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2018.04.12
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 ひろし君のクラスでは、担任の提案で誰かが創ったポストを教室内において、郵便ゴッコをしようと言うことになった。では誰がポストを創るのか、「創りたい人は手を挙げなさい」と担任が言うと、まず真っ先に佐川君が手を挙げた。 彼の父親は大工の棟梁をしているので一番の適任者であることは誰もが認めるところであった。ただ50人以上いるクラスで、たったひとつのポストというのでは淋し過ぎる。

「ではもう一人いないかな?」担任が促すと、よせばいいのにひろし君が手を挙げてしまった。そもそもひろし君は不器用で、プラモデルの戦車や鉄人28号も動かないままゴミ箱行きになった経緯がある。出来もしないくせに、すぐシャシャリ出るのがひろし君の悪い癖だった。 でも「チャレンジ精神があって良いじゃないか」と褒めてくれる人もいるかもしれない。だがひろし君はいつもいい加減で、糊付け・はんだ付け・バリ取りなどの細かい作業を適当に終わらせてしまうため、なかなか上手に仕上がらないのだ。さらに気が短くて、前述の鉄人28号のようになんとか完成しても、動かなかったりすると大声を挙げて叩き壊してしまうのである。

 安易に挙手してしまったひろし君。家に帰ったが、どうやればポストを創れるのか分からない。そこで父の紘一郎に泣きついたが、店の仕事が忙しくてそんな暇はないと断られてしまった。 困ったひろし君は、物置の隅に置いてあった汚れたミカン箱を解体して、なんとかポストらしきものを創り、クレパスで赤く塗りつぶした。だがミカン箱なので、かなり大きく節だらけでみすぼらしい。おまけにいい加減に塗りつぶしたクレパスの赤色が毒々しく汚らしくて堪らないのだった。

 さて翌日教室に入ると、佐川君の創った美しいポストの前にクラスメイトたちが集まっていた。そのポストは無着色だが、美しく高価な白木を使いまるで売り物のような完成度を誇っているではないか。それを見た途端、ひろし君は自分が創ったポストを、どこか遠くに投げ捨ててしまいたくなった。
 だがひろし君がモジモジしているうちに、ひろし君の汚いポストは意地悪いクラスメイトに見つかってしまったのである。
「なんだこの汚くて大きなポストは!!、ハッハハハハハ」ひろし君の顔は真っ赤になり、穴があったら入りたい。それでも見つかってしまった以上、担任にこのポストを提出して、教室の隅に置くことになったのである。

 さあポストが用意されたので、担任の指示通りに『郵便ゴッコ』が始まってしまった。誰でも好きな人宛に手紙を書いて、ひろし君と佐川君の創ったポストのどちらかに投函するのである。そしてひろし君のポストに投函された手紙は、ひろし君が郵便集配人と配達人の役割を担うことになり、同じく佐川君のポストに投函されたものは、佐川君が同様の役割を担うというルールであった。

 クラスメイト達は、一斉に手紙を書きゾロゾロとポストのある教室の左隅に向かいはじめた。全員が手紙を投函したあと、ひろし君は自分が創ったポストを開いてびっくりした。中には四通の手紙しか入っていなかったのだ。そのうちの一通はひろし君のもので、あとの三通は親友の三山君と小場君、それにマドンナ・野添小百合のものだけだったのである。
 なんて不人気なのだろうか!。それに反して佐川君のポストは大人気で、投函口から手紙がはみ出しているばかりか、入りきれなかった手紙がポストの屋根に何通も重ねられているではないか。
 少なくとも佐川君のポストに入らなかったのなら、ひろし君のポストに入れてやればいいものを、子供たちは正直と言うか残酷なのだ。ただ逆に言えば、本当は美しい佐川君のポストに投函したかっただろうに、あえて汚いひろし君のポストに入れてくれた三人の気持ちは嬉しかった。

 こんな状況が三日間続いたのだが、今度は石井君というクラスメイトが、悪戯に画用紙を折って千代紙を貼り付けた小さくて可愛いポストを創って教室の壁に飾ったのである。なんとこれが大好評で、すぐに手紙で満杯になってしまったのだ。それまで佐川君のポストに投函していたクラスメイトたちの半分近くが、石井君の創った紙のポストに移動してしまったのだから、さすがの佐川君もちょっとがっかりしたようである。子供たちの心は残酷なだけではなく、移ろいやすいものなのだ。

 さてこれでひろし君の汚いポストの存在意義は、完全に消失してしまった。だがひろし君は不思議と悲しくなかった、それどころかありがたかったのである。
 ひろし君はこのタイミングを利用し、昼休みに自分のポストをこっそり校舎の隅に運び、滅茶苦茶に叩き壊してしまったのだ。この日を境に、ひろし君のポストが教室から消えてしまったのだが、そのことに気付いた者は、誰ひとりいなかったようだ。なんとなんと、哀しきポストの運命であろうか・・・。

作:五林寺隆

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最終更新日  2018.04.13 20:53:51
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