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2021年10月20日
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テーマ: 本日の1冊(3697)


「地図帳の深読み 100年の変遷」今尾恵介 帝国書院

地図の専門出版が世に問う「深読みシリーズ」で、地図の歴史的な読み比べが出た。今年8月に発行された時から紐解くのを愉しみにしていたが、感想は「少し残念」というものだった。

100年前の地図というと、全て旧字体でしかも印刷技術は発達していないから文字が潰れているものも多い。それなのに、前作と同じレイアウトを使い、1ページの1/6ぐらいしか使わない地図が多用されていた。これだと、目の悪い私なんかそれだけで見る気が半減した。地図にある豊富な情報が読み取れないのだ。昔の地図は今回の倍ぐらいは総て拡大するべきだったと思う。

それでも、面白かったところ。
・関東大震災直前とその後区画整理された後の東京・新大橋辺りの地図の比較(25p)。

・台湾台中辺りの昭和9年の地図。サトウキビを収穫するため鉄道が発達している(55p)。←旅した時にこの辺りが栄えていた理由がわかった。

・台湾に今も残る日本式地名の意味(高雄、松山、板橋等々)。台湾の親日の現れというだけではない。その前の地名は、当時の宗主国清朝が与えた。その現地読みの漢字化が屈辱的だった。高雄の前は「打狗(ターカオ)」。←そういうことは、日本人はきっちり知っておかないといけない。だから、一方で韓国の地名は戦後直ぐに元に戻ったのであるし、韓国民にとっては日本人に三十数年間強制された地名(ソウル市内だけでも青葉町、大和町、並木町、弥生町等々多数)は屈辱だったに違いない。(57p、106p)

・沖縄・嘉手納基地の大正8年の地図を初めて見た。銃剣とブルドーザーで接収された土地は野原や畑だけではなかった。数千人の生活を保つ大きな町が2つもあった。(68p)


※ ここで、本書の記述を少し超えてSNSで知り合った方からのリクエストに応えたい。165p、167pの二つの岡山県南地図は本書では珍しく大きな縮尺で、細かい所まで確認できる。地域の産業の変遷が、地図から読み取れる例として使われているのではある。質問されたことに答えるとともにもう少し詳しく解説したい。



先ず令和3年の地図に特産品として「弁当」が載っている。「弁当の特産品って何?」某さんの指摘では何のことかわからなかったが、弁当と言えばどうせ駅弁のことだろう、だとすると祭り寿司かなと想定して紐解くと、何と弁当産地は大きな町のない田舎、むしろ山の中ではないか!笠岡在住の詳しい友人に質問したが、初めて聞いたという。「昔は下駄の産地だったらしいです(←これは私も初耳)」とのこと。全然違いますね。もしかしたら教科書の誤植である可能性があります。


それどころではない。実は、岡山県の人口の大半を占める県南地の平野部分のほとんど(現在の岡山市・倉敷市の大部分)は、岡山県にある三本の三大一級河川の土砂でできたものなのである。古く弥生時代前期に遡れば、この平野部分は全部海だった。「吉備の穴海」とも言い、遠浅の海が続いていた。この500年こそは人口干拓だったが、3000年かけての長い干拓地だった、とも言える。だからこそ、2000年前に吉備国が栄えた。1000年以上かけて岡山平野という大きな穀倉地帯が現れたのである。源平合戦の時は、遠浅の海を巡って様々な悲劇が繰り広げられた(←すみません、省略します)。
閑話休題。
塩害に強い綿花から綿糸や染料へ産業が広がり、現在は学生服(シェア7割)、ジーンズ(厚手織物の技術の継承)に移りました。
一方の流れとして、児島の由加神社お土産の真田紐から厚手織りの小倉織、足袋、ジーンズに変遷して行く。ここには書いてないが、厚手織物として帆布の生産も高い。それを使ったトートバッグは多くの商品が出回っている。ジーンズは児島だけでなく、離れた井原も生産地だ。
また、倉敷から大原孫三郎が出現してクラボウを世界的な企業にしている。だから、大原美術館もできた。
真田紐から麦わら帽子が発達して、現在もシェアは高い。祖母が長いこと、麦わら帽子の原料の組紐みたいな材料つくりを内職でやっていた(50年前)。除虫菊生産も塩害の関係だろう。近くの玉島に古くて大きな線香の工場があるのを知っている。つい最近まで存在していたけど、最近行っていないなぁ。
塩害の関係で、イグサの生産量は高かった。その関係で現在も備前畳表は生産量質共に高い。

‥‥こう書くと、改めて3000年にわたる土地を活かした産業への、庶民の「工夫」が、我々の生活を作っているのだな、と感じた。










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最終更新日  2021年10月20日 10時48分29秒
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