墨田区に住んでいて足立ナンバーの自動車に乗り、渋谷区のトイレを清掃する初老の男、平山。この地理関係に違和感を持った。登場するトイレはどれもが意匠的トイレ。デザイン性に富んでいると思えた。と同時に温水便座なので機能的にも優れている。この映画で日本の公共トイレを初めて見た人は、どこもこんなに素敵できれいだと勘違いしてしまわないか、と危惧した。 ヴィム・ヴェンダース監督の映画と思って見た。見終えたら、役所広司の映画であった。ゆえに、カンヌ国際映画祭で役所広司が男優賞を受賞したのもなるほどと思えた。クレジットをみてほとんどが日本人スタッフだったので、ヴェンダースは雇われ監督だったと思った。役所広司はエグゼクティブプロデューサーである。 先ほど、オフィシャルサイトで制作について見たところ、企画・プロデユースが柳井康治であった。彼のコメントを読んで、最初に東京オリンピック・パラリンピックの開催に際して、「自分なりのおもてなし」としてTHE TOKYO PROJECTという渋谷区の公共プロジェクトを始めたとのことだった。著名なクリエーターにデザインしてもらったTTT(THE TOKYO TOILET)の公共トイレは新たな価値創出に繋がった。そして、その清掃・メンテナンスの重要性を痛感したとのこと。TTTのトイレすべてが価値・意義あるものと捉えてもらうにはアートの力が有効かも、とあり、この作品に至った。ゆえにこれは柳井康治の作品とも思える。