ネット文芸館 木洩れ日の里

ネット文芸館 木洩れ日の里

PR

×

コメント新着

朽木一空と五林寺隆 @ Re:新宿に熊怖い(06/16) 笑左衛門さんへ 新宿、渋谷、池袋、銀座…
笑左衛門 @ 新宿に熊怖い ユニークな画像でびっくりしました。新宿…
イラン攻撃@ Re:時の家(03/05) イラン攻撃については、 0896240183 をど…
日差し@ Re:万作の花(02/22) 日差しの知りたいことは、0896244450 か…
聖書預言@ Re:置き爺(11/25) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

サイド自由欄

このサイトに掲載している「文章と絵手紙画像の著作権」は、当サイト管理人に帰属しています。従って、無断で転載することをお断りします。

2026.05.31
XML
カテゴリ: 名作鑑賞


★★★★
製作:1955年 日本 上映時間:128分 監督:久松静児

 どこかで聞いた覚えのある題名だと思っていたが、丘の上の家から小田急線が走るのを見下ろすあの風景……よくよく調べてみれば、やはり記憶の底に沈んでいた映画だった。

 子供の頃、僕は小田急線の梅ヶ丘に住んでいた。近所では時折映画のロケが行われ、ある日、駅裏の根津山(現・羽根木公園)で大掛かりな撮影が始まった。小高い丘一帯に野外セットの家々が建ち並び、まるで別世界のようだった。その作品こそ本作『月夜の傘』だったのである。
 後日、家族揃って下北沢のグリーン座(二番館)へ観に行った記憶はあるが、さすがに七十年も昔のことなので、物語の内容はほとんど覚えていない。ただ、スクリーンの向こうをガタゴトと走り抜ける小田急線の姿だけは、今も胸の奥に懐かしく灯っている。ただ駅はセットで、梅ヶ丘駅そのものではなかったのが少し残念だが、それもまた映画の魔法だろう。

 物語の中心となるのは、井戸端会議に集う四人の主婦たち。田中絹代、轟夕起子、新珠三千代、坪内美詠子と、今では懐かしい名が並ぶ。さらに宇野重吉、三島雅夫、伊藤雄之助、飯田蝶子といった芸達者が脇を固め、作品に確かな厚みを与えている。
 監督の久松静児は、森繁久彌や伴淳三郎、フランキー堺が主演した 駅前シリーズ で知られるが、女性映画の秀作も多く、戦後日本の家庭劇・人情劇を数多く手がけた。小津安二郎ほど形式化された美学ではないものの、庶民の暮らしを温かく見つめる視線には通じるものがある。

 本作に描かれる主婦たちは、洋裁で生計を立てる戦争未亡人を除けば皆専業主婦であり、子供は二、三人。戦後日本の典型的な家族像がそのまま息づいている。ただし、戦前のように父親の威光が絶対ではなくなり、子供たちにもプライバシーの感覚が芽生え、論理的な説明を求める新しい気風が漂い始めている。

 大きな事件は起こらず、悪人も登場しない。平和でのんびりした日常が淡々と綴られるだけのように見える。だが、飯田蝶子演じる住み込みの婆やが、東山千栄子の孤独な老女に寄せる静かな同情には、作品の奥底に潜むもう一つのテーマが感じられる。
 そして、宇野重吉の頑固な夫にそっと寄り添う田中絹代の妻……あのラストシーンの柔らかな余韻は、久松監督の力量を物語っている。
 二時間を超える長編ながら、退屈することなく、しみじみと心に染み入る作品だった。それもそのはず、原作が『二十四の瞳』の壺井栄であると知り、深く納得してしまった。

評:蔵研人

 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。 またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。

にほんブログ村

人気ブログランキングへ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2026.05.31 11:54:22
コメントを書く
[名作鑑賞] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: