LUNATIC

LUNATIC

2007.01.21
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カテゴリ: 小説
 その人からの電話は日を追うごとに、頻度も内容もエスカレートしてきた。
 4,5日に一度だったものが、ほぼ毎日になるまで、一ヶ月とかからなかった。

「けんちゃんはふみちゃんのことが大好きだったんだってぇ。別れたくなかったんだってぇ。うれしーい?」

 私の不倫が知らないところで始まって、そして終わっていた。
 大石さんの名前が「研二」だったことをそのメッセージで思い出した。そういえば、字は違うが、初恋の人と同じ名前だった。
 しかし「ふみちゃん」とは……。
『文子』という名前は父方の祖父がつけた。祖父は、私が生まれた直後に亡くなったので、私には祖父の記憶はない。ただ、話しに聞くところでは、そうとうに頭の固い頑固おやじだったらしい。
「文子」
 その古臭い名前を母は嫌っていて、記憶にある限り、一度もわたしを「ふみこ」と呼んだことがない。いつも「ぶんちゃん」とか「ぶんこ」とか呼んでいて、そのせいだろう、家族や親戚はみんな私のことを「ぶんこ」と呼ぶようになった。


 そのメッセージを聞いた夜、私はおかしな夢を見た。
 実家の縁側で、祖母が私に干し柿をくれた。庭には大きな柿の木があって、祖母はその柿をいつも干し柿にして私にくれたのだった。
 夢の中の私は、小さな手に乗せられた柿に鼻を付け、かすかに、甘く漂うおひさまの匂いを胸いっぱいに吸い込み、目をつぶり、そしてその果肉に歯を立てる。
 とろりとした感触を舌に感じる……ふいに、口の中に生臭い匂いが充満した。それは、遠い日の記憶にあった男の精の匂い。
 慌てて口の中のものを吐き出すと、手の上で、うじゃうじゃと黒い小さな虫がたくさん動いた。
「うっっ!」
 驚いて息をのんだ口の中、奥歯にジャリっとなにかが当たった。
「いゃああああーっ!」
 自分の悲鳴で目を覚まし、とっさに手の平をみた。
 骨ばった手は汗でぐっしょり濡れていたが、そこに虫は乗っていなかった。

「あんたっていやらしいんだってねぇ。せっ・く・す大好きなんだって? この淫乱!売女野郎!! どんな身体してんだよ、見せろよ。おっぱいが大きいんだってぇねぇー E?F? 手で思い切りつぶすと細い血管が白い肌に浮いてすごくいやらしいんだって、けんちゃんそれが好きだったんだってさー でも乳首はでかくてどどめ色なんでしょ? ど・ど・め・い・ろ~ あははっ」


 そのせいか、ところどころを強調して切るように言う。卑猥な言葉を言うときには必ずといっていいほどそうで、しかも、声が大きくなる。
「どどめ色」私はその言葉を聞いてドキッとした。確かに私の乳首は男性経験が少ないにもかかわらず黒くて、しかも子供を産んだ女のように大きい。
「でも『売女野郎』はないわよ。バカじゃないの」
 私はそうつぶやいて笑ったが、口が乾いていて上手くは笑えなかった。





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Last updated  2008.06.23 05:58:51
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