PR
Calendar
Comments
Keyword Search
警衛勤務 その1
警衛勤務とは、駐屯地において24時間の警備を行う特別勤務のひとつです。営門での立哨(りっしょう)、警衛所において駐屯地を出入りする人や車両の確認と警戒、駐屯地の外柵、武器庫や燃料庫等の巡察、国旗掲揚降下等が主な任務です。
朝、8:15に補給倉庫前に当日上番する隊員は、戦闘服とライナーを着装して集合します。武器庫から各自の小銃を持って整列します。警衛司令による隊容検査の後、警衛所前まで行進します。上番、下番の隊員が整列して、警衛司令が「上番します」「下番します」と言い交して交代します。なお、上番はこれから勤務に就くことをいい、下番は勤務を終えることをいいます。その後は引継ぎを行い、警笛モール、警棒、警衛用の白い弾帯を装着します。小銃は銃架に立てかけて保管します。当時は、警衛所には実弾5発が置かれていましたが、金庫の中に厳重に保管されていました。使わないなら置く必要はないと思うのですが、「何か事案が発生した場合の備え」という曖昧な理由で置かれていたようです。
十条駐屯地の警衛隊は、警衛司令(1曹、曹長)1名、営舎係1名(1~3曹)、他に歩哨要員として陸曹、陸士が2名と事務官相当の守衛1名の計5名が勤務していました。十条駐屯地は、他の駐屯地に比べて自衛官が少ないので警衛勤務専門の事務官が雇われていました。また、夜間だけですが、車両工場等がある赤羽地区に2名配置されていました。

立哨は、営門の中央にあるポリボックスで、出入りする人や車両を警戒します。立哨中は整列休めの姿勢で立ち、自衛官、防衛庁職員であれば身分証を確認して、出入りの業者や面会人は警衛所の受付に誘導します。車両が出入りする場合は、営門のチェーンゲートを操作して車両のナンバーや部隊名等を記録します。稀に不審者が徘徊したり、左翼のデモ隊が営門前で抗議活動をしたりすることがありましたが、特に緊張感はありませんでした。
十条駐屯地は、人や車両の出入りが多かったのでチェーンゲートの開閉が大変でした。チェーンが降り切らない内に進入する車両がいるので、早めに操作する必要があります。降ろすタイミングが遅いとドライバーに睨(にら)まれます。役得もあり、十条駐屯地の隣には某女子短大があり通学する女子大生達を眺められました。数ある駐屯地の中でも、このような光景が見られるのは十条駐屯地だけだったと思います。
余談ですが、十条駐屯地にはデモ隊対策用に大型バリケードが保管されており、何かの訓練でそのバリケード2~3台を営門に並べたことがあります。高さが約2m、幅約4mでアングルを溶接して作られた三角形のバリケードは、鉄条網が巻き付けられていて物々しい雰囲気を醸し出していましたが、邪魔なだけで大した効果がなさそうに感じました。結局バリケードは並べたものの数分で撤去しました。
駐屯地司令の登退庁時、警衛隊は「捧げ銃」で送迎します。また、防衛庁や他部隊のお偉いさんや外国の駐在武官が来訪する時は、ラッパ手が増員されて警衛隊と共に送迎します。

特別勤務時の昼食は、”早飯”と言って11:45に隊員食堂で食べます。他の駐屯地では警衛所に糧食を運搬するようですが、十条駐屯地は警衛所から隊員食堂まで徒歩で3分もかからない場所にあったので勤務者は交代で食べに行きました。
16:55になると、警衛隊の若手3名で旗衛隊を編成して国旗掲揚塔に前進します。17:00にラッパ譜の国歌吹奏と共に国旗降下を行います。旗衛隊の隊長は、国旗を所定の方法で折り畳み恭(うやうや)しく捧げ持って駐屯地司令室に返納します。国旗が見えている間は、駐屯地司令であっても敬礼し続けなければなりません。そのため、17:00になると国旗掲揚塔周辺から人がいなくなります。

