当時、私は26才でフランスに写真を撮りに出掛けた。と言っても、フランスに行ったからって何んになるかなんてまったく考えていなくって、勤めていた印刷会社を退職し、友達の伝を使って神戸にあった広告制作会社のカメラマンとして勤め始めた(と言ってもアルバイトだけど)。印刷会社の退職金と何ヶ月かのアルバイトで貯めたお金を持って、あても伝もないパリに出掛けて行ったけど、パンが嫌い。特にフランスパンが。チーズが嫌い。乳製品が大嫌い。私にとって最初の2週間程は食べる物がなくて困り果てたものだ。でも空腹は何物にも勝る調味料で、滞在3週間目には、チーズやハムを挟んだバゲットを毎日カジっていた。今では山羊のチーズなんて大好物だし、パンは全て好きだし、人間は環境でいかにでも変われるものだと思っている。で、今日も阪神御影にあるカルディでCamembert Campagne de Franceを買って来た。開高 健氏のエッセイに頻繁に出て来たフランスの諺に「パンのないチーズなんて片目の美人だ」と言うのがあるけど、食事制限を自らに課している私としては美味しいバゲットと一緒に食したいのをグッと我慢して、チーズだけを頬張っている。さらに悲劇だと思うのはアルコールがダメでワインもダメ。食べる事は大好きなのに大病を患った私は食べる事も制限している。ある意味地獄のような生活かも知れないが、今まで散々好き勝手に食べて来たから、おまけのように貰った余生だから、健康に過ごす為には我慢しなくっちゃと思っている。