グランマの手料理レシピ

2023年02月09日
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カテゴリ: スープ&鍋物
​ ​豚肉に片栗粉をつけ、大根おろしを汁ごと使った椀物です。
だし汁にとろみがつくと、飲みやすく、冷めにくいです。

​ ​豚肉と大根のみぞれ汁 ​​


豚薄切り肉  50g
大根     200g
酒      大さじ1
片栗粉    小さじ1
ねぎ     4cm
ゆず     少々
三つ葉    少々

【合わせ調味料】出汁    カップ1
        酒     大さじ1
        塩     小さじ1/4
        薄口醤油  少々

1.豚肉は細切りにし、酒をもみ込み、片栗粉を振る。

2.ねぎはせん切り、大根はすりおろす。

3.【合わせ調味料】をひと煮立ちさせ、火をとめて酒、塩を加え、
  豚肉を加えてほぐし、おろした大根を加えて煮立てる。

4.アクを取ってねぎを加え、薄口醤油で味を整える。

5.器に注ぎ、ゆず、三つ葉を加える。

​※日本料理では、汁物も煮物も”椀物”と呼んでいます。 ​



ブログ連載 長編時代小説 ​​ 密かごと ​​

第3章 板前たち

​2.真吉と清蔵親方​

「真吉さん!」
長屋に入る路地で後ろから呼び止められた。
「ああ、お幾さん!」
湯島天神下同朋町の同じ長屋に住む左官職人の女房だった。
「戻ってきたのね」
「へえ、親方の様子がちょっと気になって」
「一時はどうなるかと思ったけど、いまは親方さん、落ち着いているわよ」
お幾は、清蔵親方が井原屋で倒れ、長屋に運ばれてくるまでの様子を話してくれた。

「仕事を終えた親方さんは帰ろうとして、ふらふらと倒れて」
「ふらふらっと?」
「ええ、腰が抜けたように、それで医者を呼んだそうよ」
医者は動かさない方がよいというので、その夜は井原屋で寝て、翌朝、戸板に乗せられて店の者たちに運ばれてきたという。
お幾は親方の床を敷き、それから世話をしてくれていた。
「お幾さんには、なにやかやと、お世話をかけちまって」
「なに言ってるの、水臭い!」
お幾は娘二人が片付き、いまは亭主と二人暮らしだった。
「いまは、鉄治さんという人が付き添ってますよ」
「鉄治が来ているんですかい」
鉄治は、真吉のあとに親方の脇板をつとめている後輩だった。
お幾の話が長引く前に、真吉は礼を言って別れた。

親方の家の引き戸を開けると、鉄治が土間の上がり框に座っていた。
「親方の具合は?」
「いまは眠ってるから」
鉄治が小声で答えた。
親方は壁ぎわに布団を寄せて寝ている。真吉がいた頃と同じで、親方の寝る場所はいつも壁ぎわと決まっていた。
「医者は、ていしたことはねえと」
「それはよかった!」
「ただ・・・・」
「ただ、どうしたんだ?」
「少し気弱になっちまって」
「親方が?」
真吉は、鉄治の腕をつかむと外に連れ出す。

「親方が弱気になったって、どういうことだ?」
「手足に痺れが少しあるようなんだ」
「痺れが?」
「医者は、たぶん一時的なものだから、養生すれば治るだろうとも言ってくれた」
「じゃあ、心配することはねえじゃねえか」
「そうなんですが、親方は庖丁が握れなくなるんじゃねえかと気弱に・・・」
「そうだったのか」
「真吉兄いの顔を見れば、親方も元気になりますよ」
「鉄治、これから店が忙しくなる頃なんだろう?」
「へえ、そうなんで、帰らせてもらっても・・・」
「ああ、ご苦労だったな」
真吉は親方の看病をするつもりできたのだ。
「また、明日も来ますから」
「無理しなくていいんだぞ」
「いえ、親方の相談を皆ですることになってるんで」
親方から仕事の手ほどきを受けた子飼いの板前たちが集まることになっていた。

「定次兄いも見えるのか?」
定次は子飼いのなかでも一番の古手だった。
「定次兄いが、皆に言葉を掛けてくれやした」
親方にはしばらく休んでもらうことにし、その間、親方の暮らし向きをどうするかを皆で話し合うことになっている。
「金だったら用意してきたから」
真吉は梅乃井から給金の前借りをした金は、親方のために使うつもりだった。
「真吉兄いだけに、出させるわけにはいきあせんです」
明日の五つ時(午前八時)に、親方の見舞いを兼ねて皆が来ることになっていると言って、鉄治は井原屋へ戻っていった。

真吉が戻ると親方は目を覚ましたところだった。
「来たのか?」
親方は無愛想な顔で真吉を見た。
「ご気分はどうですかい?」
「てえしたことはねえ!」
「痛むところは、ありませんか?」
「どこも痛かねえよ」
「よかった!」
「よかぁねえ!」
「やっぱり、どこか痛むんですかい」
「木更津からわざわざ戻って来るほどのことじゃねえ!」
親方は喋ることに不自由はないようだ。
「心配(しんぺえ)だったもんで」
真吉が安堵の表情を浮かべると、
「そんなことより、店の方は大丈夫(でえじょうぶ)か?」
親方は真吉の仕事のことを心配している。
「休みを頂戴してきやしたから」
「新入り早々で休むのは、よくねえぞ」
「へえ、わかっておりやす」
「わかったら、とっとと、帰(けえ)れ!」
真吉がにやにやしていると、
「何がおかいしい!」
「お元気で、安心しやした」
「何でえ、その面は餓鬼の頃とそっくりだぞ!」
真吉の子どもの頃を思い出したのか、親方の表情が柔和になる。
憎まれ口を叩いても真吉が来たのはうれしいようだ。

「ごめんなさいよ!」
お幾さんが戸を開けて入ってきた。
「真吉さん、よかったら、これ、食べておくれよ!」
焼いた鰺の干物と、漬物売りから買ったという沢庵(たくわん)を持ってきてくれた。
「頂戴します!」
真吉は受け取ると、早速、飯を炊く用意する。
親方が買い置きしてあった茄子を見つけ、茶せん(抹茶用の道具)煮にすることにした。
茄子のヘタを残して、茄子の表面に包丁で縦に何本も切れ目を入れ、茶せんのようにして
から煮るのだ。

飯が炊き上がると真吉は「飯にしやしょう」と親方に声を掛ける。
親方は起き上がって布団から出ようとした。
「無理しねえで、このまま布団に座っていてくだせえ」
真吉は釜の飯を碗によそい、鯵の干物、沢庵、茄子の煮付けを箱膳に載せて持ってきた。
「昔と逆だな・・・」
親方は真吉の子どもの頃を思い出していた。
真吉は、いつも親方がよそってくれる飯を両手で受け取り、待ちきれぬように食べていた。

「親方、これをきっかけに、体を休ませて」
「そうはいかねえよ」
「いや、そうしてもらわねえと」
「親方は働きすぎですよ」
「おい、いつからそんなことを・・・」
「親方にはまだ恩返しをしてねえんで」
「恩返しだと?」
「親方に育ててもらったご恩です」
「聞いたふうなことをぬかすじゃねえ、そんなことを当てにして、お前(めえ)を育てたんじゃねえぞ」
親方は憮然とした表情で真吉を睨む。
真吉もわかっていますというように大きく頷く。親方の気持ちがよくわかっているだけに、親方が自分を必要としているときには力になろうと思っていたのだ。(つづく)

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Last updated  2023年02月09日 08時50分05秒
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