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2009年12月07日
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カテゴリ: 加藤周一
ふと気がつくと、加藤周一の命日(12月5日)を過ぎていました。12月4日に岩波ブックレット「加藤周一のこころを継ぐために」が出版されました。この本は今年6月2日に行なわれた九条の会の講演会「加藤周一の志をうけついで」を元に解説を加え、加筆したものである。

加藤周一のこころを継ぐために

一番重要だと思ったのは、夫人の矢島翠(みどり)さんの「加藤周一のこころを継ぐために」という挨拶である。全文ではないが、その半分近くを抜粋したい。



そのような(9.11テロからアフガン、イラク戦争のような)状況を見ていて、加藤が強い危機感を持ったことが感じられました。つね日ごろ、日本の憲法こそは人類の理想の先取りだと信じておりましたから、どうにかしなければならない、と考えるようになった。昔の敵国であるアメリカの言いなりになって、その戦争の支援を始めるようなことは、なんとしてでも阻止しなければならないと考え、皆様に呼びかけて、5年前の2004年6月に「九条の会」が発足したわけです。
(略)
加藤の人生は、それ以降大きく変わっていきました。物書きのエゴイズムから抜け出し、-と言ってもよいと思いますが-、九条の会を広める運動を始めます。しかも、その運動も、石造りの堅い、しっかりした三角形のピラミッドではなく、既成の組織に決して乗らず、一人ひとり生きて、暮らして、物を考えている、そういう人たちが手をつないでゆるやかなネットワークをつくる、というものでした。その最初の狙いは、現在の九条の会の運動において、まず達成できたのではないかと思います。

その狙いの達成したあと、それをどうやって生かしていくか。権力側は、もう憲法改正を既成事実であるかのように話しています。そして、改憲手続法である国民投票法は、小泉政権のあと安倍政権時に強行採決によって成立しており、2010年の5月から施行されます。それをあたかも既定路線のように、すぐにも国民投票が行なわれるかのように政府は宣伝しています。

そのような状況を、きちんと落ち着いて見極めながら、人類の理想である憲法をどう生かしていくか。このゆるやかなネットワークの中で、どう根づかせていくか、考えていかなければなりません。

日本で生まれた新しいネットワークのかたちは、世界の人々の共感をよび集めながら、地球をおおうまでに広がっていく可能性を持っている。日本の政局の動きに一喜一憂して<挫折>ばかりを恐れるよりも、これまでは考えてもみなかった明日の憲法のありかたに、希望をつなぐことはできないでしょうか。-加藤は<挫折>という言葉が、きらいでした。


1960年生まれの私は、80年から国政にかかわりだしたので、まだ<勝った>という経験が無い。だから半分<挫折>の人生だったと言っていい。むしろ、アメリカ、政府、大企業の戦略を感心することしきりであった。しかし、初めて<勝てるかもしれない>という希望が生まれている。20世紀日本が生んだ最高の「知識人」の最後の「戦略」はそう簡単に逆転できないところまで来ている。

「巨匠」は死ぬ間際に最後の「闘い」に打って出た。

木下順二の演劇「巨匠」では「青年」がそれを受け継いでいる。





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最終更新日  2009年12月07日 23時28分08秒
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