 定期預金の利率を、銀行にとってのコストと考えれば、話は非常にわかりやすくなる。銀行から見れば、確かに3ヶ月間で1.5%のコスト負担増にはなるが、一方で投資信託を販売すれば、このコスト分くらいの購入手数料が、銀行に入ってくる。株式型投資信託の場合だと、おおよそ購入金額に対して2%程度の購入手数料がかかってくるので、500万円ずつ定期預金と投資信託を購入した場合の損益は、次のようになる。



 つまり、いくら年6%の利率が得られるとはいっても、わずか3ヶ月間の適用のみでは、投資信託の手数料分もカバーできないのだ。それだけ投資信託の手数料が高いということになるが、せっかくの利息も投資信託の手数料で取られてしまうのでは、利用者にとってほとんどメリットがないと言っても良いだろう。

 特に退職金のようなまとまったお金を一度に受け取ってしまうと、それをどうやって運用すれば良いのかで悩んでしまう人も少なくない。

 銀行としても、一度にまとまったお金で預けてもらった方が、何かと手間が省けることから、こうしたセット販売を積極的に行なってくるのだろうが、利用する前に、自分で本当に必要なものなのかどうかを考えてみることが大切だ。

(金融ジャーナリスト:鈴木雅光)





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最終更新日  2007年02月08日 11時04分32秒
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