2007年10月26日
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カテゴリ: 投資信託
 「長期保有するほど手数料がゼロになるのでおトクです」。

 こんなセールストークで商品を勧めてくるファンドがあります。「クラスB受益証券」というのが、その正体。投資信託のコストは、購入時に「購入手数料」を支払い、ファンドを保有している期間中は「信託財産留保額」と呼ばれるコストを、保有日数に応じて負担しています。さらに、ファンドによっては「解約手数料」を徴収するケースもありますが、これは少数派。解約手数料を取っているファンドといえば、おそらく長期公社債投信くらいのものでしょう。

 さて、最近は投資信託の手数料体系も多様化し、なかには購入手数料を取っている既存のファンドでさえ、取扱い金融機関がネット証券会社になると、購入手数料を無料にするノーロード化が進んでいたりもします。投資信託のコストのうち、購入手数料については、保有期間を長期化することによって、1年あたりのコスト負担率を低減させることができますが、かからなければそれに越したことはありません。ネット証券会社を中心に進んでいる既存ファンドのノーロード化は、それなりに評価できるものと思います。

 ところで、同じように購入手数料がかからないファンドの一種に、「クラスB受益証券」というものがあるのをご存知でしょうか。このタイプは、国内投資信託よりも外国籍投資信託に多く見られるもので、購入手数料はかからないものの、ファンドの保有期間に応じて解約手数料を取るというものです。それも保有期間が短いほど、解約手数料の負担が重くなるという料率設定がなされているため、長期保有するほどトクになるというセールストークがまかり通っています。

 はたして、それは本当なのでしょうか。たとえば、あるクラスB受益証券の手数料を見ると、購入手数料は無料ですが、解約手数料については、1年未満で解約すると4.0%、1年以上2年未満で3.5%、2年以上3年未満で3.0%、4年未満で2.5%、そして4年以上保有すると、解約手数料も無料ということになっています。確かに、この条件だけを見れば、冒頭にも書いたように、「長期保有するほど手数料がゼロになるのでおトク」というセールストークにも頷けます。

 でも、問題は「販売管理報酬」という項目にあります。外国投資信託のコスト内訳を見ると、運用会社が受け取る「管理・投資運用報酬」と、受託銀行が受け取る「保管・管理事務代行報酬」は、購入手数料を取るクラスA受益証券も、このクラスB受益証券も同率ですが、なぜか販売金融機関が受け取る報酬については、「代行・販売報酬」に加えて、「販売管理報酬」が別途0.64%も計上されているのです。ちなみに、代行・販売報酬について、クラスB受益証券はクラスA受益証券よりも、0.2%程度低めに設定されていますが、それでも、「代行・販売報酬」と「販売管理報酬」を合わせたコスト負担率は、クラスB受益証券の方が年間0.44%も割高になります。

 もし、このファンドを5年間保有すれば、クラスA受益証券とクラスB受益証券のコスト負担の差は2.2%にも達します。10年間保有すれば4.4%です。これならば、いくら長期保有することで解約手数料がゼロになったとしても、何の意味もありません。最初から、クラスA受益証券を購入した方が、少なくともトータルで見たコスト負担ではおトクということになります。

 クラスB受益証券については、まったくもって投資家のためにはならない商品と断言しても良いでしょう。

(金融ジャーナリスト:鈴木雅光)





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最終更新日  2007年10月26日 13時45分05秒


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