グランマの手料理レシピ

2023年03月09日
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カテゴリ: 缶詰料理
いわしの蒲焼き缶詰は、生のいわしに比べて栄養価が高いといわれています。
DHAは1.6倍、EPAは2.3倍もあり、骨が含まれているのでカルシウムもあります。

いわしの蒲焼き缶を使って「蒲焼き丼」をつくりました。
1缶を2人でシェアしたので、ブロッコリーと茹で玉子を添えました。

​​ いわし缶の蒲焼き丼 ​​


ご飯         2杯分
いわし蒲焼き缶    1缶
もみ海苔       全形の1/2
ブロッコリー     適量
茹で玉子       1個
粉さんしょう     少々


1.卵(2個)を茹でて、マヨネーズ(大さじ1)と醤油(小さじ1)に1日ほど漬けておく。
今回使う茹で玉子は1個だけ。

2.ブロッコリーは塩水を振って、レンジで2分ほど加熱する。

3.フライパンに、いわし缶を汁ごと入れて温め、汁だけをご飯にかける。

4.ご飯の上に海苔を敷き、いわしを載せ、茹で玉子とブロッコリーを添え、粉さんしょうを振る。

5.鰻丼を真似て、奈良漬けを添える。

​ ※江戸時代より奈良漬は鰻の脂っこさを抑えると、鰻丼に付け合わせていたそうです。 ​



密かごと​​ ​
​最終章 柘植の櫛​

​さちの告白​

人はなんらかの過去を背負って生きている。避けられないことではあるが、いつまでも重荷にするのは止めようと、さちは封印してきた自分の過去に決着をつけることにした。
佳乃は進之助の前では何も言わなかったが、手箱の中の櫛についてきっと聞いてくるに違いない。結婚したいまの佳乃ならば、さちの言葉にも耳を傾けてくれるだろう。
さちは袱紗に包んだ櫛を懐に収めると、湯から上がったばかりの佳乃を呼び止めた。
「お前が気にしていたあの櫛だけど」
「おばばさん、やっぱり、何かあるのね」
櫛が母寿美のものではなく、祖母のものであるらしいことは佳乃も薄々感じていた。
「あの櫛は然(さ)る、お方から・・・」
「然るお方?」
「ここには御船手衆の方がよくお見えになることは、お前も知っているだろう。そのお方は御船手同心で菊地彦十郎様というお方で」
「えっ、先日、お見えになった菊地弥太郞さんとも関係が?」
佳乃は菊地と聞いてすぐにぴんときた。あのときの祖母の様子が何か意味ありげだったからだ
「弥太郞様は、その方のご子息だったんだよ」
さちは過去の記憶をたぐり寄せるように、菊地彦十郎との出会いを語りはじめた。

  *    *    *    *

菊地彦十郎は定湊廻りのお役目の後、木更津の船持たちに頼まれて、子どもたちに向井流の泳ぎを指南していた。
向井流は御船手泳ぎともいわれ、海の侍たちのために考案された泳法だった。御船手頭向井将監によって創設され、御船手衆に代々引き継がれている。
菊地彦十郎は立派な体格の持ち主で、向井流のお泳ぎの名手だった。

その頃、さちの亭主作治は酒と女に明け暮れ、江戸へ行って戻らない日が続いていた。
それもまるっきり行ったきりではなく、ときどき思い出したように帰ってくるので、夫婦の体面はなんとか保たれていた。
二人の間には子ができず、さちが子を産める時期も限られてきた。子はどうしてもほしい。このままでは跡継ぎがいない。満たされぬ心は行き場を失ない、さちは焦っていた。

菊地彦十郎が、お役目でまた訪れたのはそんなときだった。
木更津船の廻船状況を調べた後、この日も褌姿で現れた菊地彦十郎は、子どもたちに向井流の泳法を指南した。
船から落ちたときなどに役立つ『立泳(たちおよぎ)』と基本の『平水(へいすい)』を子どもたちに教えた。
それを遠巻きに見ていた木更津船の水主(かこ)たちに、今度は実物の船を使って舷に飛びつく『諸抜手(もろぬきて)の跳飛術』を披露した。
水主たちから歓声の声が上がると、菊地彦十郎は実際に役立つ『平泳ぎ』、長距離をゆっくり泳ぐ『平掻(ひらかき)』、泳力を養成する『抜手』、流水渡りなどに用いる『肩指(かたさし)』など、向井流の技を次々に見せた。

菊地彦十郎は精悍で気迫に溢れ、風貌はまさに海の侍だった。折に触れて見せる笑顔には懐かしさがあり、話しぶりの優しさは人を魅了した。
その夜の梅乃井は、御船手同心の菊地彦十郎が主客の宴席だけだった。
二階の座敷に集まった船持たちは、向井流泳法の奥義を披露してくれた菊地彦十郎に感謝し、代わる代わるが酌をした。
菊地彦十郎は酌責めに合い、昼間の指南で体力を使ったせいか、酒のまわりが早く、すっかり酩酊し、都々逸を口ずさんだ。

