再出発日記

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2013年12月01日
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テーマ: 本日の1冊(3719)

「うその楽しみ 中学生までに読んでおきたい哲学」松田哲夫編 あすなろ双書
前回この「ウソ」を巡るアンソロジーで紹介したのは、日本人は大まかにはウソに寛容であり、ウソを愉しむ性質さえ持っていた、ということだった。しかし、某都知事のつくウソについては、そうはいかないのではないかというのが私の意見だった。

今回はそれを更に突っ込みたい。そもそも「国」と「個人」とのウソの関係はどうなっているのだろうか。

「嘘について」加藤周一

「すべての政府は嘘つきである」と書いたのは、「冷戦」時代の米国で活躍していた記者、I・F・ストーンである。政府の操作する情報の行間に真実を読み取るほかないと感じていたのが、彼だけではなかったからこそ、彼が1人で書き、編集し、印刷し、郵送までしていた個人週刊紙「ストーンズ・ウィークリー」には報道関係者の読者が少なくなかったのである。


と、書いたのは加藤周一(「夕陽妄語4」平成13)である。加藤はここで、嘘は人間関係をなめらかにするためには必要だとは認めたうえで、大きな損害を与える嘘もあることを指摘している。

日本国民は太平洋戦争の末期に「大本営発表」をほとんど信用しなくなっていた。(略)繰り返される嘘は、狼少年と村人、政府と国民の間の信頼関係を壊す。信頼関係の破壊は嘘をつく側にも跳ね返って、嘘の効用そのものを失わせるに至るだろう。しかもそれだけではない。

民主主義国では国民が主人公であり、国民の支払う税金で雇われ、国民から委託された業務を行う政府は、使用人の集団である。使用人が主人を騙すのは、原則として不正であり、民主主義の破壊である。使用人の嘘が正当化されるのは、主人の利益を守るためにどうしても嘘が必要な例外的な場面に限られるだろう。その場面には、なぜ嘘が必要であるかの理由が、主人側によって十分に理解できるものでなければならない。


もし説得力ある説明が出来なければ、その嘘は 「権力の乱用であり、民主主義の原則の侵害であり、国民の重大な不利益である」 と、加藤周一は述べている。

平成13年より少し前の頃、政府は消費税のことや社会福祉のことなどでたくさん嘘をつこうとしていたけど、秘密保護法なんて作れる環境になかったから、さすがの加藤も政府が言い訳そのものすらも隠すことができるようになるとは想像していなかったようだ。

しかし、加藤周一の空恐ろしいのは、政府が嘘ばっかりついていると、権力乱用どころじゃない、もっと怖いことが起きることを考察していることである。

しかし嘘つきが他人をだますだけでなく、自分自身をだますこともある。

例として、ドン・キホーテの従者サンチョ・パンサが田舎娘を姫君と偽って、主人をだまし、だまし続けているうちに自らの嘘を信じるようになったことを上げている。

ほんとうでない話を、それと知りながら人に信じさせようとするのが嘘であるとすれば、みずからも信じる嘘はもはや嘘ではない。嘘つきは、そこで自らの馬鹿げた信念を他人に押しつける狂信者に変わる。(略)嘘つきの害毒はおよそ予測することができる。嘘つきが自らの嘘を信じはじめた後に生み出す害毒は測り知ることが出来ない。

加藤周一が危惧している事態が、戦前の日本のような国であることは間違いない。平成13年の頃は、建前としての「知る権利」があったから、まだ時々は政府の嘘を見破ることは出来た。それでも政府と国民との矛盾はどんどん広まっていったから、嘘が見破られそうになるごとに首相は変わっていったのである。



えっ?大人はそんなに馬鹿じゃない、って?そうだよね、そう信じたいよね。

2013年11月30日読了





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最終更新日  2013年12月01日 10時42分14秒
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