再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

お気に入りブログ

週刊 読書案内 森… New! シマクマ君さん

台湾旅行。円山大飯… New! はんらさん

中国のレアアース統… New! Mドングリさん

WALK UP(ウォーク … New! 天地 はるなさん

スタッカート と … New! ポンボさん

カレンダー

2018年07月02日
XML
テーマ: 本日の1冊(3688)


「古事記外伝ーイズモ・クロニクルー」多羅尾整治 幻冬舎ルネッサンス

荒神谷博物館でこの書を見つけて、後で取り寄せた。島根を舞台にした数少ない古代小説ということで置いていたのだろうとは思う。

「外伝」とついているように、主にはスサノオを辰韓(紀元前2世紀 - 356年)よりやって来た製鉄職人集団の2代目に設定し、スサノオ(スサの森の王)のオロチ退治(オロチ衆との戦い)、出雲の国造り(日向から大和まで)、大国主への代譲り、大国主の国譲りまでを描き、作者の考える文献解釈を試みている。

この時代を描く例があまりにも少ないので、このような長編は出来るだけ読みたいと思っているのだが、結果的には最後まで読むこと能わなかった。小説は、基本的に一つのウソを付くために九つのホントを描かなくてはならない、とわたしは思っている。この小説は大袈裟に言えばその反対、一つのホント、九つのウソだった。

以下、良かった処を少し述べて突っ込みどころの1部分を述べる。

(良い)
・子を作ることを、人々の中の大きな目的にしている。
・地域のムラを「・・の森」という呼び名で、区分けする。
・時間と距離を歩数でカウント。しかし、当時一千以上を数える能力があったかどうかは大きな疑問。二万四千歩(四時間)六千歩(四キロ)
・八重垣の描写「巨木を支柱にして、枝を払った小径木と竹でつくられた、人の高さの倍はある壁。」落とし穴とかの工夫。

(突っ込み処)
・砂鉄は鎌倉時代以降に吉田地区で作られた製鉄技術であり、当時ではまだその技術は確立していなかったはず。砂鉄が採れるから製鉄も出来ていたはず、というのは事実を無視した暴論である。
・酒をオロチ衆が知らなかったということは、あり得ない。酒はどの時代でも特別な飲み物だった。
・皆殺しの戦争を迷いながら実行する。それは、復讐を恐れる近代的な発想に依っている。古代は、違う論理があったはずだが、それは構築されない(そもそも古代の神が全然具体化されていない)。「最も力の強いクニの王が全てのクニを制すれば、争いはなくなります」(71p)これは近代の戦争論理であり、しかも過ちではあるが、作者は無批判にその論理を受け入れる。それは戦争を人間の本能と捉えているからだろう。結果平和を実現するために、戦争に明け暮れる小説になってしまった。
・フツシの都造りは安来で行われた。あまりにも意外。同時期、それよりも隔絶した墓を作った出雲の西谷墳墓が無視されているのは如何なものか。
・青銅器祭祀の終りが描かれない。よって、荒神谷遺跡等の大量埋納も描かれない。青銅器職人としては無視出来ない出来事だったはず。

まだまだもっとあると思うけど、省略する。

2018年6月読了





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018年07月02日 10時10分06秒
コメントを書く
[読書フィクション(12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…
KUMA0504 @ Re[1]:書評「どっちがどっち まぎらわしい生きものたち」(02/26) はんらさんへ 今気がつきました。ごめんな…

バックナンバー

・2024年07月
・2024年06月
・2024年05月
・2024年04月
・2024年03月
・2024年02月
・2024年01月
・2023年12月

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: