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2012年12月28日
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「悪の教典」貴志祐介 文春文庫
映画を見て面白かったので買って見た。最近では、珍しいことである。

蓮実先生、若い頃はいろいろ悪いことをしていたとは思っていたけど、まさか幼少にしてあそこまでとは思わなかった。もしかして、彼が唯一殺すことができなかった憂実との関係が終わらなければ、蓮実にも他の選択肢があったのだろうか。


たぶん、やれる。‥‥‥いや、やれるはずだ。
同じことを成功させた人間は、未だかっていないだろう。だが、外部からの侵入者とは違い、校舎の中のことは知悉しているし、マスターキーも使える。最後までやり抜くのに必要な頭脳と体力、精神力も備えている。
それでも、さすがに躊躇があった。これまで一度として犯行に億したことはないが、今度ばかりは、やりすぎではないかという気もする。
‥‥‥しかし、他に代案がない以上は、やるよりない。(191p)


先ず検討したかったのは、蓮実は本当に「完全犯罪」を最初から目論んでいたのか、ということだった。目論んでいた。しかし、躊躇は一瞬したみたいだ。

私は映画の感想で「動機も方法も確かに完全犯罪に向かっていた。しかし、どうしてもクラス全員殺すのは、綻びが起きない方がおかしいのではないか。」と書いた。確率からすれば失敗する可能性は10%以上(←蓮実主観を想像)あっただろう。それでも実行してしまうこと自体、精神構造が理解できなかったのであるが、蓮実が自分の犯罪をスポーツに例えていた。普通では危険極まりない直滑降などのスキーをあえて行うスポーツがあるという。スピードと思い切りの良さが、彼の成功を保証しているらしい。この記述で「なるほどね」と思ったのである。

自分には理解不能な精神構造を小説という形で追体験するのは、確かに小説や映画の役割であり、エンタメの使命だろう。AKBメンバーに秋元康がこの映画の試写会を強制させたのは、「アイドルとは疑似恋愛の対象である」という信条を持つ彼としては当然だったのかもしれない。メンバーの中でも一際知的で感受性が強い大島優子が「この映画嫌いです」と大泣きしたのは、この作品の本質を1番理解した証左だろうと思う。優子は、センターとしてこの映画の中の蓮実の役割を担わざるを得ない。もちろん、蓮実と正反対に「共感能力」が強い彼女はまるで自分がAKBメンバーを殺したかのような錯覚を覚えたかもしれない。また、後で秋元康の意図も察知しただろう。後でひつこい様に「この映画嫌いです」とブログに書いたのは、「人生をエンタメに徹せよ」という秋元康のメッセージに関して若者らしい「反発」だったのかもしれない。

というような、ある事ないことをつらつら思わせてくれるこの小説はやはり見事なエンタメ小説でした。
2012年11月29日読了





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最終更新日  2012年12月28日 17時12分14秒
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