再出発日記

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2012年07月20日
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「初つばめ」藤沢周平 実業之日本社文庫


ーおや、つばめだよ。
となみは思った。立ちどまって、水面すれすれに下流の八幡橋の方に姿を消すつばめを見送った。今年初めて見るつばめだった。今年どころか、何年もつばめを見たことなどはなかったようにも思う。(202p「初つばめ」)


「松平定知の藤沢周平を読む」選という副題がついている。松平定知が朗読番組で紹介した作品を集めたという。ほとんどは今まで読んだことのある短編のアンソロジーである。けれども、こうやって買ってみなければ、案外再読の機会は無いのだと思い知った。次は何が出て来るのか、という愉しみもある。本棚の奥に眠っている文庫の再読では、読む前に読んだ気になる短編も幾つかでてくるので、興が削がれる事があるのである。人が選んだものならば、ほとんど最後までラストを思い出さない。藤沢周平の短編は、設定が全く同じでもラストが違うという作品が多いからである。松平定知が朗読を始めたキッカケになった「踊る手」は、最初から最後まで全く記憶になかった。藤沢の市井ものは、全部読み尽くしたと思っていたが、もしかしたら目こぼしがあったかもしれない、とかえって嬉しくなった。久しぶりに読むと、やっぱりなんという透明な文章なんだろ、と思う。

「踊る手」は最初から最後まで子供の視点での話だった。途中で大人になったりはしない。それでいて描いている世界は、大人の貧困の世界で、しかもラストはなんとなく明るい。成る程、名作だと思う。

「初つばめ」の場合は、まるで短編の教科書のように、「つばめ」の文字を借りて、弟の為に苦労し通しだったなみの人生が好転する萌しが鮮やかに描かれていた。

どのように教科書なのか。‥‥‥それを説明するのはやはり「やぼ」である。ただ、「何年もつばめを見たことがなかった」やえの半生を想うばかりである。
2012年6月21日読了





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最終更新日  2012年07月20日 14時43分34秒
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