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| 鳥よ!! |
| 呟きが聞こえる。 |
| 「私は、死に行くものである」 |
| それは、樹下に横たわる小鳥からのメッセージである |
| 眼は既に穏やかに閉ざされて、もう世界を見ない |
| 微かな開口が、何かを語りたげだ |
| 置き去りにされる日々の |
| 華麗なる姿を一瞬一瞬そぎ落とさねばならない |
| 死の硬直への限りなき行進 |
| だが、痛恨のみが生の喪失への軌道となって駆けだした。 |
| 数億秒の生の儀式の果ての虚無との合一 |
| 繰り返し、また |
| 春が来た |
| 夏も来て |
| 秋が過ぎ |
| 冬がきたとき |
| 空に舞う一羽の鳥を見つけて、 |
| 「ああ、鳥よ |
| 飛ぶことはおまえの定めか |
| おまえは飛ばねばならないのか |
| 私はある日、もがき嘆いているおまえに |
| 逢ったことがある |
| 私はおまえをちらっとみて |
| ニッと笑ったぞ |
| その時からおまえは |
| 飛びあがったままだ |
| 時たま眼を閉じて滞空するが |
| けして地に降りることをしない |
| おまえが休むのはいつだ |
| 鳥よ |
| やがておまえが疲れ果てて |
| 地に落ちるとき |
| そこに、おまえの止まり木はない |
| いや、たとえあったとしても |
| はらからの仲間と自ら定めて |
| しがみつくであろう梢にさえ |
| 一枚の落ち葉のように見捨てられ |
| ハラリと大地に還る |
| そこは広漠たる湿原だ |
| そこを横目に敷き詰めながら |
| その冷気にしんしんと |
| 犯され続けるのだ |
| 鳥よ |
| そのときおまえは、よよと泣くだろう」 |
| そして冬が去った |
| 春が来て菫の野に |
| 私は、おまえの死骸を見る |
| 私はそのとき、きっと泣くだろう |
| 「そこに横たわり、そこに死をひきうけた小鳥よ |
| おまえの時は短くても |
| おまえたちの時は長いのだ |
| さあ、休もうよ! |
| 休むことをみんなで |
| 叫ぼうよ!」 |
| と。 |
鳥たちよ!! 地上に降りて観よ!!!! January 20, 2008
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詩集「幼魚記」より 蝉たちの鎮魂歌 November 1, 2006