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2011年06月06日
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「長い散歩」安藤和津 学習研究社


だから、映画は映画、小説は小説としてみる必要がある。映画の中で、サチが熱いものを嫌がる理由をワタルが簡単に見抜く場面がある。映画的作法では、そのことは物凄い大きな事件だったのであるが、小説のなかではさらりと描かれている。松太郎の「人間として不足している部分」はそのような映像ではなく、独白の中でゆっくりゆっくりと彼に覚らすのではある。

よって、あの映画は主に安田松太郎の視線だけで作っているのに対し、この作品では時には少女のサチの視線で、あるいは母親の真由美の視線で、松太郎の娘亜希子、妻の節子、あるいは旅の途中で知り合った帰国子女のワタルの視線を実現する。

あの映画は名作だった。どこが名作かといえば、 わたしの書いた記事 を読んで欲しい。しかし、唯一不可解なシーンだったのはワタルの自殺だった。この小説では、それを衝動的な自殺だったと描いている。それはそれで一応納得はしたのであるが、映画の欠点を拭った感がしてならない。松太郎の過去も、小説らしく詳細に描かれる。映画ではなぜあそこまで松太郎を嫌うのか突発な感があったが、単に母親を追いつめてアルコール依存症にさせただけではないということも分かった。思春期のプライドをずたずたにしたのである。松太郎は本当には自分の罪が分かっていなかった。サチとの長い散歩も、これをすれば罪になる等何もかも自覚した上での行動ではなかった、しかし、そのような無様な姿のほうが、私にはリアルではある。校長まで歴任した男の巡礼の旅とも言えるサチとの「長い散歩」は、やはり彼にとっては大きな財産になるだろう。

あの映画を豊かにするためには、格好の小説だった。監督の妻もやはり只者ではなかった。「CNNデイウォッチ」の元キャスターらしいが、私は顔は知らない。





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最終更新日  2011年06月06日 21時02分19秒 コメントを書く
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