17:00で課業は終了になり、殆どの営外居住者や防衛庁職員は退庁します。入場していた車両が全て出れば営門を半分閉じて立哨勤務は終了です。そして、営内者の門限である22:00が過ぎれば営門は全て閉じます。
夜間の警衛勤務では、定時に駐屯地の外柵等を巡回します。また、外周の赤外線センサーやワナ線の警報が発報すれば、現地に急行して異常の有無を確認します。しかし、赤外線センサーは猫や鳥に反応したり、ワナ線は強風で揺らされると発報したりしていました。当時は監視カメラ等が無く、誤報と分かっていても警報が鳴ればすぐに現場に行くことになっていました。
定時の動哨、つまり徒歩での巡回は2時間毎に2名で出掛けます。駐屯地の外柵、燃料庫、武器庫のある原動機工場を動哨しますが、1971年の「朝霞自衛官殺害事件」の影響か動哨中の自衛官は小銃を携行せず警棒を装着します。これは小銃を奪われることを恐れてのことです。
さて、十条駐屯地の緩さなのか、当時の十条駐屯地では当直幹部の営外巡察が終わると1人で自転車に乗って動哨を行っていました。警衛所では23:00から翌朝6:00までの間、2名ずつ仮眠します。本来仮眠は2時間しか取れないのですが、巡回を1人にすれば起きている者を1人減らせることができるので仮眠を増やせます。これで特に問題も生じないほど十条駐屯地の警衛勤務は平和なものでした。
夜間や休日はとにかく何も起こらないので暇で仕方なかったです。警衛司令や営舎係は机があるのでこっそり新聞や本を読むこともできますが、下っ端の隊員は椅子に座っているだけなので雑誌や漫画も読めず警衛所でひたすら待機するだけなので、他の隊員と世間話などして過ごすしかありません。しかし、警衛勤務のおかげで他の部署の人と知り合いになれ、色々な話を聞くことが出来ました。
朝6:00になると営門を開けて、6:15に朝食をとり7:00に再び立哨に立ちます。7:15頃、駐屯地司令を駅に迎えに公用車が営門を出ます。7:45頃に駐屯地司令が登庁するので、警衛司令他2名が小銃を持って警衛所前に整列して公用車が来るのを待ちます。駐屯地司令が乗った公用車が来ると「捧げ銃」で出迎えます。
7:50頃、国旗降下の時と同様に旗衛隊を編成して、駐屯地司令室に国旗を受領するため行進します。国旗を受領して国旗掲揚塔に前進して待機します。朝礼が始まり、国歌吹奏と同時に国旗を掲揚します。国旗掲揚の手順として、掲揚塔に巻き付けているロープを外して三角に折り畳んだ国旗を広げてロープら取り付けます。国歌吹奏が始まると、2名でロープを引いて国旗を揚げますが国歌吹奏が終わると同時に掲揚塔の上端に到達するように引かなければなりません。旗衛隊長は、国旗に対して敬礼を行い注目しながら、ロープを引く2名に「速い」「遅い」と小声で指示します。国旗掲揚がうまくいかないと警衛司令の機嫌を損ねるので旗衛隊は全力で国旗掲揚を行います。私は、国旗掲揚で旗衛隊の隊員や旗衛隊長を務めたことがあります。何度か経験して掴んだコツは、始めはゆっくりと上げて掲揚塔の2/3の高さまで来たら早目に揚げると見栄えが良く、ラッパ譜とタイミングが合わせやすいことでした。
国旗掲揚が終わると、ようやく警衛下番となります。上番する警衛隊に引き継ぐと、小銃を武器庫に返納して差し入れ等を持って営内隊舎に戻ります。警衛勤務後は、明け休暇なのでそのまま外出できます。
私は、通学していたため土・日曜日に外出ができなかった時期があり、警衛勤務明けはここぞとばかりに池袋や新宿などに遊びに出掛けました。営内隊員は、警衛勤務が概ね月1回ありましたが、私は通学していたため土・日曜日や祝日に上番することが多かったです。皆、休日の警衛勤務を嫌がるので、警衛勤務の割り振りの時には重宝されました。
陸上自衛隊武器補給処十条支処勤務の顛末 … 2024.01.01
陸上自衛隊武器補給処十条支処勤務の顛末 … 2024.01.01
陸上自衛隊武器補給処十条支処勤務の顛末 … 2024.01.01