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七詩さんComments
その翌日から、同じ獄舎に繋がれている少年連は、朝眼が醒めると直ぐに、その方向に向って礼拝した。「先生。お早よう御座います」 と口の中で云っていたが、そのうちに武部先生が一切の罪を負って斬られさっしゃる……俺達はお蔭で助かる……という事実がハッキリとわかると、さすがに眠る者が一人もなくなった。 (中略)
そのうちに四五人の人影が固まって向うの獄舎から出て来て広場の真中あたりまで来たと思うと、その中でも武部先生らしい一人がピッタリと立佇まって四方を見まわした。少年連のいる獄舎の位置を心探しにしている様子であったが、忽ち雄獅子の吼えるような颯爽たる声で、天も響けと絶叫した。
「行くぞオォ――オオオ――」
健児社の健児十六名。思わず獄舎の床にひれふして顔を上げ得なかった。オイオイ声を立てて泣き出した者もあったという。
「あれが先生の声の聞き納めじゃったが、今でも骨の髄まで泌み透っていて、忘れようにも忘れられん。あの声は今日までわしのはらわたの腐り止めになっている。 (中略)
あの月と霜に冴え渡った爽快な声を思い出すと、はらわたがグルグルグルとデングリ返って来る。何もかもいらん 『行くぞオ』 という気持ちになる。貧乏が愉快になって来る。先生……先生と思うてなあ……」 と云ううちに奈良原翁の巨大な両眼から、熱い涙がポタポタとこぼれ落ちるのを筆者は見た。
久しぶりの休日であった 2008.03.14 コメント(2)
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