桜の森の満開の下

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はんびゃーぐ @ Re[1]:ママ(11/18) ともさん >この物語はおもしろいです。 …
とも@ Re:ママ(11/18) この物語はおもしろいです。
はんびゃーぐ @ Re:はじめまして(06/29) saku5319さん > 可愛い、お話。私も転…
saku5319 @ はじめまして  可愛い、お話。私も転校した事あります…

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2006.07.05
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Garage会議イスJSー435淡赤

 海外旅行中、高熱を出して入院した。収容されたのはペンシルヴァニア州の郊外にある大学病院だった。適切な治療のおかげで三日後には快復したが、私にとって重要だったのは、治療にあたってくれたドクターとの出会いだった。彼は日本人の母親を持つハーフで、まだ一度も日本を訪れたことがないのに、ほぼ完璧な日本語を話した。日本の味噌汁を癌の特効薬として広めようと考えています、彼はよく冗談を言った。笑うと、小さなえくぼが唇の端に出来た。
 彼になら、自分の苦しみを打ち明けてもいいのではないか。入院中、彼の人柄を知るにつれ、私はそんなふうに思うようになっていた。
 退院後、治療のお礼という名目で、ドクターを食事に誘った。忙しい仕事をやりくりして、彼は時間を作ってくれた。メインディッシュを食べ終えると、私は口火を切った。
「ドクター、実は・・・」
 私は宇宙人だった。地球の調査のために送り込まれた宇宙人だった。だが、私は調査員として精神的に限界に達していた。六十年前の愚かな戦争が嘘のように、地球人は本当に優しい。そんな優しい地球人の住む星を、侵略を目的に調査しているのだ。地球人の笑顔を見るたび、私の胸は鋭く痛んだ。私はもう、調査を辞めたかった。辞めて宇宙に帰りたかった。だが、任期が終わるまでそれは許されない。
「・・・本当につらいんです、いったいどうすればいいのか」
 うなだれる私を、ドクターは笑い飛ばした。
「おまえは調査員としてまだまだだな、任期をあと五年延ばす、心を入れ替えて調査に専念しろ」
 ドクターは調査員を監督するため宇宙から送り込まれていたのだった。





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Last updated  2006.07.09 18:24:28
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