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聖書預言@ Re:猫の手を借りた日曜日は、少しだけ前に進む(06/07) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…

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2026/09/22
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目が覚めたのに、起き上がれなかった。

正確には、起き上がる理由が見つからなかった。

カーテンの隙間から入ってきた朝の光は、もうずいぶん高いところまで部屋を明るくしている。

白い布団の上に淡い金色が広がり、窓辺の観葉植物の影が、風に合わせてゆっくり揺れていた。

時計を見る。

いつもの朝なら、もう制服に着替えている時間。

それなのに今日は、アラームも鳴らない。

廊下を急ぐ必要もない。

パンを口にくわえたまま髪を整える必要もない。

何かを忘れているような気がして、わたしはしばらく天井を見つめていた。

「……今日、休みなんだ」

声に出してみて、ようやく少しだけ納得する。

すると胸のあたりで、小さな耳がぴくりと動いた。

ネネだ。

七歳になった白猫は、わたしの胸からお腹にかけて、まるで自分専用のベッドみたいに身体を預けて眠っている。

白い毛が朝日に透けて、ところどころ銀色に光っていた。

鼻先は薄い桃色。

前脚をひとつ、わたしの服の上に乗せたまま、完全に安心しきった顔をしている。

「重いんですけど」

もちろん返事はない。

わたしが指先で背中を撫でると、

ごろ、ごろ、ごろ。

小さな振動が胸の奥まで伝わってきた。

「聞こえてるくせに」

ネネは目を開けない。

こういうところが、ずるい。

普段は名前を呼んでも振り返らないことがあるくせに、わたしが落ち込んでいる日は、何も言わず近くにいる。

抱き上げようとすれば逃げるくせに、自分が甘えたいときだけ当然みたいに膝へ乗ってくる。

子猫のころから、ずっとそうだった。

窓の外で、遠くを走る車の音がした。

そのあと、鳥の声。

どこかの家から掃除機の低い音も聞こえてくる。

みんな、もう一日を始めている。

そんな当たり前のことが、なぜだか少しだけ胸に引っかかった。

休みの日なのだから、何もしなくていい。

そう思っているはずなのに。

スマートフォンを手に取る。

画面には、友達から届いた昨日のメッセージ。

部活の予定。

来週提出の課題。

おすすめの動画。

SNSを開けば、朝から勉強している人がいて、部活へ向かっている子がいて、家族と出かけている人がいて。

みんなの一日は、もうちゃんと動き出しているように見えた。

わたしだけが布団の中に取り残されている。

そんな気がした。

「……起きようかな」

身体を少し動かす。

するとネネが、

「んにゃ」

と、ものすごく小さな声を出した。

そしてわたしの胸に顔を押しつける。

「え」

もう一度起きようとする。

今度は前脚が伸びてきて、服を軽く押さえた。

「いや、それ反則でしょ」

思わず笑った。

ネネは知らん顔で眠っている。

絶対にわざとだ。

だけど、そのぬくもりを感じていると、さっきまで胸の中にあった焦りが、ほんの少しだけ形をなくしていった。

シーツからは、昨日洗った柔軟剤のやさしい匂いがする。

ネネの身体に顔を近づけると、日に干した毛布みたいな匂いがした。

朝日で温められた布団。

頬に触れる柔らかな毛。

規則正しい、小さな寝息。

それだけ。

本当に、それだけなのに。

「……今日は、ゆっくりだね」

ネネの耳が、また少し動いた。

「おはよう」

今度は返事の代わりに、喉を鳴らす音が少し大きくなった。

わたしはスマートフォンを伏せて、枕元に置いた。

画面が消える。

それだけで部屋が急に静かになった気がした。

誰かが何をしているか、わからなくなる。

誰かがどれくらい頑張っているかも、わからない。

その代わりに、自分の呼吸がよく聞こえた。

すう。

はあ。

ネネの呼吸と、少しずつ重なっていく。

学校にいると、いつも時間がある。

一時間目まであと何分。

休み時間は十分。

昼休みは何分。

提出期限まであと何日。

テストまであと何週間。

部活が終わるまであと何時間。

気づけば、いつも何かに向かって数えている。

早く。

ちゃんと。

遅れないように。

間違えないように。

周りに追いつけるように。

たぶんわたしは、「頑張ること」が嫌いじゃない。

むしろ、好きなんだと思う。

できなかったことができるようになる瞬間は嬉しい。

悔しかった日は、次こそって思える。

負けたままで終わるのは、どうしても苦手だ。

だからこそ、ときどきわからなくなる。

