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2009.12.17
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カテゴリ: 風の詩
皆さん覚えていますか。熊野灘熊野市沖でフェリーが転覆し、御浜市御浜海岸近くに流れ着き、船腹を見せて横たわっているフェリー「あかつき」転覆を。


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すっかり忘れられたように日時は過ぎて、師走の慌ただしさの中で、話題に上ることもなくなったが、転覆フェリーは変わらぬ姿で、横たわっています。




一時は堤防の上いっぱいに犇めき合ったこともある見物客もいなくなり、御浜海岸の手の届きそうな近くに横たわるフリーの船体は更に大きくなった感じさえします。



42号緯線を車で走っていると、目に飛び込んでくる巨大なフェリーの船体は海岸に船首を向けて横たわっている。朝日を受けて、時々煌めく船体には生気さえ感じさせる。


未だに撤去の方法も決まってない海岸近くに横たわるフェリーが懐かしくなり、久々の転覆フェリー見学だ。見学客は若い母親と息子の親子と、私だけだ。

「ありあけだよフェリーの名前は」と、5.6歳の少年が言った。
「そうよ、アヒルのあに、りすのりに、アシカのあ、けはケーキのけ」と若い母親が歌いながら答えた。
「違うよ、あは朝顔のあ。りはリンドウのり、あはあゆのあ。けは毛虫のけだ。ねえまま、あの船の色赤青白だ。国旗の色だ」と少年は言う。5.6歳の少年の国旗の言葉に、初老の紳士は視線を送り、少年の話を待った。
「まま、何処の国の国旗が知っている。赤青白だよ」

「ヒントだよ。大きな国だよ」と少年が言う。5.6歳の少年のヒントに驚く初老の紳士は、転覆フェリーの色を確かめる。確かめるまでもなく、フェリーの船体は赤青白と分かっているが、喫水部分は赤で、その上が青いろで何か描かれているかのようなデザインで、その上が白だ。赤と白の間の青い部分は少ないが、変化に富んだデザインで逆に目立つようだ。
「フランスは縦で、青白赤だよ」と少年は言う。
「ママは分かりません。教えてください。ショウタさん」と母親は歌うように言った。
「ロシアだよ、赤青白の国旗はロシヤだよ。それにね、上が白でしたが赤で、青が三角で真ん中に入ろうとしていているのがチェコだよ」と少年は堤防に模様を書いて、母親に見せている。

「凄いネ君は、天才だね。そうか、ロシアの国旗か」と私は感心して何度も頷き、何度も少年を褒め称えた。
「小父さん船好きなの」と少年は訊いた。
「嫌いじゃないけど、好きと言うほどでもないかな」と私は男は答えた。
「じゃフェリーは好き」
「嫌いじゃないけど、好き言うほどではない」と同じ調子で答え「ありあけは九州にあらず熊野灘」と呟き、「さよなら、天才少年」と手を上げて踵を返した。「ありあけは九州にあらず熊野灘」と少年は思うが鸚鵡返しに言った。






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最終更新日  2009.12.17 18:59:44
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