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2013年08月16日
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「大地の子エイラ(下)」ジーン・アウル 中村妙子訳 評論社

第一部を読み終えた。まさかこういう小説が可能だったとは!いま驚きと羨望と希望と失望とそしてワクワクするような次の物語への渇望を感じている。

驚きは、失われた種族のネアンデルタール人をひとり1人の個性までくっきりと描いているということだ。「2001年宇宙への旅」で描かれた彼らは、言葉は片言しか持ってなくて、とても知性的な部族には見えなかった。しかし、この小説ではその弱点はろうあ者が手話で自由に話すように完全に克服していると描く。彼らは統率のとれた社会性を持っており、20数人の集団でリーダーと副リーダー、まじない師と、薬師とを持ち、信仰を持ち、それぞれが役割を担う。前頭葉が発達していなかったり、二足歩行がまだ十分ではなかったりする機能的な制限のために、論理的な思考ができなかったり、投石器使いではアエラに遅れをとったりはするが、その巨大な脳の中に直感的な思考や記憶の蓄積という驚くべき能力も併せ持っていた。7年に一度の氏族会では、オリンピックのような競技をしたり、アイヌの熊祭りのようなことをして、部族の団結と秩序を保っていた。その目に見えるような「世界の再現力」にただただ驚くばかりである。

羨望は、古代を舞台にここまで魅力ある小説が出現したということだ。古代を舞台にした小説は数限りなくある。しかし、それはほとんどが既にある伝説や聖書や物語の焼き直してあり、荒唐無稽なものが多かった。これはあくまでオリジナルであり、非常に科学的であり、しかもまだ不明な処だけを想像力で補っただけなのである。だから、粗筋をいうのは簡単だ。地震で孤児になった五才のクロマニヨン人の少女がネアンデルタール人の部族拾われ、次第と受け入れられてゆく。タブーに触れて死刑に等しい追放を受けたが、その知恵と行動力で乗り切る。次期リーダーに嫌われ暴行によって11歳で男の赤ん坊を授かる。しかし、その男がリーダーになった時に、アエラは1人その部族から離れる決心をするのであった。
この話が三巻にも及ぶ大長編になり、まだまだ続くのである。
弥生時代を舞台に小説を書きたい私は、その構成力に羨望を抱かざるを得ない。

同時に、希望も抱く。文献史料が全くなくても、考古学の研究が不十分でも、ここまで説得力のある、エンタメの小説は描けるのだ。

同時に、失望する。目の前のこの力技は私にはないことを。

いまはただ、まだまだ始まったばかりのアエラの物語の次を読むだけだ。それならば、私でも出来る。
2013年8月7日読了





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最終更新日  2013年08月16日 11時13分34秒 コメントを書く
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