桜の森の満開の下

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とも@ Re:ママ(11/18) この物語はおもしろいです。
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saku5319 @ はじめまして  可愛い、お話。私も転校した事あります…

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2007.01.14
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「どうしたの? こんな時間に」
 優しさ一杯の私の問い掛けに、・・・エエ実は、とお化けは静かに語り始めた。要約すると、ざっと次のようなことである。
 お化けは、お化けのくせに人間の女に恋をしてしまった。お化けと人間だから、絶対に実らない恋である。だけどお化けはマジでその子に惚れてるから、そう簡単に諦められない。仲間のお化けに相談しても、くだらないとまともに相手にされない。思い余って人間である私のところに相談に来たというのである。
「でもさ、何で俺なの? べつに俺は女慣れしてるわけじゃないし、恋愛経験だって乏しいほうだから、たいしたアドバイスなんて出来ないよ」
 それでもいいと言うので、眠かったが、とりあえず私はお化けを家に上げた。
「何か飲む?」
 熱いコーヒーが欲しいとお化けは言った。意外に遠慮がないやつである。
 私とお化けは小さなテーブルを挟んで向かい合って座った。
「で、結局どうすんの? その子に告白するの?」
「・・・エエ、まあ、出来たらそうしたいのですが」
「だったらそうしなよ、悩んでたってしょうがないじゃん」
「そりゃ確かにそうなんですけど、でもボクはお化けですよ」
「見りゃ分かるよ、でも好きなんだろ?」
「好きです、即答できるくらい好きです、でもお化けだから相手にされないんじゃないかと・・・」
「そんなの今から心配してどうすんの? 告白みたいなものはさ、ダメでもともとって覚悟で、思い切ってするんだよ、そうすりゃ案外うまくいくんだよ」
「お化けは物事をポジティブに考えられないのです」
 煮え切らないお化けの態度にさすがの私も苛立ちを覚え、タバコに手を伸ばした。
「あっ、ちょっと、タバコはやめてもらっていいですか」
「何でだよ?」
「複流煙は体に悪いので」
「おまえお化けだろ? 何で健康に気を遣うんだよ」
「・・・すみません、ちょっと人間っぽく振舞ってみたかったのです」
「・・・おまえさ、ここに何しに来たんだよ?」
 明日は取締役を交えた営業会議で、私は早起きをしてプレゼンの準備をするつもりでいた。お化けに付き合っている時間などないのである。
「悪いけどもう帰ってくれよ」
 私は急き立てるようにお化けを部屋の外に出した。去る寸前、お化けは振り返リ、うらめしそうに私に言うのだった。
「あなたもいつかお化けになったら分かりますよ、お化けの気持ちは、お化けにならないと分からないのです」
 近所の犬に吠え立てられながら、お化けは夜空に消えていった。





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Last updated  2007.01.14 18:13:45
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