立ち止まることと、諦めることの違いが。

休むことと、逃げることの違いが。

昨日だってそうだった。

小さな失敗を、寝る直前まで思い返していた。

あのとき、もっと上手く言えたんじゃないか。

あそこは違うやり方があったんじゃないか。

誰も気にしていないようなことを、自分だけが何度も拾い上げていた。

「もっとちゃんとしなきゃ」

口からこぼれた声は、自分で思っていたより弱かった。

ネネが目を開けた。

薄い瞳が、眠そうにわたしを見る。

数秒だけ見つめ合って、

「……なに」

ネネは、ふいっと顔をそらした。

そしてまた、わたしの胸の上に顎を乗せる。

慰めてくれるわけでもない。

励ましてくれるわけでもない。

ただ、そこにいる。

その無責任なくらい静かな態度に、わたしは少し救われた。

人間はたぶん、意味をつけすぎる。

頑張った日に意味をつけて。

失敗した日に意味をつけて。

何もできなかった日には、「無駄だった」なんて名前までつける。

だけどネネにとっては、晴れた朝に暖かい場所で眠ることも、きっと立派な一日の一部なのだ。

食べる。

眠る。

伸びをする。

窓の外を見る。

撫でてほしくなったら近づいてくる。

嫌になったら離れていく。

なんだか、とても潔い。

わたしはネネの頭を撫でながら思った。

「何もしない時間は、人生からこぼれた時間じゃない。」

むしろ、ずっと急いでいるときには見えなかったものを、拾い直す時間なのかもしれない。

カーテンが風を含んで、ふわりと膨らんだ。

朝の光が動く。

ネネの白い背中を滑り、わたしの指先まで届く。

温かい。

夏の終わりに近い朝の光には、少しだけ透明な匂いがする。

窓の外から吹き込む風も、昨日までよりほんの少し涼しい。

季節は、誰かが急がせなくても進んでいく。

わたしが布団の中にいても。

課題をしていても。

失敗して落ち込んでいても。

笑っていても。

ちゃんと進んでいく。

だったら、少しくらい自分の歩幅を緩めたところで、世界から置いていかれたりはしないのかもしれない。

「今日は……何もしない日にしようかな」

言ってから、少し罪悪感が湧く。

すぐに訂正する。

「いや、何もしないって決めるのも、予定だから」

ネネが尻尾の先を一度だけ動かした。

「賛成?」

無視。

「だよね」

笑う。

朝ごはんは、もう少しあとでいい。

顔を洗うのも、あとでいい。

宿題だって、午後からでいい。

今はただ、この白い生き物が自分から離れていくまで、ここにいよう。

それくらいのわがままなら、たぶん許される。

わたしは布団を少しだけ引き上げた。

ネネの身体まで包む。

すると彼女は薄く目を開け、不満そうにこちらを見たあと、仕方ないというようにまた目を閉じた。

「はいはい、ごめんなさい」

小さな額を指で撫でる。

ごろごろという音が返ってくる。

窓辺の葉が揺れている。

時計の秒針が進んでいる。

世界は止まっていない。

でも今だけは、それでいいと思えた。

止まっているように見える時間の中でも、心はちゃんと何かを取り戻している。

急いでいるときには気づけなかった、自分の呼吸。

誰かと比べているときには忘れていた、自分の速さ。

頑張るために休むんじゃなくて。

休むことそのものを、大切にしてもいい。

そんな当たり前のことを、十七歳のわたしはまだ練習している途中なのだ。

ネネの寝息を聞きながら、目を閉じる。

瞼の裏まで、朝の光が淡く透けていた。

今日はきっと、特別なことは何も起こらない。

だからいい。

たぶん人生には、忘れてしまうような朝が必要なのだ。

写真にも残さない。

誰にも話さない。

何かを達成したわけでもない。

ただ、好きな存在のぬくもりを抱えて、少しだけゆっくり息をした朝。

いつか忙しくなった未来のわたしが、理由もなく疲れた日に。

こんな朝があったことを、身体のどこかが覚えていてくれたらいい。

もう一度だけネネの背中を撫でる。

「もうちょっとだけ、こうしてよっか」

返事はない。

でも、白い前脚がわたしの胸にそっと触れた。

それで充分だった。

急がない日は、遅れている日じゃない。

自分の時間に、ちゃんと帰ってくる日なんだ。

カーテンの向こうで、朝が静かに明るくなっていく。

わたしは今日は、それを追いかけない。

追いつこうともしない。

ただここで、ネネと同じ速さで朝を迎える。

そんな一日の始まりも、きっと悪くない。

#青春小説

#日菜子の日常

#猫のいる暮らし

#何もしない贅沢

#急がない朝

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Last updated  2026/09/22 12:12:22 PM
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