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★★★★☆製作:1953年 日本 上映時間:135分 監督:小津安二郎 邦画の三大巨匠の一人、小津安二郎の代表作であり、戦後日本における家族関係の変貌を、穏やかな筆致でありながら深い余韻とともに描き出した、静かな不朽の名作である。 尾道で末娘と三人、慎ましく暮らす老夫婦・周吉ととみは、東京で暮らす子どもたちを訪ねるため久しぶりに上京する。はじめこそ歓迎されるものの、医者の長男・幸一も、美容院を営む長女・志げも、それぞれの生活に追われ、両親に十分な時間を割くことができない。そんな中、戦死した次男の妻・紀子だけが、仕事を休んでまで義理の両親を東京見物に連れ出し、変わらぬ優しさを示すのだった。 十分な相手をできない長男と長女の勧めで、熱海の安宿に泊まった老夫婦は、深夜まで続く団体客の騒ぎに眠れず、一泊で引き返すことになる。しかし忙しい子どもたちは、それを迷惑そうに受け止める。とみは紀子の狭いアパートに身を寄せ、周吉は旧友たちと夜通し酒を酌み交わすのだった。 やがて東京に居づらくなった二人は尾道へ戻る決心をするが、帰路の車中でとみが突然倒れてしまう。大阪に住む三男・敬三の家で一時回復したものの、実家に戻って間もなく危篤に陥る。 本作は、地方に暮らす老夫婦が東京を訪れ、変貌した都市とそこに生きる子どもたちの姿を目の当たりにし、数日の旅の中で人生の機微をしみじみと噛みしめる物語である。 特筆すべきは、米国映画『明日は来らず』に着想を得たとされながらも、原作小説を持たず、小津安二郎と野田高梧が共同で脚本を練り上げたオリジナル作品である点だ。また、とみの死後、通学路から“夫婦瓶”が消えていたり、石灯籠や鉄道風景がわずかに陰りを帯びたりと、映像による繊細な心理描写が随所に潜んでいる。こうした細部の積み重ねこそが、小津が巨匠と称される所以であろう。 葬儀の後、早々に東京へ戻る兄姉たちに不満を漏らす末娘・京子に対し、紀子は「子供って大きくなると、だんだん親から離れてゆくものではないかしら」と静かに諭す。京子が「私はそんなふうになりたくない、いやね世の中って」と返すと、紀子は「そう、嫌なことばかり……」とつぶやく。この短いやり取りに、家族という存在の普遍的な哀しみが凝縮されている。 それにしても、70年前の作品でありながら、家族の在り方や心の揺らぎが現代とほとんど変わらないことに驚かされる。戦争がその分岐点だったのかもしれない。また、日本文化に馴染みにくいとされる欧州で高く評価されている事実を思えば、家族の物語は国境を越えて響く普遍性を持つのだろう。 2012年には山田洋次監督が本作を現代に置き換えたオマージュ作品『東京家族』を発表している。物語としての面白さはあるものの、胸の奥に静かに沁みわたる感動は、やはり本作に軍配が上がる。とりわけ老夫婦を演じた笠智衆と東山千栄子に匹敵する俳優は、今なお見当たらない。評:蔵研人 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村
2026.06.28
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あの人とは高校時代の文通が始まりでした。太陽が眩しすぎると暗がりを好むようなひとで、いつもおどおどびくびくしていて人生に自信のもてないひとでした。野良犬がくれば、私の影に隠れて歩くようなひとでした。小説家になるんだと、弱弱しく宣言するや、仕事を止めて部屋に閉じこもってしまいました。 正直言えば、あたいはあなたの文才には疑問符だらけで、金銭的な問題もあって、すごい不安だったけど、淡い期待もすこしあって、<がんばってね!>などと煽てたりしたんです。 古本屋から、分厚い本を買ってきては、狭い部屋の隅に山積み、部屋の四隅に棚をつけて本棚にし、便所にも棚をつけて本を積んでいる。原稿用紙を束で、千枚以上も買ってきて、部屋いっぱいに、ちり紙で鼻をかんだように、散らかしていた。きっと、あなたはそんな風景が好きだったのね。 久濃 深也 (苦悩が深い、)なんて筆名のときもあったわね、どうしてなのかわからないけど、あたいはそんなあのひとが嫌いじゃなかった。 面白がっていたのかしら、青春の浅薄(あさはか)だったんだわ。でも、あたいにとってはかえがえのない消すことのできない歳月だった。幸せも不幸もなかったけどあたいの青春のすべてだったような気がする。 ……あなたは 突然あたいの前から消えた。何にも言わずにいなくなりました、思い切り泣きました、体を震わせて、えんえん死にたくなるほど泣きました。あなたがいなくなってから、もう40年も経つんです。みつこの青春の時はあの日で止まったままなんです。 あれから あたいも恋らしき経験もしたけど、それはあの人との恋とはまるで違う。打算、欲、明日、夢 、いろんなものが混ざっていて純白の恋とは縁遠いものだった。 笑わないで下さい、あたいは今でもあの時の真っ白な恋を心の隅っこに大切にしまったままなんです。今更、純白の恋を追いかけたってしょうがない、捨てられた青春に縋ってもしょうがないことだと諦めていました。 奇跡かしら、あの人と会えた夕暮れの時が降ってきました。夕焼けが、錆びたブランコを青春の血のような赤に染めていたました。 40年前、ふたりが同じ時間を過ごした思い出の校舎の前でした。あたいは廃墟と化した旧校舎の前に立つあの人の影に気づいたとき、時間が止まったような感覚に襲われた。 歳をとるのはお互いだけど、あのひとはあまりにも変わり果てていた。ボロボロのシャツを羽織り、ズボンはボロ切れのように垂れ下がり、破れかかった草履を引きずっていて、 頭髪は薄くなり、顔は老いと苦痛の皴にに歪んでいました。 