嫌いなお方の親切よりも
  好きなお方の無理がよい

皆が称賛の拍手を送ると、菊地彦十郎は陽気になり、さちにも酒を勧める。
「たまには、一緒に飲もうじゃないか」
さちの腕をつかむと、自分の杯を握らせて酌をした。
「お酔い遊ばされたようでございますので、しばらく、ご休憩なさていかれた方がよろしゅうございますね」
さちがさりげなく言うと、居合わせた船持たちもその方がよいと勧め、菊地彦十郎は酔いを覚ましてから宿泊している船宿に戻ることになった。
さちは、そっと席を立つと別室に床の用意をした。
菊地彦十郎は船持の一人に支えられ、さちの敷いた床に入ると、船持たちは帰っていった。

さちは胸の動悸を押さえようと板場に向かった。
湯飲み茶碗に水を入れていると、
「女将さん、何かまだすることはございますか?」
板長の佐助に声を掛けられた。
「いえ、何もありません。皆さん、お帰りになりましたから、もう休んでください」
「それじゃ、お休みなさい」
佐助は寝泊まりしている奥の小部屋に引き上げて行った。
さちは水をひと息に飲み干し、茶碗を洗うとまた水を入れ、盆に載せて二階へ上がった。

菊地彦十郎は天井を向いて寝ていた。
月明かりに浮かぶ顔は、眠っているのか起きているのかわからない。さちは布団から少し離れたところに座わるが、水を入れた茶碗を持つ手が震えている。
菊地彦十郎はまだ天井を向いたままだった。
根くらべのような沈黙が続き、菊地彦十郎が突然、寝返りを打つ。眠ってはいなかった。さちが目の前に座っているのは気づいていた。
驚いた様子もなく、さちの持っている茶碗に手を伸ばし、茶碗を受け取ると水を飲む。男の喉仏(のどぼとけ)が波打っているのを、さちは固唾(かたず)をのんで見守っていた。
菊地彦十郎は酔った振りをしていたのだ。
さちはゆっくりと浴衣の帯と腰紐をほどき、体を這わせるようにして菊地彦十郎のもとに擦り寄った。
「お許し下さいませ」
さちは囁くと自らの体を菊地彦十郎の体の上に重ねていく。
〈どうか、新しい命をお授けください〉
さちが心のなかで呟くと、菊地彦十郎は優しく受け止めてくれた。忘れかけていた男との交わりは密かなるものへと封じこめられていくのだった。

  *    *    *    *    

「菊地彦十郎様に運をまかせたのだよ」
さちは話し終えると、絞り出すような声で言った。
佳乃は言葉を失い、呆然としている。
「寿美は御船手同心の菊地彦十郎様の子なんだよ」
「えっ!」
佳乃が驚きの声を上げた。
「それじゃ、おっかさんも、あたしも、御船手のお侍さんが父親なの?」
「そういうことだよ」
さちは自分の胸にだけ収めてきた『密かごと』を初めて佳乃に打ち明けた。
菊地彦十郎とは一度だけの関係だった。
さちは弁天様に願を懸けて祈り続け、身ごもっていることがわかったときは、作治の娘として産み、作治の娘として育てることにした。それは偽り人生の始まりで、重荷を背負うこととなった。

「おじじさんは、あたしの、おっかさんが自分の子でないことは」
「知っていたかもしれないし、知らなかったかもしれない」
作治は薄々感じていて、さちを困らせることで自分の気持に折り合いをつけていたのかもしれないと、さちは後年、思うようになった。
佳乃は、祖母がそんなことまでして母を産んだことに得心がいかなかった。
「人は生きていると覚悟をしなければならいときがあるんだよ」
「それは、おばばさんの言いわけ?」
「あのときの、おばばの覚悟がなかったら、寿美もお前も、この世にいなかったことになるんだよ」
そんなふうに言われると佳乃も返す言葉がなかった。

「おっかさんは実の父親のことを知っていたの?」
「いや、話していない」
「どうして話してやらなかったの」
「もっと早くに、話してやればよかった。寿美を傷つけるのではないかと、怖くて話せなかったんだよ」
寿美は生まれたときから暗い宿命を背負わされていた。父親の作治からは冷淡に扱われ、忙しい母親からは愛されているという実感がなかったので、一緒になれる当てのない男の子でもよいから産みたかったのかもしれない。

「おっかさんは、ひょっとすると、おとっさんが実の父親でないことを知っていたんじゃない?」
「どうして?」
「あたしが父無し子だったことを知っていたように、おっかさんも知っていたのかもしれない」
「まさか!」
さちはそう言うと懐に手を入れ、袱紗に包んだ櫛を握りしめた。
椿を彫ったこの柘植の櫛が、御船手同心の菊地彦十郎から送られてきたのは、あの夜からひと月後だった。文が添えられ、平安の時代には櫛を贈るとまた再会できるといわれていたと書かれていた。
だが、菊地彦十郎との再会は叶わなかった。さちは贈られた椿が彫られた柘植の櫛を一度も髪に挿したことがない。どうしても挿すことができなかったのだ。(了)





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Last updated  2023年03月09日 12時46分08秒


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