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2021年12月02日
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「デューン 砂の惑星(上)」フランク・ハーバート 酒井昭伸訳 ハヤカワ文庫

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画(Part1)を観て、どうしても読みたくなって買い求めた。思った通りだった。私の生涯ベストの一つである「指輪物語」に追いつかの如くの「ファンタジー」だったのである。

私がファンタジーに求めるものは二つ。物語の最初から、既に「世界」は完璧に出来上がっていていなくてはならない、というのが一つ。もう一つは、物語の奥の奥に、必ず答えの決まらない「問いかけ」が用意されていること。そしてラストに、ファンタジーだからこそ許される答えを僅かに提示すること。まだ3部作の最初を読んだだけだけど、一つ目は見事にクリアした。

時は、地球の西暦で教えられる。標準年10191年。0を一つ間違えているわけではない。これも、映画では冒頭に出てくるけれども、原作では「後世」に作られた本の一節で初めて知らされるのに過ぎない。遠い未来の話は、殆ど遠い過去の話とイコールだ。

「汝、人心(ひとごころ)を持つがごとき機械を造るなかれ」『オレンジ・カトリック(OC)聖典』より
‥‥つまり人間社会はAIの洗礼を既に受けて、新しい段階に入っているらしい(著作の頃はまだAI概念は不確かだったけど)。

砂の惑星は、「香料」を産出するがために、あらゆる争いのもとになっている。冥王サウロンの「ひとつの指輪」の如き存在なのかもしれない。

主人公ポールは、やがて砂の惑星の民から救世主と呼ばれる。物語の冒頭から、それは決定しているかの如く描かれる。ある時は、「クウィサッツ・ハデラック」と言われ、もう一方の情報では「ムアディップ」と呼ばれる。一方では彼は、アトレイデイス公爵の跡継ぎとして砂の惑星アラキスに降り立ったポール・アトレイデイスなのである。重要な公爵暗殺劇も、物語の冒頭から「後世の」「ムアディップ伝」の中で語られているから、映画で筋書きがわかっていた私以上に、本書読者には驚きが無い展開である。私にとっては、映画ストーリー以上に最初に展開を種明かしをしている物語の構造に、驚きを禁じえなかった。おそらくこの「構造」こそが、「砂の惑星」の魅力なのだろうと、今は思う。

102世紀の世界ではあるが、魅力的な機械が散見する。トンボのような羽ばたき機は砂上に飛ぶのだとすれば確かに合理的であるし、身体中の水分を殆ど外に出さない循環型スーツも、あり得るテクノロジーである。そして、砂の惑星の主とも言える砂蟲の圧倒的な存在感。ここから宮崎駿が王蟲を創造するのは遠くはなかっただろう。

映画は2部作と思いきや、殆どこの3部作のうちの上巻のみで終わった。とすれば、映画も3部作なのか?そんな情報はどこにもないし、次が作られる保証さえなかったはずだ。本作のヒット如何に関わらず、どうやらPart2の制作は決定したようだ。とりあえず、それだけが「見える未来」である。

(得るに時あり、失うに時あり、保つに時あり、棄るに時あり)
『OC聖典』に含まれる、〈伝道の書〉からの引用だ。
(愛しむに時あり、悪むに時あり、戦うに時あり、和らぐに時あり)
(462pのレディ・ジェシカの呟きである)





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最終更新日  2021年12月02日 08時02分21秒
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