でも、弱弱しくて、怯えたような歩き方はあの頃とおんなじ、暗い光を宿しているままのあの影は間違いなく40年前の面影を引きずったあの人だった。 あの人は佇んであたいをじっと見つめていた。その手には、色褪せた『人間失格』の文庫本が、彼の一部であるかのように握られていた。あたいだって変わっていた、短く切りそろえられた髪は白髪混じりで、喪失感だけがあたいを支えているように見えでしょう。 あたいもまた、胸に一冊の本を抱えていた。色褪せて黄ばんだ坂口安吾の「堕落論」でした。どちらからともも話しかけようとはしませんでした。内向的で、言葉下手のふたりは心の中身ををうまく伝えられずに喋り出せば傷つけてしまうだけだということを学んでいましたから。 夕日が刻一刻と沈んでいく中で、2人の影が、荒れ果てた地面に長く伸びていくのだけが見えました。 廃校になった図書室の隅で、ふたりは誰にも邪魔されず、黙々と本を読んでいました。それがふたりの付き合いでした。同じ空間に、自分と同じように社会の仕組みに馴染めない人間がいるという、その安らぎだけで十分でした。 あの人が重い口を開いた。彼の声は、長年使われていない古びた楽器のように掠れていました。「、、、、下駄できたんだね、みつこさん」 それは、なぜ今ここにいるのかとか、なぜあの時消えたのかという問いでも答えでもなかった。ただ、目の前にある、あのひとが知っているあたいへのぎこちない言及でした。 あたい、あのひとの草と土で汚れた足元を見つめました。「……あなたは草履ね、」 それだけの会話。しかし、その短い言葉の中に、40年間の孤独と、互いへの深い、しかし言葉にできない複雑な感情が凝縮されていたのです。 あの人は手に持った『人間失格』を強く握り直して、「……おれは、ずっと、逃げてばかりいた」 あのひとはそう言いました。それは、40年前の失踪に対する謝罪のようでもあり、その後の人生に対する独白のようでもありました。あたいは何も言えなかった。 ただ、少しだけ、彼の方へ近づいた。 あたいはあのひとは逃げていたけれど、あたいもあの日から一歩も前に進めず、ずっとこの廃校の記憶の中へ逃げ続けていたのです。 夕日が地平線に沈み、空は深い紫色に変わり、廃校の窓は、暗黒の口を開いています。ふたりはそれ以上何も話しませんでした。再会の約束も、別れの言葉も。 暗闇がふたりを包み込み景色の一部のようになるまで立ち尽くしていました。40年間の断絶も、廃校の前で、ぼろぼろ姿のふたりの沈黙によって、静かに許されたような気がしてきました。 ふたりの表情は相変わらず暗かったが、その奥底に、夕日の残像のような、静かな安らぎが灯り始めていたような気がします。~ピリピリピり、、、スマホが鳴った、ああっ、目が覚めた~「もしもし、、あたい、、、いい夢なんだか、悪夢なんだか,正夢なんかじゃないの、勝手夢だったんのよ、、、」邂逅は 虚しいものと 夕雲が 崩れ流れて 青春沈むあの頃に 確かにあった 純情を 校舎の影で ほじくり返しよみがえる はずもない おもいでの 瘡蓋(かさぶた)剥がし 夕陽が赤く作:深田みつこ&じぇみに君 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村
2026.06.25
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預かりし子の片濡るる走り梅雨アカシアの満開となるバス通り作:風香 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村
2026.06.21
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AIの真似できぬものひとの業新宿で熊が吠える日あと僅か平日の露天ではしゃぐ爺の群れ諸葛でも閉鎖するはずホルムズを作:五林寺隆 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村
2026.06.16
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死ぬ死ぬとのたまわってた爺さん、なにがめでたいのか、もろ手をあげて恍惚万歳、おけらになったか、お手上げなのか、それとも脳が痺れて法悦か、藻掻いたってしょうがねえか、諦め肝心なのか、爺さん万歳!千秋万々歳!!雲ながれ どこを彷徨う悔恨が これでいいんだと万歳万歳!得をした損したとかに 縛られて銭を捨てたか千秋万歳 !ほんとうか?嘘暴かれて痛罵され 棘刺さったまま万歳するか若葉萌え大きく育てと励まして いつか死ぬぞと万歳爺さん作:朽木一空 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村
2026.06.12
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窓開ける朝日の中をバス走る 皆の人生乗せてゆらゆら親友の病を知って胸痛む 明るく語る友の強さよ作:成風 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村
2026.06.07
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ゆるゆると目覚める朝の桜しべ白鵬がまたも連敗五月作:風香 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村
2026.06.03
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