Der Nakajistil

Der Nakajistil

2010.07.19
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以前から、チェンバロにデュナーミク、すなわち強弱の表現の可能性が欲しい、という要望はあった。
それが18世紀初頭になってヨーロッパ各地で鍵盤の先にハンマーをつけるという似通った発想が生まれるようになった。
イタリアではクリストフォリ、ドイツにおいてはシュレーター、フランスではマリウスがハンマーアクションを考案した。
ブリタニカ百科事典第4版によれば、ピアノはイギリスのメーソンという詩人によって発明されたとあるらしい。
彼らはお互い知己もなく連絡もなかった。そんな彼らがなぜまるで打ち合わせたかのようにハンマーアクションを考え出したのか。

その起爆剤となったのは、パンタレオン・ヘーベンシュトライトだった。
彼はドイツの舞踊教師であり音楽家であった。ある時期はテレマンの同僚でもあった。
だが最も特筆すべきはツィンバロン演奏だった。
それまでヨーロッパやアジアでよく用いられたダルシマー(ドイツ語でハックブレット)という楽器に独自の改良を加え、同時に独自の奏法を編み出して究極の音楽を作り上げた。


すばらしい演奏に出会うと、自分もそのように演奏できれば・・・と思うのは自然な感情であろう。ところが、パンタレオンの演奏技術は並外れて人間ばなれしており、普通の人間がマレットを使用してパンタレオンのように演奏するのは不可能であった。また、楽器自体がパンタレオンに合わせてカスタマイズされていたので、とても常人に使いこなせるものではなかった。

それならば・・・チェンバロのような鍵盤楽器にマレット、すなわちハンマーをくっつけてしまえばもっと容易に演奏できるのではないか。
このような発想はごく自然に生まれてきたものであろう。おそらく記録に残っているもの以外にも、各地で様々なハンマーアクションのアイディアがあったことは想像に難くない。
しかし、ハンマーで弦を叩くという動作は案外複雑で、その仕組みを思いつくのは容易ではなかったはずである。そのためマリウスにしてもシュレーターにしても考案に時間がかかったのだろう。それで一応クリストフォリがピアノ発明者というのが定説になっている。

パンタレオンの音楽がどのようなものであったのか。僕自身は残念ながらその作品というものを聴いたことがない。
だがパンタレオンの楽器がもう少し発展した現在のツィンバロンの演奏を聴くと、それはまさに「ピアニスティック」である。もちろん、ツィンバロン音楽も後々ピアノの影響を受けてそのように変化している面はあるだろう。しかしやはりそこに何か源流への入り口を見出すのである。
往々にして天才の仕事というのは独自性もさることながら、それまで存在していたものを華々しく開花させるという面もある。
パンタレオンも何物かを開花させて「ピアニスティック」の基となるものを作ったと考えるのが妥当であろう。
それが何だったのか、どこから来たのか。さらに源流へとたどってみようと思う。

つづくzim





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Last updated  2010.07.20 07:24:33
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