真理を求めて

真理を求めて

2003.01.20
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猫のゆりかごさんのところで村上春樹の話題で話をしていたら、買っていながら読んでいなかった本を読みたくなった。村上春樹は、河合隼雄との対談を読んでからおもしろい人だなと思って、「ねじ巻き取りクロニクル」を読んだ。これもとてもおもしろいものだった。それで、何冊か買ったんだけれど、それ以後はなぜか読まずに積んでおくだけだった。

今回、きっかけがあって読んでみたんだけれど、この年になってもまだ夢中になれる新しい本があるのがちょっとうれしかったな。まだ2冊あるうちの上巻を読み終えて下巻に入ったばかりだけれど、久しぶりに一気に読めそうな本に出会った。

半分を読み終えた感想としては、主人公でもあるワタナベ君への感情移入がだんだんと深くなっていくのを感じる。読み始めの頃こそ、今の僕とは違うので、冷静に外から眺める感じだったけれど、あるセリフからほとんど一体になるような重なりを感じて、深く感情移入ができるような気がした。

それは、ワタナベ君にとって最も重要な女性の一人である直子の次のセリフを読んだときだった。

 「ねえ、どうしてあなたそういう人たちばかり好きになるの?」
 「私たちみんなどこかでねじ曲がって、よじれて、うまく泳げなくて、どんどん沈んでいく人間なのよ。私もキズキ君もレイコさんも、みんなそうよ。どうしてもっとまともな人を好きにならないの?」

僕も、ワタナベ君と一緒で、世間でまともでないと見られている人の方がまともで、世間でまともだと言われている人の方が本当はまともじゃないと思っている。だからこのセリフで、ワタナベ君がぐっと身近に感じられるようになった。

ここに登場してくる人たちは、それぞれが自分の存在を希薄にしか感じられない人たちばかりだ。どんなにすばらしいものを持っていても、それが自分の支えにならない。彼らは、すばらしいものを持っていればいるほど、周りの期待に応えようと大きなプレッシャーを受けながら生きている。その周りの世界を断ち切ってしまいたい心から逃れることができないでいる。

ワタナベ君は、自分をごくふつうの人間だと思っている。周りの期待というプレッシャーがないので、彼は存在そのものが希薄であっても、周りの世界から逃げないですんでいる。誰からも放っておいてほしかった僕の若い頃を思い出してしまいそうなくらい、ワタナベ君を身近に感じてしまうところだ。そして、自分がそういう特別な人間という意識が薄かったからだろうか、そういう意識の人間に引きつけられてしまうのは。






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最終更新日  2003.01.20 08:44:54
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