ラッコの映画生活

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2007.06.05
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カテゴリ: アメリカ映画
WICKER PARK

114min

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寸評:ジル・ミモーに監督の1996年フランス(伊西)映画 『アパートメント』 のリメイク。かなり忠実なリメイクで、しかしラスト(結果的に物語全体)が変えられていた。このラストにすると元の映画では必要だった色々な部分が無意味となり、無断ではない体の良いパクリというか脚本作成の省略ではないのか。この映画としてだけ見ると、2人の基本ストーリーとそれ以外の部分との整合性がない。結局人間を描こうとするフランスとハッピーエンドのラブストーリーの好きなアメリカとの差か。

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物語の主要登場人物は主人公マシュー、彼が現在働く会社の上司(or経営者?)の妹でマシューの婚約者レベッカ、マシューのかつての恋人で2年前に姿を消したリサ、マシューの親しい友人で靴店経営のルーク、ルークの恋人、2年前の時点で既にリサの友人だったアレックス、現在のリサの愛人でリサと結ばれるために妻を交通事故に見せかけて殺したらしいor本当に事故で妻を失ったばかりのダニエル、この男3名女4名の計7人(と一応しておく)。

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物語の現在はシカゴ、レベッカとの婚約を控えたマシューが中国に出張するというところで始まる。レストランでマシューはレベッカの兄とともに中国の企業家と商談をしている。元の映画『アパートメント』でリサを演じたのはモニカ・ベルッチだが、笑えるのはこのレストランがBellucci's Restaurantと名付けられていたこと。そこにレベッカも登場。彼女は店に入るとき慌てて外に出る女性にぶつかられるが、このシーンは巧みに構成された物語の伏線でもある。電話をしに席を立ちマシューは店内の電話キャビンに向かうが女性客がすでにいた。彼がトイレに入ると隣にあるキャビンから女の声がした。それは2年前に突然姿を消した恋人リサらしいことに気付くが、後ろ姿だけの彼女は急いで店を出て行き、急いでいたのでハイヒールのヒールを片方折ってしまう。これも伏線。とにかく元映画の脚本はこういう意味では実に綿密に練られている。マシューが彼女の去った電話キャビンに入ると新聞とホテルのカードキーが忘れられていた。夜レベッカが中国に発つマシューを空港まで見送るが、上海に向けて出発すると見せかけてマシューは出発せず、中国企業にはマシューは食中りで行けなくなったことを電話で伝え、電話キャビンにあったカードキーのホテルの部屋を訪ねるが、そこにはリサは不在。しかし飛行機の中で眠るためにと飲んでいた薬の影響で部屋のベッドで眠ってしまう。目を覚ますと朝。メイドが洗濯物を届けにきたりして、慌てたマシューは部屋に忘れられていたコンパクトと破り捨てられた新聞記事を持って部屋を去る。記事は隣のトイレから電話キャビンでリサらしき女性が話していたのを聞いたダニエルという男の妻の葬儀の広告だった。マシューはルークの靴店を訪れ、車を借り、その葬儀に行ってみる。こうしてマシューは2年前に姿を消した恋人リサ探しを始める。そして映画はマシューとリサの出会いや別れなど2年前の回想と、出張に行かなかったマシューがリサを探す現在とが平行して描かれ、その2つが現在に至るように合流して、その後ラストの結論的部分が描かれるように巧みに構成されている。

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(以下ネタバレ)
映画はそういう複雑な構成をとっていて、サスペンス性もある。だから映画の進み方をその通りにここに書くことはちょっと無理なので、 完全ネタバレ にはなりますが、だからどういうことだったのというのを書いてしまいます。実は2年前、アレックスが誰にも知られずマシューを好きになるんですが、マシューはリサと恋仲になってしまう。自分に自信がなく引っ込み思案のアレックスは自分の気持ちを外に出すことが出来ずただただ陰ながら思い続ける。そしてリサが急な仕事で去ったときに彼女の伝言をマシューに知らせない。そして2年後の現在、マシューがリサを探しているのを知り、マシューの友人であるルークに近付き、またリサをしつこく追いかけるダニエルから逃れたいリサを家に泊めたりで、ようするにマシューとリサ両方の動静を知ることで2人が再会するのを巧みに阻止する。登場人物紹介で上に「一応7人」と書いたが、それはネタバレを避けるためで、ルークの恋人とリサの友人アレックスは同一人物だ。悪い女のようだけれど、ただただ一途なんですね。鍵を手に入れたマシューは現在のリサの部屋に入るんですが、そこに帰宅してきたのはアレックス。アレックスは警察を呼ぶとかドタバタを演じるけれどそれも作戦で、最終的にマシューを上手く誘って彼と一夜をともにする。アレックスはマシューに抱かれるのだけれど、マシューが好きなのはリサなわけで、彼女の念願が成就されるといっても悲しい形です。そしてアレックスはルークに別れを告げて去る。マシューはロンドンに発つというリサを求めて空港に行きますが、それは行っているはずの中国出張からちょうどマシューが戻る日で、迎えにきたレベッカと出会う。マシューは2年前から好きな人がいたとレベッカに告白して別れを告げ、空港内で座り込むリサと再会して抱き合うというハッピーエンド。

