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「園芸家12ヶ月」カレル・チャペック 小松太郎訳 中公文庫
1959年に訳出、1975年に出版された文庫本ではあるが、そもそも本書が書かれたのは、おそらく1928年ごろではあるが、全然古くは感じない。完全なる口語文と、奇妙なユーモア、そして普遍的な園芸愛に満ちた愛すべき園芸エッセイである(読んだのは旧版)。
チェコと日本の自然環境は違うし、そもそも園芸という趣味を持ち合わせていないので、チャペック特有の細かい所に入る描写で参考になった技術的な部分は無いけれども、戦争前夜の東欧でどのように楽しみを見つけるかは、参考になった。
雲や地平線や青い山を眺める前に、自分が踏んでいる足下の土を眺めたら、それがどんなに美しいものかを発見できる。と、チャペックは云う。「酸性の土と、粘土と、ローム質壌土と、冷たい土と、礫土と、劣等な土を見分けることができるようになるだろう。クッキーズのように多孔質で、パンのようにあたたかで、軽い、上等の土のありがたさがわかるようになるだろう。そして、女や雲をきれいだと言うように、そういう土を「こいつはすばらしい」と言うようになるだろう。」(118p)実際、花の美しさを描写した部分はほとんどなくて、1月のカチンコチンに凍った土の所から、ひたすら土作りの素晴らしさを語るのが、この本の趣旨なのである。私はよく知らないのだけど、これこそ園芸家なのだろうか。
訳注が、訳を飛び越えてほとんどエッセイと化しているのに、びっくりした。特に、マンドラゴーラという神秘的な植物についての一文は、様々な物語を私に想起させる(167p)。
また、このエッセイのもう1人の著者とも言える多数の挿画を描いた兄ヨゼフ・チャペックが、1945年、強制収容所で亡くなっているのを知ると、このへたうまな絵(ちなみに数えたら58挿画もあった)が愛おしくなる。
2019年2月読了
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