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2005年06月28日
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テーマ: 砂の器(123)
逃れられない宿命に、真っ向から立ち向かう人々ということで、前回は「砂の器」を取り上げました。今回はギリシア古典劇「オイディプス王」です★


ソフォクレス(紀元前496年頃~紀元前406年)作「オイディプス王」


物語はギリシアの テーバイ という場所から始まります。
テーバイの王ライオスは、 「わが子に殺される」という予言 を恐れて、誕生したばかりの赤ちゃんを羊飼いに命じて山に捨てさせます。しかし羊飼いはこの子を見殺しにするのもしのびなく、めぐりめぐってコリントス王夫妻のもとへ預けられることになりました。
赤ん坊は コリントス王夫妻の実の子 として育てられます。名は オイディプス(腫れ足) 。赤ん坊の時分から、くるぶしのあたりが腫れ上がっていたので、こう名付けられました。
成長したオイディプスはある日、父と母が実の両親ではないといううわさを聞きます。それを確かめに神殿におもむくと、さらに過酷な予言が彼を待ち受けていました。神アポロンは冷徹にこう宣言したのです。

「おまえは父を殺し、母と交わるだろう」


途中、道が三叉路になっているところで、オイディプスは老人に出くわします。道を譲る譲らないと言い争いになっているうち(う~ん、どっちも大人気ない…)、頭に血が上った オイディプスは老人を殺害 してしまいます。まさに短絡的殺人ですね。ワイドショーとかで相当たたかれそう。

オイディプスはその後もてくてくと進んで、ついにテーバイにやって来ました。テーバイはその頃、 ナゾナゾ大好き怪物・スフィンクスによって苦しめられて いましたが(このときスフィンクスがもちかけていた謎というのが、有名な、 「あるときは二本足、あるときは四本足、またまたあるときは三本足、でも声は一つの生き物はな~んだ?」 というヤツです。正解は最後で♪)、みごとオイディプスによって撃退され、その手柄を認められて 未亡人だったテーバイ王妃と結婚する ことになりました。

オイディプスは今や、 おしもおされぬテーバイ王 です。愛する妻との間にも4人の子どもが生まれました。威厳があり、善政をしき、多くの民の尊敬を集めています。 まさに人生絶好調!! ヨサコイダンスだろーとマツケンサンバだろーと、 何でも踊っちゃうね!! (なぜ…?)

……が、そんな花盛りのテーバイに 暗い影


きっかけは 悪疫の流行 でした。色々手を尽くすも猛威は一向におとろえません。困ったオイディプスは再びアポロンの神託をうかがいました。アポロンはこう告げます。

「このわざわいの原因は、 先王ライオスを殺した者が罰も受けず、のうのうとこの国で暮らしていること から発している。その者を捕まえて国外追放すればこのわざわいは収まるであろう」

あー、もうオイディプス、 これ以上足を突っ込んだら危険
しかし名君たるオイディプスは、まさか 自分が張本人 だとは思いもよりません。今こうしてテーバイ王におさまっているが、先王はわたしの父も同然である、なんとしても犯人を捕らえてみせよう!とますます気負いだってしまいます。
そこで連れてこられたのが盲目の予言者でした(何でもかんでも予言や神託に頼っちゃうのね…まあ仕方ないですけど^ ^;)。予言者は犯人を、つまり オイディプスが何者であるかを、そして彼の犯した罪の大きさ を知っています。だからこそかたく口を閉ざすのです。

「ああ、知るとは何と恐ろしいことだろう」

世の中には知らない方がいいこともあるのだ…という皮肉な真実を、見ている私たちにも突きつける、まさに息詰まる瞬間です。
真相をきびしく問い詰めるオイディプス。王としての責務ももちろんあったと思いますが、「自分だけは絶対に違う」「自分は正しい」というおごりがあった事も否めません。
結局予言者は口を割らず、その代わり何も知らない妻からオイディプスは先王の死の様子を聞かされます。

神託なんてあてになりませんわ 。なぜって、あのひとは実の子に殺されると告げられましたけど、子どもはとっくに死んでしまい、 あのひと自身は三叉路で殺されました のよ。

オイディプスの顔色が一変します。まさか……まさか、 あの老人がライオス王その人 でなかったか。万が一そうだとしたら、この妻は、わたしの母親にあたるのか?!


暗い予兆にふるえながらも、なお真相を求めようとするオイディプス。飛び込んでくる風評に一喜一憂しながらも、ついには恐るべき事実をつかんでしまうのです。
それは、 すべてが予言どおりに成就した 瞬間でした。
殺してはいけない人を殺し、愛してはいけない人を愛した自分は、目が見えていながら何も知っていなかった。彼はこう叫ぶと妻の衣のピンを引き抜き、 何度も何度も自分の眼を突き刺します 。盲目となることで、 自分の過酷な運命を今度こそ直視 しようとしたのです。
こうして、テーバイの良き王だったオイディプスは、一転してもっとも唾棄すべき犯罪者として国を追われることになりました。……


かなり長くなりましたが、物語の大筋になります。
どんなにあがいても宿命から逃れられない……というのは「砂の器」と似ているのですが、非常に興味深いのは、これほどの大罪を犯しながらも オイディプスが生き延びる道を選択した ことです( 妻であり、母であった女性は自殺 しています)。
そして自分自身の手でみずからを罰した(眼をつぶした)ことで、ささやかではありますが、 無情な宿命=神々に反抗してみせた ……という風にも思えるのです。さんざん宿命にもてあそばれたが、これもまた自分の人生である、後始末ぐらい自分の手でつけてみせる…!という彼の意地が感じられるんですね。


「砂の器」の主人公は、その後どのような道を選択するのでしょうか?オイディプス王を見ていくと、そこにとっても興味が湧いてきます。
およそ2600年というときを越えて、作品同士がつながり合う面白さ、そして神秘……だから歴史はやめられないのかな??


次回は久々に、落書きくまくま参上かも。ではまた♪


追記1:スフィンクスの謎の答え「人間」
小さいときは四本足(はいはい)、成長するにしたがって二足歩行、そして晩年はもう一つの足=杖をついて歩くので、三本足になります。

追記2:今回の記事はこちらをもとに書かせていただきました。入門編としてベストだと思います。

丹羽隆子『はじめてのギリシア悲劇』 講談社現代文庫 1998年









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最終更新日  2005年07月05日 19時58分55秒
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