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2013年09月04日
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テーマ: 本日の1冊(3687)

「風樹の剣ー日向景一郎シリーズ1ー」北方謙三 新潮社文庫

途轍もないチャンバラ小説である。描写は簡潔、全編想像で補う他ないものすごい高度な勝負の連続である。もちろん、剣豪には上には上がある。しかし、景一郎は生き延び、そして勝つ。

18歳の景一郎は初めて真剣で勝負をして失禁する。それを試した芳円が祖父の将監に聞くと将監はこう答えた。

「どこに、天稟があるのですか?」
「臆病さにだ。臆病だから、相手の剣先を見切ろうとする。それができるようになる。人間がなぜ臆病なのだと思う。生き延びたいからだ。他人よりずっと臆病ということは、ずっと生き延びたがっている、と言ってもよい。それで、身を護る術を覚える。生き延びたいという思いを、克服できるようにもなる。つきつめれば、剣とはそういうものだ」(32p)


日向景一郎には世の習わしが一切通じない。江戸時代、剣のみで生きるということがそれを可能にしている。病死する将監から「父親を切れ。それ以外、お前の生きる道はない」と言われ、探し求める中で超人的に強くなってゆくも、その過程で加賀藩の暗殺者とも対立するし、罪のないものも衝動のまま殺したりもする。そして、景一郎の出生の秘密が明らかになったときに父子の対決があるだろう。構造的には「父親殺し」の物語であるが、父親も不治の病に掛かっていたから生を拾ったに過ぎず、話はまだ続くことから、1人の人間の「自分探し」の物語だと言えなくもない。

連作短編集でもあり、一遍ごとにあらゆるタイプの剣豪が出てくる。重たい読み物が続いたので、軽い読み物と思って手にとったのではあるが、確かにエンタメ小説で気分転換にはなったのではあるが、流石北方謙三、簡単には読み捨てはさせてくれない作品だった。
2013年9月1日読了





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最終更新日  2013年09月04日 18時23分55秒
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