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『アパートメント』 と比較してみましょう。元の作品ではリサはリザ、マシューはマックス、アレックスはアリス、ルークはリュシアン、レベッカはミュリエル、ダニエルはダニエルですが、混乱を避けるためにフランス版の方の説明にも米リメイク版の名前を使います。

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映画の冒頭でマシューはレベッカの婚約指輪を宝石店で選んでいて、どれにするか決められないマシューに宝石商が言うのは、米版では「目でなく心で決めて下さい」ですが、仏版では宝石商が3つの指輪を解説し、それが3人の女性を象徴している。つまりマシューは3人の女性の1人を選べないということです。事実仏版マシューは思いを残すリサがいながら、現在はレベッカと婚約中で彼女を嫌いではなさそうだし、出張をさぼってまでリサを探していながら偽リサ・アレックスに誘われればベッドインしてしまうし、仏版ではアレックスが思いを綴った日記を読んでほだされたマシューはローマに発つ寸前の彼女を空港で捕まえて一緒になろうとするし、でも結果的に迎えにきたレベッカと会えばそれもやめてレベッカと元の鞘に収まるし・・・。つまりマシューというのは優柔不断で、自分が求められ惚れられればその女のもと走る男。リサはリサで2年前のマシューに未練があるものの、金のためだか何だか解らないけれどダニエルの愛人になっているし。つまりこの物語というのは、リサとマシューという本当に深く愛しているのか、愛していたのか、あるいは一途であると言えるのかどうかややあやしい2人に、深い情念をもったアレックスとダニエルという2人が関わる物語なのだと思います。

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仏版のそれぞれの人物を見てみると、ルークとレベッカには大きな性格的意味はないとして、マシューは上に書いたような人物。深い情念でリサを愛し、リサと結ばれるためにもしかしたら妻を事故に見せかけて殺したのかも知れないという、謎と怖さを持ったダニエル。米版では窓のカーテンに映るリサ(実はアレックス)とマシューの陰を見て諦めたらしいだけだけれど、仏版では部屋で待ち伏せしてリサが帰ってくると部屋に火を放って無理心中するという男の情念。またリサがそうした仕打ちを受けるのも、ダニエルを弄んだのだから当然の報いだ。アレックスは陰ながら一途にマシューのことを思い、彼とリサとの関係を妨害するけれども、一夜マシューに抱かれ、思いを綴った日記を渡すと去っていく。空港に追いかけてきたマシューと一緒になる風を見せ、ローマ行きはやめて荷物を取ってくると言うけれども、彼女は出国手続きに向かう。マシューに本当に愛されはしなかったことを認め、マシューとリサとの恋を妨害し、ルークを利用しただけの彼女の責任の取り方であり、情念のなせるわざだ。米版ではたんなる横恋慕をする子供のようなアレックスで、このような深い情念は描かれないし、結局最後はどうなっちゃったの?って感じだ。このように原典では人物の設定や、その因果等にしっかりとした辻褄があり、アレックスとダニエルの恐ろしいほどに強い情念があるから、映画のサスペンス性にも実体があるのだ。だから結局たんなるハッピーエンドのストーリーとしてしまっては、そうしたすべてが死んでしまう。

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オリジナルを見たときは、まあまあの出来で75点程度かなと感じたが、このリメイクを見ることでオリジナルの内容がさらに良くわかり、オリジナルの評価を80点か85点まで上げてくれる効果があった。リメイク自体の採点は50~55点といったところだろうか。リメイク版で一つだけ面白かったのはマシューが中国にいるということにしてレベッカに電話をするシーン。ルークの店でのことなのだが、この靴店のインテリアが中国趣味でガラス扉に書かれた店名も漢字なので、あたかも本当にマシューが中国から電話をしているようだったのが面白い。あと気付いたのはリサを演じたダイアン・クルーガーがオリジナルのベルッチにやや似ていて、またフランスの女優サンドリーヌ・ボネールに似ていたこと。アレックスを演じたローズ・バーンは目の化粧や髪形からイザベル・アジャーニを思わせるところがあったこと。しかし演技は深い情念ではなく幼い横恋慕といった感じだった。細かいことで言えば、1996年のフランスと2004年のアメリカという差があるのだが、マシューは携帯電話を持っており、リサに知らせる電話番号をその携帯ではなくルークの家の番号にしたところが不自然だった。

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Last updated  2007.06.07 03:48:20
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